*12:08JST ケンコーマヨ Research Memo(8):ROEの低下によりPBRは1倍割れの水準が続く ■ケンコーマヨネーズ<2915>の資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

1. 現状分析
東京証券取引所が2023年3月にPBR1倍割れの企業に対して、改善策を開示・実行するよう要請を出したことに基づき、同社も「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を発表した。同社は2020年以降、業績悪化を背景にPBRで1倍を下回る水準が続いていたが、利益を重視した取り組みにより2024年3月期の業績が回復したことから、2024年3月期末時点では0.8倍と前年同期の0.5倍から上昇に転じた。ただ、食品業種(プライム企業)の加重平均PBR1.7倍に対しては約半分の水準に留まっている。要因として、ROEの水準が低いことが一因と考えられる。

ROEは2017年3月期の12.0%をピークにその後は右肩下がりとなり、2023年3月期は1.3%まで低下した。ROEを当期純利益率、総資産売上回転率(売上高÷総資産)、財務レバレッジ(総資産÷自己資本)の3つの指標に分解すると、当期純利益率と財務レバレッジの低下がROEの低下要因だったことがわかる。特に当期純利益率が、2017年3月期の4.0%から2023年3月期は0.6%まで低下しており、ROEの低下に大きく影響した。


ROEを8%以上に引き上げ、株主還元を強化することでPBR1倍超の早期達成を目指す

2. 取り組み方針
PBR1倍の達成及び企業価値向上に向けた取り組みとして、同社は成長戦略の推進による収益拡大及び収益性の向上と併せて資本戦略を強化することでROEを8%以上に引き上げる方針だ。

(1) 営業利益率6%以上に向けた施策
ROEの要素の1つとなる当期純利益率を引き上げるためには、営業利益率の向上が必須となる。同社は、2024年3月期に3.3%だった営業利益率を2036年3月期に6%以上に引き上げることを目標に掲げている。営業利益率向上のための施策として事業ポートフォリオの再構築とグローバル展開の加速、新規事業の育成に取り組むほか、事業拠点再編による効率化やDX推進による労働生産性の向上(30%向上)に取り組む。また、現在1,300アイテムほどになっている商品数の統廃合を推進することで、既存商品の収益力の強化を進めている。2024年3月期は150アイテムほどの削減を実施した。同社はなかでもサラダ・総菜類のアイテム数が多いと認識しているようで、需要を見ながら商品の統廃合、あるいは同一商品でも容量サイズの見直しを進めることにしている。商品アイテム数を絞り込むことで生産効率も向上する見通しだ。

営業利益率の今後の見通しについて、第1フェーズは事業基盤再構築のための先行投資期間となるため横ばい水準で推移すると見ており、こうした投資の効果が顕在化する2030年3月期以降に利益率も上昇傾向に転じるものと同社は見ている。

(2) 資本戦略
同社は2036年3月期にROE8%以上を目標として掲げており、営業利益率の向上と併せて自己資本の圧縮による財務レバレッジの向上にも取り組む方針だ。具体的には、政策保有株式を縮減し自己株式の取得を進める。自己株式取得については、第1フェーズで14億円程度を実施し、2036年3月期までに合計45億円の実施を見込んでいる。

(3) 株主還元
株主還元についても強化する。業績に左右されない安定配当を実施するため、DOE(株主資本配当率)を基準に配当を実施する方針である。DOEの水準については第1フェーズで1.5%以上、第2フェーズで2.0%以上、第3フェーズで2.5%以上と段階的に切り上げる計画としており、中長期的に見れば増配が期待できる。

(4) 財務戦略
中長期経営計画における資本配分(投資額)については、全体で749億円、うち成長戦略で239億円、スマート化で182億円、人材投資で122億円、サステナビリティと社会的責任で205億円を投下する計画だ。投資資金については、営業キャッシュ・フローや借入等で賄っていくと見られる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 ケンコーマヨ Research Memo(8):ROEの低下によりPBRは1倍割れの水準が続く