販売体制の強化に関しては、2021年10月に営業組織を顧客の属性に特化した組織体制へと変更した。加えて、コロナ禍によってリモートワーク中心に変化している顧客に対応するために、オンラインセミナーを通じた販売体制を構築した。2022年9月期は全40回のセミナーを実施し、問い合わせ件数は6,600件(受注金額は140百万円)まで拡大した。さらに2023年9月期においては、オンラインで営業活動を行う専門の部署を新設し、販売体制をより時代にあった形へと進化させている。また、「UNIVERSE」が保有するデータを活用した新製品「まちあげ」「UNIVERSE for 新NISA」「マーブル」「AITでまちあげ」なども順調に市場に投入されている。さらに、PostCookieを見据えたサービスも着実に拡大している。2024年4月には、企業が保有する1st Party Dataの分析や活用を支援する各種ソリューションを提供しているUNCOVER TRUTHを連結子会社化した。今回の買収で顕在顧客を対象としたマーケティング領域へと進出することにより、PostCookie時代のマーケティングを包括的に提供することができる体制を構築し、PostCookie市場のリーディングカンパニーになることを目指す。
(2) PostCookieに向けた対応 データプロダクトの「UNIVERSE」においては、Webブラウザの3rd Party Cookieという技術を活用している。この技術に関しては、Googleが提供するChromeブラウザにおいて2025年1月以降の段階的なサポートの停止が公表されている。Googleは広告事業者が従来のビジネスを継続できるよう、「Privacy Sandbox」という代替技術の提供を予定している。Googleによる3rd Party Cookieの廃止にあたり、イギリスの競争市場庁(以下、CMA)はGoogleに対し、「Privacy Sandbox」が代替技術として十分な機能を備え、自社の広告サービスを優遇するような行為を行っていないことを証明することを求めている。CMAの評価にあたり、これらのテスト期間が不十分であったことから、当初の予定より半年ほど延期されている。デジタルマーケティングの領域で事業を行うすべての企業が対応を迫られているなか、同社は業界のなかでもいち早く規制に対応することによって、先行者利益を獲得する。具体的には「Privacy Sandboxへの対応」「Cookieに代わる技術の導入」「新しいターゲティング技術」という3つの対策を行っている。同社はPrivacy Sandboxが提供する3つの機能のうち、すでに2つへの対応を完了している。代替技術に関してもプライバシーの問題をクリアしながら従来の3rd Party Cookieと同等の動きをする新しい技術を2022年5月から段階的にリリースしてきたほか、3rd Party Cookieを利用せずにユーザーが閲覧しているコンテンツの内容を分析してターゲティング配信を行うサービスを2022年2月にリリースしている。さらに、3rd Party Cookieに依存しないIDソリューションについては2023年1月にLiveRamp Japan(株)との連携によりCookieを代替するIDソリューションを同社の全プラットフォームに、2023年5月にはThe Trade Desk, Inc.の開発品を導入した。直近では、2024年4月にLiveRamp Japanが提供する、「RampID」の連携及び取り引きを可能にする機能を実装しており、PostCookie時代に向けた代替技術の導入も順調に進んでいる。
また、非Cookieビジネスを垂直に立ち上げられる点も同社の特徴だ。同社はデータ保有企業向けプラットフォーム(UNIVERSE DATA PLATFORM)、広告主企業向けプラットフォーム(UNIVERSE Ads)、広告掲載メディア企業向けプラットフォーム(MicroAd COMPASS)のすべてを自社で取り扱っており、3rd Party Cookieに代わる技術を迅速にすべてのプレイヤー向けに反映できる。