*13:01JST 昭和産業 Research Memo(1):2023年3月期は価格改定進め増収。組織改編によりシナジーの最大化を図る ■要約

昭和産業<2004>は、1960年に世界で初めて家庭用天ぷら粉を発売した食品中核企業である。「人々の健康で豊かな食生活に貢献する」をグループ経営理念とし、小麦・大豆・菜種・トウモロコシなど多種多量の穀物を国内食品メーカーの中で唯一取り扱う企業である。ブランドメッセージとして「穀物ソリューション・カンパニー」を掲げている。

1. 2023年3月期の業績
2023年3月期の連結業績は、売上高335,053百万円(前期比16.5%増)、営業利益4,184百万円(同24.8%減)、経常利益6,525百万円(同0.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益7,776百万円(同94.1%増)となった。経営環境は、世界的に旺盛な需要とウクライナ情勢の長期化による供給懸念によって原料穀物相場は引き続き歴史的高値で推移し、円安の影響が輸入コストやエネルギーコストの上昇につながるなど厳しいものとなった。外食業界の需要については、新型コロナウイルス感染症の再拡大(以下、コロナ禍)があったものの、個人消費が底堅く推移したことや行動制限の緩和によって回復が見られた。同社においては原価上昇に見合う価格改定を繰り返し実施して増収となった。利益面では、適正価格での販売を優先したため油脂食品事業、飼料事業で販売数量が落ち込んだほか、糖質事業ではエネルギーコスト上昇分を価格改定で吸収することができず大幅減益となった。親会社株主に帰属する当期純利益については、期末に固定資産譲渡益約52億円を特別利益に計上したため前期を上回った。

2. 2024年3月期の業績予想
2024年3月期は、売上高360,000百万円(前期比7.4%増)、営業利益7,500百万円(同79.2%増)、経常利益8,600百万円(同31.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,500百万円(同29.3%減)を計画している。同社では、大量に輸入している小麦・大豆・菜種・トウモロコシの原料穀物相場やエネルギーコストは引き続き高値圏にあるが、激しい値動きのあった前期よりも落ち着いてくると予想している。コロナ禍の影響が薄れ景気も持ち直し、販売数量は回復する見込みで、適正価格での販売を継続することで増収増益を計画している。同社は、2023年4月1日に営業組織を「プロダクトアウト型」の事業管理・販売活動から、業態別・顧客別の「ワンストップ型」に改編した。顧客の「食」に関するあらゆる課題やニーズに最適なソリューションをワンストップで提供する「マーケットイン型」の営業体制・事業管理体制に移行することで、既存顧客への拡販と顧客基盤のさらなる拡大を実現する計画だ。従来の報告セグメントの製粉事業、油脂食品事業、糖質事業も「食品事業」に統合した。また、新たに事業領域の拡大を推進する専門組織「ビジネスプランニング部」を新設した。事業を軸としたグループ会社との一体的な経営管理・事業展開を進めることでグループシナジーを高め、新商品開発や新規市場参入への注力、機能性商品の販売強化による拡販を計画している。

3. 「中期経営計画23-25」
同社は創立90周年を迎える2025年度(2026年3月期)のありたい姿として、長期ビジョン「SHOWA Next Stage for 2025」(2017~2025年度の9年間)を策定しており、2023年2月に3rd Stage「中期経営計画23-25」を公表した。「中期経営計画20-22」において目標としていた経常利益130億円は、コロナ禍や原料穀物相場の高止まりなどの事業環境悪化を受けて未達となったため、2026年3月期に再設定する。基本戦略として、1) 基盤事業の強化、2) 事業領域の拡大、3) 環境負荷の低減、4) プラットフォームの再構築、5) ステークホルダーエンゲージメントの強化、の5つを掲げ、組織改編による販売力の強化、グループ連携による事業規模拡大と収益力強化、高付加価値商品の拡販、海外事業の拡大、適正な価格改定などにより利益を創出する予定だ。定量目標では、経常利益以外に、ROE7.0%以上、NET D/Eレシオ0.6%以下、新たな管理指標としてROIC※14.0%以上、CCC※2 75日を掲げた。

※1 ROIC=税引後営業利益(法人税等を営業利益の30%として計算)÷投下資本(有利子負債(NET)+自己資本)。
※2 CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル):運転資金の回転期間=売上債権回転日数+棚卸資産回転日数-仕入債務回転日数。


■Key Points
・2023年3月期は価格改定進め増収。糖質事業の減益幅大きく全体では減益。
・2024年3月期は、糖質事業、油脂食品事業の回復を見込み、増収増益を計画
・営業体制を「プロダクトアウト型」から業態別・顧客別の「ワンストップ型」に移行
・事業領域の拡大を推進する専門組織「ビジネスプランニング部」を新設
・新たな財務KPIとしてROIC、CCCを導入し、経営の進捗状況を管理

(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 昭和産業 Research Memo(1):2023年3月期は価格改定進め増収。組織改編によりシナジーの最大化を図る