(1) 既存の戦略3事業 a) 磁石材料 磁石材料は従来用途に加え、自動車用途に適した耐熱性の確保を目指し、素材開発、サプライチェーン強化を図る。フェライト系磁石材料は、複写機・プリンターなどのマグロール向けが成熟し、2000年以降はエアコンの省エネ化でモーターのDC化が加速、DCタイプには極異方性ボンド磁石が高効率化、軽量化、軸インサート成形が可能なことで現在も多用されている。また希土類系磁石材料は、PC周辺のスピンドルモーターなど、PC周辺やゲーム機向けなどでの利用されている。
b) 誘電体材料 誘電体材料は、MLCCの小型化に対応したさらなる微粒子化を追求し、コスト削減を図り、先端材料としての拡大を目指す。今後、5G、車載向けにMLCC搭載個数が継続的に拡大する中で、誘電体セラミックの薄層化が求められている。特に車載用では高温下での性能に優れ、静電容量アップも求められる中で超微粒、均一、高誘電率などを兼ね備える同社材料は、従来の電極層向け共材利用に加え、誘電体層にも利用が広がる可能性が出ている。実際、現時点でMLCCは1台当たり3,000個~5.000個搭載されているが、スマホのハイエンドモデルでも1,000個レベルであり、レベル2+の自動運転機能を有する高級EV車では1万個以上搭載するものもあり、誘電体での採用が拡大されればセラミックコンデンサ市場の成長を上回る売上の拡大が期待される。
c) LIB用正極材料 同事業の主体はBTBMであるが、EV普及加速の動きの中で、設備稼働が順調に高まり、収益の刈り取り期に入り、今後も売上拡大が続くとみられる。現在、BTBMの提供する正極材料は主に欧米系に採用されており、高級車は航続距離などの点でハイニッケルのニッケルコバルトアルミン酸リチウム(Hi-Nickel NCA)の採用が継続するとみられ、電池各社の相次ぐ増産計画から、会社予想を上回る売上拡大が続くと期待される。実際、2022年12月19日にはドイツBASF本社がニッケルコバルトマンガン(NCM)系正極材料 (CAM)を、トヨタ自動車とパナソニックホールディングスの合弁会社で あるプライムプラネットエネルギー&ソリューションズ(株)(以下「PPES」)へ納入を開始しているとの開示があった。これは数年前からBASFがPPESと協業、高出力、長寿命、効率向上の要件を満たすテーラーメード製品となっており、今後のトヨタ自動車のEV戦略とともに大きく伸長すると見られる。また、前駆体を供給するカナダの戸田アドバンストマテリアルズ、岐阜の(株)セントラル・バッテリーマテリアルズ含めて成長が見込まれる。
(2) 次世代事業 a) 環境関連新材料 同社はこれまで循環型社会形成に対し、製品として燃焼時に有害物質発生を抑制する触媒活性を持つ酸化鉄や土壌・地下水を浄化する機能を持った酸化鉄などを提供してきたが、更なる取り組みを始めている。具体的にはカーボンニュートラル実現のため、NEDOの委託事業を通じてエア・ウォーター<4088>と共同でメタン直接改質法によるCO2フリー水素の研究開発を推進している。またカーボンリサイクルの実現のため、埼玉大学の柳瀬准教授が研究しているナトリウムフェライトを用いたCO2固体回収材の工業生産化なども開発している。燃焼排ガス中に含まれるCO2を吸収し、100℃程度の加熱でCO2を放出でき、固体で繰り返し利用でき、カーボンニュートラルに貢献する素材として注目される。全体として収益に寄与するには時間を要するとみられるが、同社の脱炭素社会、循環型社会の実現に向けた取り組みにも期待がかかる。
b) 軟磁性材料 磁力を保持する力が小さく、磁石にはくっつくが外部の磁界を取り除くと速やかに磁性がなくなる軟磁性材料について、改めて車載用中心に開発を行う。具体的には電子化進展により電子制御化が加速、電子部品搭載数の増加でノイズ問題が大きな課題となっており、ノイズ対策材料やEV用非接触給電向け厚膜大判フレキシブルフェライトプレート等の開発を推進している。