■新晃工業<6458>の会社概要

2. 事業領域
空調機器は家庭用と業務用に分けられ、建物の規模や運用によって最適な機器が選択される。家庭用はいわゆるルームエアコンであり、TVCMでよく見かける民生用電機メーカー大手の製品が多い。業務用は、さらに個別空調とセントラル空調に分けられる。個別空調は、空調を必要とする部屋・エリアごとに室外機と室内機を設置する方式で、熱媒体にフロンガスなどを使用するが、設計・施工が容易で機械室を小さくすることができる。主に延床面積20,000平方メートル以下の中小規模の建物で採用され、空調機器のシステムはパッケージエアコン、ビル用マルチエアコンなど汎用品で構成される。

セントラル空調のシステムは、建物を一体として捉え、熱源機器を集中設置してまとめて熱を作り(一次側空調システム)、冷温水(水)を熱媒体として各フロアに運ばれた熱にAHUやFCUがファンで風を発生させて室内の温度・湿度を調整し(二次側空調システム)、そして空調全体の管理・コントロールを集中して行う(計装システム)仕組みになっている。延床面積20,000平方メートル以上の大規模な建物に利用され、建物ごとフロアごとに求められる要件が異なるため、最適なシステムを構築するには完全オーダーメイドが不可欠となる。同社はこのうち、セントラル空調の二次側空調システムを主要な事業領域としている。セントラル空調の主なメリットは、個別空調に使用されるフロンガスにはできない精密な温度・湿度制御ができる、スペースに合わせた上質な空気質を作ることができる、設置や設計の自由度が高い一方で熱源をまとめて大型化しているため効率性やメンテナンス性に優れていることが挙げられる。また、熱を搬送する媒体にフロンガスでなく水を使用しているため「環境にやさしい」ことも大きなメリットである。

なお同社は、近年、中小規模の建物で採用される個別空調領域にも積極的に事業を拡張している。個別空調では、セントラル空調に比べて簡易なシステムや汎用品が使用されるが、外調機についてはオーダーメイド仕様を要求されることが多くなっている。そのため、セントラル空調の分野で蓄積してきた同社のノウハウを生かす素地があると考えている。しかし、個別空調自体の知見に乏しかったため、同社はダイキン工業<6367>と業務資本提携してヒートポンプAHUの製造販売に参入し、現在では積極的に拡大戦略を展開している。熱源機器を集中しても効率化されない規模の建物では、今後も個別空調方式が採用される見込みである。同社は、地球環境に負荷がかかる傾向のある個別空調の領域においても、地球温暖化係数の低い熱媒体への転換やフロンガス使用量の削減につながる地球環境にやさしいシステムの設計も進めていく方針である。


二次側空調機器メーカーで国内トップシェア
3. セントラル空調の業界構造
セントラル空調という視点から見た業界のプレーヤーは、施主、設計事務所、ゼネコン(建築会社)、サブコン(設備会社)、空調関連メーカー(一次側・二次側・計装)である。大きな建物を建築する際、様々な仕様の建物に対し空調機器をオーダーメイドで合わせなければならず、設計という最初の段階から組み込まれる必要がある。このため、空調機器関連メーカーはゼネコンより早く施主・設計事務所と直接的な関わりを持つことになる。しかし、発注の流れは「施主→ゼネコン→サブコン→空調関連メーカー」となっていることから、商流上の契約先はサブコンとなることが多く、設計段階で関わりがあっても機器採用に直結しないこともある。また、建設業界の需要変動の影響を受けやすく、建設業界同様に国内市場が成熟している。そのような市場で同社と競合する二次側空調機器メーカーは、クボタ空調(株)、ダイキン工業、木村工機<6231>、暖冷工業(株)などに集約されつつある。同社は、こうした二次側空調機器メーカーのなかで国内トップシェアというポジションにいる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 新晃工業 Research Memo(3):同社空調機には「環境にやさしい」というメリットもある