■成長戦略

● 業績回復策
三栄コーポレーション<8119>では、コロナ禍及び原価高などの外部環境に対応し業績を回復させるために、地に足の着いた“守り”と“攻め”の施策を徹底的に行うことを計画している。2023年3月期の業績回復策としては、「不採算事業の見直し・構造改革を早急に完了し(守り)、そのうえで業績回復のドライバーとなる施策の見極め・深堀りを実施(攻め)」を方針とした。“守り”に関しては、既にコロナ禍以前より、服飾雑貨事業セグメントの主力ブランドでの構造改革には着手しており、実態としては成果が顕在化する年となる。家電事業セグメントにおいては、製造から小売りまでのサプライチェーンの垂直統合による合理化に本格的に取り組む。次の成長ドライバー(攻め)に関しては、1)EC事業のさらなる深化、2)OEM事業の強化(海外拠点強化による海外市場開拓の推進を含む新規開拓)、3)ブランド事業の強化(新規ブランド開拓によるラインナップ拡充)、4)SDGsビジネスの推進が挙げられる。

(1) EC事業のさらなる深化
同社が様々な流通チャネルを持つなかで、最も成長性が高いのがEC事業である。2022年3月期のEC事業売上高は約50億円であり年々その存在感を増している。特に、家具・インテリアのネットショップ「MINT」などが属する家具家庭用品事業セグメントのeコマースが事業規模では大きな構成比を占めるが、「BIRKENSTOCK」「Quorinest(クオリネスト)」などブランド事業のeコマースも伸長する。EC事業の成長の背景には、インテリアEC事業で培ったノウハウやプラットフォームがある。具体的には、撮影などのコンテンツ制作、SNSを含めたネット上の販促、効率的な在庫管理や受発注オペレーションなど、売上を拡大し利益を生むためのノウハウを蓄積してきた。2023年3月期は家電事業セグメントにおいてEC化を本格化させる。商材別EC市場では、家電は家具インテリアより大きく、EC化率も37.5%(家具インテリアは26.0%)と高く、ECとの親和性が高い。同社では、中長期的にはeコマース売上高100億円を目指すとしている。

(2) OEM事業の強化(海外拠点強化による海外市場開拓の推進を含む新規開拓)
マレーシア、台湾、ベトナム、中国にある海外生産拠点を活用し、現地に根差したOEMビジネスの開拓、外貨建てでの国内外顧客への直接取引を拡大する。

(3) ブランド事業の強化(新規ブランド開拓によるラインナップ拡充)
家具家庭用品事業セグメントの子会社エッセンコーポレーションでは、欧州の老舗ブランドを国内で展開し市場の開拓に成功してきた歴史があり、最近ではドイツのテーブルウェアブランド「Villeroy&Boch」や英国のキッチン小物ブランド「COLE&MASON(コールアンドメイソン)」などが成功事例である。今後も、同社の経営ビジョン「くらしに、良いものを。」を体現する事業として、新規ブランドを開拓しラインナップを拡充していく。

(4) SDGsビジネスの推進
同社は「「健康と環境」をテーマに健やかで潤いのあるくらしを創造します」という経営ビジョンの下でブランド展開を行ってきた。近年、環境配慮やサステナブルな価値を訴求する多数のブランドの取り扱いを開始しており、同社の大きな特色となっている。具体的には、“より地球にやさしい”をコンセプトとした“Our EARTH Project”を本社主導で推進し、持続可能な社会の実現に向け「サステナブル」「エシカル」というキーワードに合致するブランドや商品、素材、サービスの提供を行っている。特に注目されるのが、無水染色技術に優位性を持つアパレル素材のe.dyeである。e.dyeの技術は、生地の染色過程で使用する水を 85%削減し、化学品を90%削減するなど環境負荷が小さく、また独自のデジタルカラーマネージメントシステムの採用で5,000色以上の色レシピを有し、幅広い色を再現することができる。また小ロットの製造・販売が可能であることも優位性の1つである。展示会での反響が大きく、複数の商談が行われており、業績への貢献も期待される。同社ではこの他にも、2022年度の「ソーシャルプロダクツ・アワード」でソーシャルプロダクツ賞を受賞した「AIRPAQ(車部品をアップサイクルしたバッグブランド)」など環境配慮型の8ブランドを展開している。2023年3月期はSDGs商材売上高で前期比25%増を見込む。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 三栄コーポ Research Memo(6):EC事業の深化、SDGsビジネスの推進などが次の成長ドライバー