■今後の見通し

2. 業界環境の変化と中長期ビジョン
葬儀の潜在的な需要は高齢化社会の進展に伴い、2040年頃には現在の1.2倍の規模にまで拡大することが見込まれている。一方で、核家族化の進行や地域コミュニティとの関係希薄化など構造的な要因に加えて、2020年以降はコロナ禍による影響で、葬儀規模の縮小と葬儀単価の下落傾向が進行し、葬儀件数の拡大が続くなかでも市場規模は頭打ちの状況となってきている。こうしたなか、ティア<2485>は中期ビジョンの実現に向けた外部・内部環境における課題とその対応施策について以下の通りまとめている。

(1) 外部環境変化に伴う課題認識と対応施策
葬儀件数の拡大と葬儀単価の低下という市場環境が続くことを前提に、内製化による事業領域の拡大と主力エリアへの出店拡大により持続的な成長を目指していく。成長を支えていくための経営基盤の構築が今後の課題であると同社では認識している。また、リスク要因として仕入価格や経費、人件費等の上昇、既存会館の契約更新に伴うリスクの顕在化(賃料の値上げ等)、コロナ禍で見られたような想定外の事態が起こる可能性などが考えられ、こうしたリスクへの対応策も重要となってくる。

(2) 内部体制のさらなる強化と中長期を見据えた施策
コロナ禍を契機とした葬儀規模の縮小や家族葬のさらなる小規模化といった環境変化への対応施策として、家族葬ホールを中心とした店舗展開や、非中核エリアへの出店計画見直しなどを行っており、また、事前・事後のサービス拡大や商品調達機能の強化による収益力向上に取り組んでいる。

成長の源泉となる人財戦略については、計画的な人財確保と教育体制の充実により、強固な組織を構築していく。また、人事制度改革に取り組んでおり、キャリアプランの浸透や女性活躍の推進など働き方改革を推進することで、従業員のエンゲージメントの向上を図っていく。

(3) 中長期ビジョンと成長戦略
中長期ビジョンとして同社は、「日本で一番『ありがとう』と言われる葬儀社」になることを掲げており、定量目標として会館数(FC含む)で現在の約2倍となる260店舗を掲げている。成長戦略は以下の通り。

a) 事業戦略(成長力)
ブランド戦略の強化とともに、中核エリアである中部地区でのさらなるシェアアップ、成長市場である関東・関西地区での新規出店の推進、新規市場(葬儀周辺事業)への参入などに取り組んでいく。

b) 事業戦略(稼ぐ力)
ドミナント戦略により効率的な店舗展開を進めるとともに、葬儀付帯業務の内製化推進、人財確保・育成体制強化による人財投資の効率化、出店フォーマットの多様化による資産効率の向上などにより収益力の強化を図っていく。

c) 機能戦略(経営基盤)
外部環境変化に伴う課題認識・対応の強化や内部体制・中長期を見据えた施策の強化に加えて、成長投資手法の多様化(M&Aの精度向上含む)や人財マネジメントの強化、倫理コンプライアンス体制の確立・強化等に取り組んでいく。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 ティア Research Memo(7):中長期ビジョンとして会館数を現状の約2倍の260店舗に拡大へ