■Abalance<3856>の会社概要

3. 事業内容
同社グループは、グリーンエネルギー事業と新たに加わった太陽光パネル製造事業を両輪に、再生可能エネルギーの総合カンパニーを形成している。2021年6月期の事業セグメント別構成比で見ると、第2四半期から新たに加わった太陽光パネル製造事業が売上高で78.1%、セグメント利益で42.2%を占め、主力事業の1つとなっている。グリーンエネルギー事業については、売上高で19.7%と2番目の規模となるが、セグメント利益では58.1%と過半を占めている。

(1) グリーンエネルギー事業
同社グループでは、ソーラー発電に関する企画・開発から施工、O&M※1までを一貫して行う垂直統合型のワンストップソリューションを展開しており、近年ではストック型ビジネスモデルへの移行を目的に、発電所の自社保有化による売電収入の拡大を推進している。そのほか、ソーラーパネル及び関連商材(パワーコンディショナ(以下、PCS)、蓄電池等)の仕入販売やソーラー発電所の販売(中古案件含む)なども行っている。2021年3月には太陽光パネルのリユース・リサイクル事業を開始すべくPV Repowerを新設し、パネルの廃棄抑制と有効活用により今後の事業拡大を進める方針としている。また、エネルギー需要が旺盛な東南アジア圏や台湾などで現地企業との合弁等により、EPC事業※2やIPP事業※3なども行っている。

※1 O&M(オペレーション&メンテナンス):太陽光発電設備等の保守・管理サービス。データ解析を含む日常的な発電状況の把握及び監視、並びに定期点検を通じた設備性能の維持、事故の早期発見、部品・機器の交換等を適時実施している。
※2 EPC事業とは、設計(Engineering)、調達(Procurement)、建設(Construction)を含む、プロジェクトの建設工事請負事業のこと。
※3 IPP(Independent Power Producer)事業とは、自らが所有する発電設備で作った電力を電力会社に卸売する事業を指す。


顧客は、ソーラー発電所を保有する国内外のIPP事業者のほか、住宅用ソーラーパネル及び関連商材の卸販売会社や一般事業会社及び公共団体等(ソーラーパネル設置工事)となる。ソーラーパネルは、自社ブランド「Maxar®(マクサ)」を販売している。マクサブランドのパネルは性能、価格面ともに大手中国メーカー製と遜色はなく、変換効率が上回る製品もラインナップしている。PCSについては信頼性の高い大手メーカーから、蓄電池については自社の開発チームで中国大手メーカーと共同開発している。ソーラー発電所の建設エリアとしては、東北から千葉圏を中心とする関東エリアのほか、近畿並びに九州エリアとほぼ全国的に展開しており、東日本エリアはWWB、九州エリアはバローズが主に手掛けている。

そのほか新規事業としてWWBが、北海道檜山エリアにおいて風力発電所(陸上・小型)の初期開発を行い、2020年3月より売電を開始している。蓄電池事業についても、産業用・家庭用蓄電池に参入する構えで、これに先駆けて折り畳み式軽量モジュールとセットしたポータブルバッテリー「楽でんくん」を自社開発し、2019年10月より販売を開始している。さらに、断続的グリーンエネルギーの平準化を目的としたグローバルイノベーション企業としてバーディフュエルセルズを新規設立し、未来の新エネルギーとして期待される水素エネルギー貯蔵システムの開発を進める計画である。

(2) 太陽光パネル製造事業
太陽光パネル製造事業は、2021年6月期第2四半期(2020年10月~12月)から新規連結化したベトナムの太陽光パネルモジュールメーカーであるVSUNの事業となる。VSUNはFUJI SOLAR傘下の会社として2015年6月に設立され、日本の技術者のノウハウを注入しながら育成し、今や生産能力で2.6GWと同社によれば世界上位16社に入る日系では最大の太陽光パネル製造メーカーに成長した。VSUNは主に欧州向けの輸出で伸びてきたが、最近では米国市場への開拓も進み、販売を大きく伸ばしている。2021年8月には、サプライチェーンを主体とするCSR、サスティナビリティの世界的な評価機関のEcoVadisより、2021年度Bronze Medalを受賞した。

業績は創立以来の急成長を続けており、今後、ベトナム株式市場でのIPOを早期に実現すべく、現地当局や証券会社と協議を進めている。資本構成について見ると、同社の100%子会社であるWWBのFUJI SOLARに対する出資比率は51%、FUJI SOLARのVSUNに対する出資比率は84.85%であるため、実質的な持分比率は約43%となり、残りは非支配株主持分となる。VSUNがIPOしたとしても連結子会社として維持できるように、同社は対応を進めていく予定としている。

(3) IT事業
IT事業は、子会社のAbitで企業の業務効率化を支援する情報共有・ナレッジマネジメントツール「Knowledge Market®」の販売のほか、マイクロソフトのコラボレーションソフト「SharePoint」等のライセンス販売、導入支援サービスを展開している。近年はIoT、RPA、AI等の成長分野にフォーカスしているほか、IT技術を生かしてソーラー発電所向けの遠隔監視システムの開発なども行っている。

(4) 光触媒事業
光触媒事業は、子会社の日本光触媒センターで光触媒酸化チタンコーティング剤とそれを利用した製品の製造販売等を主に事業展開している。光触媒とは、太陽光や蛍光灯などの光エネルギーが当たると、その表面で触媒反応による酸化分解が起き、有害な微生物や化学物質を分解・除去する作用のことを指す。この原理を活用して、対象物に光触媒酸化チタンコーティング剤を塗布することで、防汚機能、大気浄化機能、空気浄化・脱臭機能、シックハウス対策機能、抗菌・抗カビ・抗ウィルス機能などの効果を持たせることが可能となる。

こうした光触媒の作用を活用して、建物や店舗の外壁・フロント、病院・福祉施設の室内、トイレ・バスルームなどの建材向けに販売してきたが、コロナ禍によって、光触媒効果の1つである抗菌・抗ウィルス機能が注目されたことで、日本光触媒センターも感染症対策製品として、抗菌・抗ウィルス製品「blocKIN(ブロッキン)」の販売を2020年3月より開始し、銀イオン(Ag)を配合したハイライン製品「blocKIN HYPER(ブロッキンハイパー)」も市場投入するなど、ラインナップを充実させている。

また、医療機関や介護医療施設、ホテル、学校、保育園、公共施設、食品加工工場、レストラン、カラオケボックスなど各種施設向けに抗菌・抗ウィルス施工サービスを行う「光触媒LIFE」事業を2020年に立ち上げ、販売代理店やフランチャイズ(以下、FC)展開を開始しており、現在100社以上の代理店またはFC契約を締結している。日本光触媒センターの光触媒溶液の主原料は水と酸化チタンであり、化学物質を含まない独創的技術性により高い抗菌・抗ウィルス効果、脱臭性、持続性などを強みとする。

(5) その他
その他事業として、WWBにおいて建設機械の販売・レンタルリースを国内及び東南アジアで展開している。中古建機の取り扱いで強みを持ち、中国の世界的建機メーカーである三一重工やサンワードの正規代理店となっている。顧客は国内外の建設会社や土木工事会社、物流関連会社、輸出入販売会社等である。ここ最近では、東南アジアのODAプロジェクトで現地に進出している日系ゼネコン会社向けの受注を獲得しているほか、ソーラー発電プロジェクトの建設現場で利用するなど、事業間の連携も進んでいる。三一重工は、WWBを通じて東京港・大井5号コンテナターミナル(CT)にトップリフター3基を納入し、今後は年10~15台のペースで日本国内において製品販売を行う計画としている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 エーバランス Research Memo(3):「グリーンエネルギー事業」と新たな「太陽光パネル製造事業」を両輪とする