■業績動向

1. 2021年3月期業績の概要
藤商事<6257>の2021年3月期の連結業績は、売上高で前期比7.0%増の26,927百万円、営業利益で383百万円(前期は2,054百万円の営業損失)、経常利益で486百万円(同2,279百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純利益で122百万円(同4,719百万円の純損失)となり、3期ぶりの増収増益に転じた。コロナ禍の影響により、パチンコホールの経営環境が悪化し、遊技機の購買意欲が低下するなど市場環境は年度を通じて厳しさが続いたものの、新規大型タイトル「Pとある魔術の禁書目録」をはじめ、第3四半期以降に投入した新機種の販売が好調に推移したことにより、パチンコ遊技機の販売台数が増加したこと、並びに各種コストの削減に取り組んだことが増収増益要因となった。なお、2020年後半の商品化を予定していたスマートフォン用ゲームアプリについては、経営資源を本業の遊技機事業に集約するため開発を中止したが、損益面での影響は軽微だったようだ。

売上高の内訳を見ると、パチスロ遊技機は新機種の販売がなかったが、パチンコ遊技機が前期比37.6%増の26,927百万円、台数で同40.7%増の70.5千台となり増収要因となった。パチスロ遊技機については、型式試験の適合率が旧規則機と比較して新規則機では業界全体に低くなっているようで、同社においては当期中に適合取得には至らなかった模様である。

売上総利益率は前期の52.4%から48.2%に低下したが、これは新機種販売のうち本体販売の比率が上昇したことで、材料費が増加したことが要因となっている。同社の販売形態は外枠も含めた本体販売と、外枠を残したまま盤面(パネル)とサイドユニットのみを入れ替えるパネル販売の2通りがある。本体販売はパネル販売(盤面及びサイドユニットの交換)と比べて部材費が多くなるため、販売単価が高くなる反面、売上総利益率は低下する。ただ、営業利益ベースへの影響はほとんどない。一方、パネル販売を行うことでホール側から見れば次機種への入れ替えコストを低く抑えることが可能となるため、シェアの維持向上につなげていく販売戦略となっている。

販管費率は前期の60.6%から45.7%に低下し、金額ベースでは同2,920百万円減少の12,332百万円となった。項目別で見ると、研究開発費が同2,036百万円減少と大きく減少した。開発工程の見直しにより1機種当たりの開発費の抑制に取り組んでいるほか、開発プロジェクトが前期よりも少なかったことが減少要因となっている。また、その他販管費も同867百万円減少しているが、これはコロナ禍で交通費や交際費が減少したこと、業務効率化の推進による経費削減が進んだことが要因となっている。

また、会社計画(2020年10月発表値)との比較で見ると、売上高で2,327百万円、営業利益で1,383百万円上回って着地した。売上高については「Pとある魔術の禁書目録」がヒットし、追加注文により販売台数が計画を上回ったことが主因となっている。また、利益面では売上増に伴う売上総利益の増加に加えて、販管費も計画以上に抑制できたことが上振れ要因となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

<AS>
情報提供元: FISCO
記事名:「 藤商事 Research Memo(3):2021年3月期は新機種のヒットやコスト削減効果で3期ぶりの増収増益に転じる