■業績動向

1. 季節要因と決算期の変更
ドラフト<5070>は、2020年に決算期を3月から12月へ変更した。官公庁ならびに多くの企業が3月を期末とすることから、同社の主要事業のひとつであるオフィス空間の設計デザインの売上高計上が第4四半期(1月-3月期)に集中する季節的な傾向があることが要因であった。一方で、販管費は固定費として各四半期で比較的均等に発生するため、売上高が季節的に小さくなる第1四半期(4月-6月期)及び第3四半期(10月-12月期)は、収支見合いもしくは赤字に陥った。第4四半期への利益偏重は、期初・期中の業績把握を困難としていた。そのため、決算期末を12月に変更することとし、2020年12月期は9ヶ月間の変則決算となる。企画・設計などを行う上場企業の決算期末は、乃村工藝社<9716>が2月期、丹青社<9743>が1月期である。

2. 2020年12月期の連結業績概要
コロナ禍を受け、2020年4月7日に首都圏の1都3県を含む7都府県を対象地区とする緊急事態宣言が発出された。同年5月25日に解除されたものの、経済活動は一時的に停滞した。2020年4~6月期の国内総生産(GDP)は、実質で前期比7.9%減、年率換算で28.1%減となった。2019年10月に消費税増税があり、3四半期連続のマイナス成長であった。2020年4~6月期は、リーマンショック後の2009年1~3月期(前年同期比17.8%減)を上回る最大の落ち込み幅を記録した。このため多くの企業が、コロナ禍の影響により合理的な算定が困難として、2020年度の期初予想の開示を見送った。

先行き不透明感が増したことで、同社も一部の顧客が案件時期を延期するなどの影響を受けた。そのような状況下で開示された同社の2020年12月期の期初計画は、売上高を4,100百万円、営業利益を90百万円と開示した。前年同期にあたる2020年3月期第3四半期累計の売上高3,237百万円と営業利益62百万円に対しては増収増益の予想であった。当期実績は予想を大きく上回り、売上高が4,313百万円、営業利益が384百万円となった。前期第3四半期累計と当期期初計画との比較では、売上高がそれぞれ33.2%増、5.2%増、営業利益が514.9%増と327.1%増の大幅な増益を達成した。

領域別売上高は、オフィスが2,753百万円(構成比63.8%)、前年同期比(参考値)21.7%増、商業施設が160百万円(構成比3.7%)、同14.0%減、都市開発・環境設計・その他が1,399百万円(構成比32.4%)、同77.5%増であった。オフィスや都市開発・環境設計・その他は、これまでの案件実績に対する評価が業容拡大の源泉となった。

当期は案件規模1億円以上の大型案件が14件と2020年3月期の12件を上回った。大型案件の売上高構成比は、前期の31.2%から44.5%へ拡大した。大型案件は、人件費比率が抑えられ収益性が高くなる。大型案件の寄与もあり、売上高営業利益率は前期の7.9%から8.9%へ上昇したが、当期の好業績は特定の大型案件に依存した結果ではない。

3. 財務状況とキャッシュ・フロー計算書
2020年12月期末の総資産は3,690百万円と前期(2020年3月期)末に比べて881百万円減少した。前期は、期末間近の3月17日に上場しており、株式公開に伴う新株の発行等により現金及び預金が1,016百万円増加した。当期は、現金及び預金が688百万円縮小したうえ、売掛金が1,003百万円減少した。売上高の計上が3月に集中する季節要因があるため、12月末の売掛金は3月末に比べて大きく減少する。負債の部では、同様な理由により買掛金が754百万円減少した。決算期変更による9ヶ月間の変則決算のため、未払法人税等が130百万円減った。財務の安全性を表す流動比率は前期比82.4ポイント増の250.6%、自己資本比率が同14.9ポイントアップの52.8%へ良化した。

2020年12月期末の現金及び現金同等物の残高は、前期末比668百万円減の1,193百万円となった。営業活動によるキャッシュ・フローが338百万円の入金となった。投資活動によるキャッシュ・フローは、829百万円の支出であった。「食寝働分離」を提唱するRe cord事業を具現化するため、土地・建物を取得したことが影響した。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済及び配当金の支払いなどにより178百万円の出超であった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 ドラフト Research Memo(5):2020年12月期は、前年同期比、期初計画比で大幅増益