■業績動向

1. 2021年3月期第2四半期の業績動向
クイック<4318>の2021年3月期第2四半期の業績は、売上高10,550百万円(前年同期比2.9%減)、営業利益1,906百万円(同17.3%減)、経常利益2,031百万円(同12.5%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益1,422百万円(同8.4%減)となった。国内の雇用情勢はコロナ禍のため悪化が続いており、9月の有効求人倍率(季節調整値)は1.03倍と9ヶ月連続で低下し、完全失業率も3.0%と2017年5月以来の低水準となった。幅広い分野で人手不足感が深刻化していた前期とは、同社を取り巻く環境は大きく変わったと言える。ただし、リーマンショックの際も影響が小さかった専門職に強みがあることに加え、企業の人材ニーズに沿った多様なサービス提供を推進したことで、収益の落ち込みは限定的だった。

2. 2021年3月期第2四半期の事業別業績動向
事業別の業績では、人材サービス事業が売上高7,562百万円(前年同期比3.3%増)、営業利益2,321百万円(同9.0%増)、リクルーティング事業が売上高1,044百万円(同38.2%減)、営業損失140百万円(前年同期は410百万円の利益)、情報出版事業が売上高900百万円(同9.9%減)、営業利益28百万円(同62.2%減)、その他が売上高1,042百万円(同22.4%増)、営業利益93百万円(同7.6%増)となった。その他の内訳は、IT・ネット関連事業が売上高658百万円、営業利益147百万円、海外事業が売上高383百万円、営業損失53百万円であった。

人材サービス事業の人材紹介を取り巻く事業環境は、コロナ禍により一部の顧客企業で採用マインドの低下や採用活動の延長・中断等の動きが見られたが、第5世代移動通信システム(5G)向け投資の本格化を背景に半導体業界の採用ニーズが旺盛な状況が続いており、さらに緊急事態宣言解除後は採用活動を再開させる企業が出始めた。もちろん医療・福祉分野においても、全体的には採用ニーズは旺盛な状況が続いている。このため同社は、世界的に販売が低迷する自動車業界から半導体業界に注力先をシフトするなど、注力分野の絞り込みや営業体制の再構築、求人企業及び転職希望者との面談強化によるきめ細かな対応に取り組んだ。この結果、一般企業向け専門職・技術職の人材紹介の業績はほぼ横ばいで推移し、病院や介護施設などを対象とした看護師や保育士の紹介は業績が拡大、人材紹介事業については増収を確保した。

人材派遣・紹介予定派遣・業務請負等では、医療・福祉分野における保育士派遣は、派遣先施設の休業・休園措置などに伴う派遣スタッフの稼働数減少の影響が、緊急事態宣言解除後の第2四半期にはほぼ解消し、業績は順調に拡大した。看護師派遣は、派遣ニーズがやや鈍化したため新たな派遣スタッフの稼働は伸び悩んだが、既存派遣スタッフの契約継続を推進したことで業績は堅調に推移した。また、その他分野の人材派遣では、クロノスと共同開催したWebエンジニア向けオンラインセミナーへの参加者が派遣スタッフとして稼働するといった成果は生じたが、雇用調整のなか、既存派遣スタッフの有給休暇取得などに伴う稼働時間の減少や新規派遣の苦戦により業績は落ち込んだ。

リクルーティング事業では、新卒採用領域において、2021年3月卒業予定の大学生を対象とした新卒採用サイトや2022年3月卒業予定の大学生を対象としたインターンシップサイトの広告取り扱いが第2四半期に入り徐々に回復しているものの、「リクナビ」の合同企業説明会等が2020年8月まで中止になるなど取扱高が大きく減少した。中途採用領域では、飲食店や小売店、サービス業、人材派遣会社をはじめとする顧客企業の採用マインドの回復が遅く、正社員や派遣登録スタッフ、アルバイト・パート募集の求人広告の取扱高が大きく落ち込んだ。一方、成果報酬型サービスで顧客支持が高まっている「Indeed」が、採用ニーズの旺盛な医療・介護・物流分野を中心に好調に推移した。また、第1四半期に連結子会社化したジャンプは、採用コンサルティングや採用ツール作成、コロナ禍でニーズが高まったインターンシップのオンライン化サポートなど、顧客企業の採用活動支援により今後の収益貢献が期待される。

情報出版事業では、コロナ禍により第1四半期は住宅メーカーや飲食店、小売店、サービス業といった顧客企業の販促マインドが大きく落ち込んだものの、第2四半期に入って主力の生活情報誌や住宅情報誌の業績が大きく改善、それに伴い折り込みチラシなどのポスティングサービスも業績が回復した。また「Indeed」の取扱高が引き続き順調に拡大したことに加え、コンシェルジュサービスもWeb・電話面談の利用を促進した転職支援が引き続き好調だった。

その他のIT・ネット関連事業においては、主力の「日本の人事部」事業で5月に開催した人事イベント「日本の人事部 HRカンファレンス2020 -春-」のオンライン化への移行や業務効率化が奏功し、HR情報提供事業(HRビジョン)の業績を微減益にとどめることができた。2019年10月に子会社化したクロノスは、システム開発分野で開発プロジェクトの開始延期や見送り、経験の浅いエンジニアが対応可能な開発プロジェクトの減少など、依然厳しい事業環境が続いたものの、ラーニング分野ではコロナ禍でIT投資を抑制する企業も多いなか、ITエンジニアの新入社員研修サービス終了後の大手企業への営業強化が奏功し、業績は順調に推移した。海外事業では、人材紹介・派遣や人事労務コンサルティングに対するニーズが低下するなど総じて大きな影響を受け、各国とも減収となった。このため、回復のタイミングに向けて、SNSなどWebプロモーションによる登録者の獲得を継続するとともに、オンラインなどを利用した顧客企業との接点確保にも努めている。なお中国では、コロナ禍でも事業運営や労務問題に対応してきたことが顧客企業の信頼につながった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)


<YM>
情報提供元: FISCO
記事名:「 クイック Research Memo(4):コロナ禍を受け2010年3月期以来の減収減益も、主力の人材紹介が業績をけん引