■要約

TOKAIホールディングス<3167>は、静岡県を地盤にLPガスを中心とした「エネルギー・住生活関連事業」と「情報通信事業」を展開する総合生活インフラ企業。「Total Life Concierge(TLC:暮らしの総合サービス)構想※1」の実現に加えて、2019年3月期より新たな戦略として「ABCIR+S(アブサーズ)※2」を打ち出した。M&A戦略も推進しながら更なる飛躍を目指している。

※1 Total Life Concierge構想:同社グループが提供する様々なサービスにより、顧客の快適な生活を総合的かつきめ細かくサポートし、顧客満足度の向上を目指すビジョンのこと。
※2 アブサーズ:同社グループのデジタル技術革新に向けた戦略のこと。AI(A)、Big Data(B)、Cloud(C)、IoT(I)、Robotics(R)、Smart Phone(S)の頭文字をつなげた造語で、関連する新規サービスの創出・育成に注力する。


1. 2021年3月期第2四半期累計業績
2021年3月期第2四半期累計(2020年4月−9月)の連結業績は、売上高で前年同期比3.4%減の89,836百万円、営業利益で同0.9%減の5,452百万円となった。売上高は、エネルギー事業(LPガス、都市ガス事業)における仕入価格下落に伴う販売価格低下や、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)における営業活動の遅れが影響し減収となった。利益面では、継続取引顧客件数の増加に伴う月次課金収益の増加や、エネルギー事業における仕入れコスト低減効果、法人向け情報通信事業の増益等により前年同期並みの水準を確保し、社内計画に対しても数億円程度上回って着地した。2020年9月末の継続取引顧客件数は前年同期比124千件増加の3,042千件となった。

2. 2021年3月期業績見通し
2021年3月期の連結業績は、売上高で前期比4.8%増の205,300百万円、営業利益で同5.5%増の15,000百万円と期初計画を据え置いた。4期連続増収、3期連続の最高益更新を見込んでいる。コロナ禍の状況が不透明ではあるものの、営業利益の通期計画に対する第2四半期までの進捗率は36.3%と、直近3年間平均(31.6%)を上回るペースとなっていることから、達成可能な水準と言える。引き続き「継続取引顧客件数の拡大」「M&Aの更なる推進」「ABCIR+Sの実践」「TLCの深化」などに取り組み、2022年3月期以降の成長につなげていく考えだ。継続取引顧客件数に関しては、前期末比102千件増加の3,105千件を目指す。

3. 重点施策の進捗状況
重点施策として取り組んでいる「ABCIR+S」戦略では、プライベートDMP※「D-sapiens(ディーサ)」を使ってサービスの解約予兆顧客を抽出し、解約抑止施策を打つ取り組みをアクア事業でスタートした。解約率低下に一定の効果を確認できたことから、2020年秋以降はその他のサービスにも横展開し、デジタルマーケティング施策によって効率的に顧客数の拡大とクロスセル率の向上による1顧客当たり売上高の拡大を目指していく。またLPガス事業では、新基幹システムの導入に合わせて、無線通信技術を活用した自動検針化を推進していく。自動収集する検針データを基に配送業務等の効率化等を図るほか、「D-sapiens」と連携して新たなサービス提案にもつなげていく考えだ。M&A戦略では、2020年4月以降でM&A2件(電気工事会社、ビルメンテナンス会社)とアライアンス1件(ベトナムLPガス事業会社)を実施しており、今後も積極推進していく方針となっている。また、TLCの具現化に向けた新規事業への取り組みとして、アライアンスによるヘルスケアサービス事業への新規参入を予定しており、今後の動向が注目される。

※DMP(データマネジメントプラットフォーム)とは、インターネット上の様々なサーバーに蓄積されるビッグデータや自社サイトのログデータなどを一元管理・分析し、最終的に広告配信などのアクションプランの最適化を実現するためのプラットフォームを言う。


4. 株主還元策
株主還元については、継続的かつ安定的な配当に努めていく方針に変わりはない。2021年3月期の1株当たり配当金は前期比横ばいの28.0円(配当性向43.3%)を予定している。今後についても、配当性向40~50%を目安に収益動向や資金需要を勘案しながら配当を実施していく。株主優待ではアクア商品やQUOカード、1,000円相当の「TLC会員サービス」のポイントなど複数の候補品から1つを3月末、9月末の株主に贈呈している。株主優待も含めた単元当たり総投資利回りを現在の株価水準(2020年11月16日終値1,072円)で試算すると3.5~6.4%※となる。

※株主優待をQUOカード、またはアクア商品で選択した場合。


■Key Points
・2021年3月期第2四半期累計業績は、継続取引顧客件数の拡大等により前年同期並みの収益水準を確保
・コロナ禍でも生活インフラサービスは堅調、2021年3月期業績は連続最高益を更新する見通し
・「D-sapiens」を活用したデジタルマーケティングの本格運用を開始し、顧客の解約防止、クロスセルの強化に取り組む

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 TOKAI Research Memo(1):2021年3月期業績は過去最高益更新見通し