■今後の見通し

1. 2020年12月期業績見通し
すららネット<3998>の2020年12月期通期の業績は、売上高1,481百万円(前期比29.8%増)、営業利益271百万円(同321.6%増)、経常利益283百万円(同331.0%増)、当期純利益193百万円(同340.4%増)と予想されており、好調な上期決算を受けて、期初予想(売上高1,364百万円、営業利益152百万円)から上方修正された。同社を取り巻く事業環境はフォローであり、この通期予想を達成するのは十分可能であり、今後の契約学校数やID数の増加によってはさらなる上方修正もあり得ると弊社では見ている。

市場別売上高としては、学習塾749百万円(前期比20.7%増)、学校435百万円(同29.5%増)、BtoC288百万円(同65.0%増)、その他7百万円(同11.4%減)と予想されており、各市場で2ケタ増収を見込んでいる。

2. 2020年12月期業績の前提と見通し
(1)新型コロナウイルス感染症の影響
新型コロナウイルス感染症の影響は予測し難いため、通常の経済活動に徐々に戻ることを前提としている。

(2) 塾マーケット
在宅学習、オンライン学習需要拡大により、既存塾、中堅ローカル塾の利用、校舎数、校舎当たりID利用数が期初予算を上回ったため、2020年12月期通期予想を上方修正した。

(3) 学校マーケット
GIGAスクール構想が加速しているものの、そのインパクトは主に2021 年度以降となると思われるため、2020年12月期下期における業績への影響は限定的であると同社では予測している。また、学習コンテンツ導入費用を経済産業省が助成する「EdTech導入補助金」についても、現状では補助金採択額と会計処理が確定していないため、2020年12月期の修正予算には織り込んでいない。いずれも同社の業績への寄与は2021年12月期となる見込み。

(4) BtoCマーケット
在宅学習需要が拡大したことにより、2020年12月期上期のID数は当初予算を大幅に上回ったため、通期予想を上方修正した。なお、在宅学習需要は拡大したものの、下期は上期のような臨時的な需要拡大は見込んでいない。

(5) 海外マーケット
2020年12月期下期は営業活動を再開する想定としているものの、上期に営業活動を行えず、今年度の渡航については未だ見通しが立たないことから契約数、ID数は当初予算を下回って推移する見込み。

(6) 開発関連
利用ID者数が当初計画を大きく上回っていることから、引き続きサーバー増強などシステム強化を実施する。音声認識(英語の4技能対応)、手書き機能(漢字や数式)などの機能拡充、コンテンツの追加開発も積極的に実施する。

3. 中長期の展望
(1) 市場予測:入試制度改革と求められる人材の変化
現在の日本の教育市場では、今後は以下のようなスケジュールで入試制度改革が行われる計画になっている。
2021年:新学習指導要領中学校スタート、大学入学共通テスト開始
2022年:新学習指導要領高等学校スタート

また、文部科学省が「GIGAスクール構想」を発表しているが、その骨子は「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018〜2022年度)」であり、各単年度1,805億円に加えて2019年度補正予算2,318億円が講じられている。具体的な内容としては、公立校における校内通信・ネットワーク整備、児童生徒1人1台端末、個別最適化EdTechの活用となっている。

一方で、実際の教育現場では「多様な生徒への対応(学力差・地域差・不登校など)」「教師の働き方改革」「主体的な学びの実現」などが求められているが、これらは「すらら」で解決することが可能であり、同社にとっては追い風と言える。

(2) 定量的目標
同社では当初、2021年12月期を最終年度とする中期経営計画を発表していたが、2019年12月期のTVCMの効果が期待値に届かず、売上高は計画を下回った。これを受けて、新たに2022年12月期を最終年度とする中長期経営計画(3ヵ年)を発表した。この計画の定量的目標値は、2022年12月期に売上高2,000百万円、営業利益310百万円となっているが、足元の業績が好調であることから、この目標が前倒しで達成される可能性は高いと弊社では見ている。


■株主還元策

同社は2019年12月期まで配当を行っておらず、現時点では2020年12月期も無配の予想である。当面は投資及び内部留保優先の方針だが、今後の業績動向によっては株主還元策が発表される可能性もありそうだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 すららネット Research Memo(7):海外市場と低学力生徒向けの市場は拡大余地あり