■決算概要

1. 2020年3月期決算の概要
(1) 決算の概況
シュッピン<3179>の2020年3月期の業績は、売上高が前期比0.1%増の34,658百万円、営業利益が同21.5%増の1,754百万円、経常利益が同21.1%増の1,735百万円、当期純利益が同21.5%増の1,193百万円と、微増収ながら大幅な増益となった。期初予想に対しても、売上高が下回った一方、利益面では上回る着地となっている。

「時計事業」「筆記具事業」「自転車事業」が伸長した一方、主力の「カメラ事業」が落ち込んだことにより、売上高全体では微増にとどまった。特に、カメラ、時計ともに中古品が好調であったものの、消費増税に伴う消費の冷え込みやポイント還元対象となっていないこと※などの要因により新品が低調に推移。とりわけカメラの新品については、新製品の発売延期や新型コロナウイルス感染拡大の影響(インバウンド需要の減少)など様々な外部要因が重なったことで下振れた。

※2019年10月1日からの消費増税に伴い、中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段を使ったポイント還元を支援する制度(2020年6月末まで)が導入されたが、同社はその対象とはなっていない。したがって、自社ポイントの発行により対策したものの、ポイント施策を実施していない他社ショッピングモール出店分については競争力が低下し、とりわけ価格面が重要な決め手となる新品の売上高が大きく落ち込む結果となった(自社サイトが前期比7.8%増とプラスを確保した一方、他社ショッピングモールは同33.2%減と大きなマイナスとなっている)。


利益面では、中古カメラの粗利益率が改善したこと(※1)、売上高に占める中古品比率が高く推移したこともあり、全体の粗利益率は18.0%(前期は16.2%)に大きく改善。売上高成長以上に利益成長が可能となるビジネスモデル体制をより強固にすることができたと言える。一方、ポイント引当金の増加※2等に伴って販管費率は12.9%(前期は12.0%)に悪化したものの、粗利益率の改善によりカバーして営業利益率は5.1%(前期は4.2%)に大きく向上した。また、「自転車事業」が、販売チャネルの拡充などにより黒字化を達成したことは特筆すべきところである。

※1 積極的なECでの買取施策などが粗利益率の改善に貢献している。
※2 前述のとおり、10月1日以降、消費増税後のキャッシュレス決済に対するポイント還元政策への対策として、自社ポイント発行費用(自社サイト及び店舗における自社ポイント施策の強化によるポイント引当金)が増加した。


財務面では、新型コロナウイルス感染拡大の影響に備え、十分な手元現金を確保したことや、買取施策の成果として「商品」(中古品在庫)が順調に積みあがったことなどにより、総資産は前期末比21.6%増の12,008百万円に拡大。一方、自己資本は内部留保の積み増しにより同16.2%増の5,698百万円の増加となったことから、自己資本比率は47.5%(前期末は49.7%)と若干低下した。

(2) 販管費の状況
2020年3月期の販管費は前期比7.7%増の4,487百万円(+319百万円)と大きく増加し、販管費率も12.9%(前期は12.0%)に悪化した。その内訳をみると、「人件費」(+86百万円)、「業務委託費」(+59百万円)のほか、「ポイント引当金繰入額」(+172百万円)の増加が目立つが、それ以外はほぼ横ばいで推移している。特に、「ポイント引当金繰入額」の増加が大きいのは、前述のとおり、キャッシュレス決済ポイント還元政策(2020年6月末まで)への対抗策として実施した自社ポイント施策の強化によるものであり、一過性のものと考えられる。また、「業務委託費」の増加は、AIMDの開発に伴う分析費用(先行費用)などが理由である。

一方、「支払手数料」が減少傾向にあるのは、自社サイトの強化により、他社ショッピングモールの構成比が下がってきたことが背景にある。ただ、他社ショッピングモールの集客力は依然魅力的であり、同社の知名度の維持向上やブランディングの面からの重要性に変わりはなく、今後も一定の比率は維持していくものと考えられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 シュッピン Research Memo(4):2020年3月期は消費増税などにより新品が落ち込むも中古品が好調推移(1)