■今後の見通し

1. 2020年3月期計画及び中期業績目標
エヌ・シー・エヌ<7057>の2020年3月期の業績見通しについては、売上高6,935百万円(前期比6.4%増)、営業利益285百万円(同9.3%増)、経常利益349百万円(同10.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益261百万円(同7.8%増)とする従来の計画を据え置いている。引き続き、住宅分野、非住宅分野での事業拡大や省エネルギー計算サービスの展開を進めて業界全体における同社のシェア拡大に努める。2017年3月期から2020年3月期にかけてのCAGR(年平均成長率)は、売上高5.6%、経常利益28.9%となる。なお、同社の決算においては実現性のあるコミットされたものを予算計上しており、新規においては予算として入れていないため、数値については保守的な計画と見てよいだろう。登録施工店数516社(2019年9月)のうち、上位20%で売上の8割を占めており、100位以下は年間1棟程である。現在の登録店全体のSE構法の比率を引き上げるとともに、1社当たりの棟数を倍増させることにより売上成長の拡大が期待される。また、市場が拡大している非住宅分野においては、SE構法以外にも構造計算を実施することで受注の増加を図る。

中期業績目標としては、既存事業業における売上目標として、2023年3月期の売上高を100億円(2019年3月期実績比53.8%増)と掲げている。環境設計等は、新省エネ計算の業務化へ向けたネットワーク構築により5億円(同66.6%増)、非住宅分野は、SE構法だけでなく、施設建築木造化(CLTを含む)に関するトータルソリューション展開により、30億円(同650%増)といずれも大幅な成長を計画している。なお、住宅分野は65億円(同12.0%増)と緩やかな成長を計画。

なお、海外展開の状況については、同社は韓国企業2社と登録施工店契約を締結している。しかし、発注は受けているものの、ホワイト国問題等など外交情勢の影響により、物件の出荷予定が遅れている状況。もっとも、業績計画には組み入れていないため、業績計画に対する影響はない。

韓国では耐震規定が「2階以上、延べ面積200平方メートル以上のすべての住宅に対して耐震設計が義務化」へと2017年に改訂されている。木造建築物も例外ではなく、本法改正後、木造非住宅を計画中の建設業者・設計者より「SE 構法の構造計算」に対する問い合わせが増加しているだけに、外交情勢の行方を見守りたいところである。

2. 中長期の成長戦略
(1)大規模木造建築(非住宅)分野の拡大
大規模木造建築(非住宅)分野については、住宅よりも規模の大きい木造建築において、同社グループがこれまで培った構造計算ノウハウが必要となるため、事業拡大できる分野であると考えている。大規模木造建築に対応した設計システム等の技術研究開発や、構造加工品等の生産・供給体制を強化し、集合住宅や病院・保育園等の非住宅分野への展開に注力する計画である。

立体解析技術を用いた構造計算システムであり、大規模木造建築に対応した構造設計システム「WOLF-3」の実践投入を開始した。入力した構造伏図から構造モデルを自動生成し、許容応力度計算の一貫処理を行うことが可能。また、プレカット加工CAD構造計算データのシームレスな連携により、生産設計の実施が可能となる等、複雑な形状の構造解析が可能となるほか、複雑な加工形状を正確に再現することができることが特徴である。

(2)環境分野
2021年4月に予定されている改正建築物省エネ法の施行により、300平方メートル未満の住宅・非住宅を対象として基準適合の可否等の説明が義務化される。法改正に先立って新サービスを導入しており、2023年3月期には省エネ計算戸数1万戸を目指す(2019年3月期実績3,943戸)。

(3)SE構法に対する認知度向上を推進
同社は木造耐震設計事業を主力事業としているが、この事業の安定的・継続的な発展が収益基盤の基礎として必要であると考えている。そのためには、登録施工店ネットワークの継続的な拡大のほか、今後の先を見据えた戦略の一つとして「構造計算の普及」における認知度向上が欠かせないが、同社社長の田鎖氏が代表理事を務める(一社)耐震住宅100%実行委員会などを通じて、真に品質の高い耐震住宅の普及に取り組んでいる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 村瀬智一)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 エヌ・シー・エヌ Research Memo(6):20年3月通期は増収増益見込み。非住宅分野は市場の拡大で成長