■要約

学研ホールディングス<9470>は教育分野と医療福祉分野を事業領域とする総合サービス企業である。教育分野では学習塾の運営や児童書、学習参考書、小学校・中学校向け教科書等の出版、医療福祉分野では高齢者・介護支援住宅の運営や保育園の運営など子育て支援事業などを展開している。2018年9月にグループホームトップのメディカル・ケア・サービス(株)(以下、MCS)を子会社化するなど、ここ数年は積極的なM&Aにより業容を拡大している。

1. 2019年9月期業績はM&A効果により会社計画を上回る増収・営業増益に
2019年9月期の連結業績は、売上高で前期比31.3%増の140,559百万円、営業利益で同23.8%増の4,523百万円となり、10期連続増収、営業利益は5期連続増益となった。また、修正会社計画(売上高138,000百万円、営業利益4,200百万円)に対してもいずれも上回って着地した。教育分野は進学塾事業や出版事業の収益悪化などにより減収減益となったものの、医療福祉分野がMCSを子会社化した効果もあって、大幅増収増益となったことが要因だ。MCSについては売上高で30,333百万円、営業利益で1,392百万円の上乗せ要因となっている。

2. 2020年9月期は教育分野の収益性改善により増収増益続く
2020年9月期の連結業績は、売上高で前期比1.7%増の143,000百万円、営業利益で同12.8%増の5,100百万円となる見通し。教育分野では進学塾事業における不採算校舎の整理・統合や出版事業の絞り込みを行うなど構造改革の効果が顕在化するほか、小学校向け教科書の販売増もあって収益性が向上し、増益に転じる見通し。一方、医療福祉分野についてはサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)やグループホームの新規開設を積極化することで売上高は増加するものの、人件費を含めた先行投資増により営業利益は減益を見込んでいる。ただ、人件費については保守的に見積もっているため、運営が順調であれば利益面での上乗せ余地はあると見られる。

3. 教育分野が成長軌道に乗れば、収益拡大ペースも加速する可能性
2019年9月期からスタートした2年間の中期経営計画「Gakken 2020」の進捗状況は、全体業績で見ればおおむね順調に推移しているが、教育分野については利益において当初計画を下回っている。少子化の進行と個別指導学習塾等の台頭により生徒獲得競争が激化し、進学塾事業の収益が苦戦していること、インターネットや電子書籍の普及に伴い出版事業の縮小が続いていることなどが主因となっている。また、新規事業として注目されたAIを活用した自立型個別学習塾「G-PAPILS(ジーパピルス)」についても、成功事例の拡大に時間を要している状況にある。今後はこれら課題の解決に加えて、英語事業やSTEAM事業など成長が見込める事業を強化していくことで、教育分野の収益を拡大していく方針となっている。一方、医療福祉分野については市場拡大が続くなかでサ高住、グループホームなどの拠点数を拡大し、グループ連携を図ることで安定成長が可能と見られる。このため、教育分野が成長軌道に乗れば、全体業績の成長ペースも加速していく可能性があり、その動向が注目される。

■Key Points
・2019年9月期は10期連続増収、5期連続の営業増益を達成
・2020年9月期は構造改革効果で教育分野の収益力が回復し、増収増益が続く見通し
・教育分野と医療福祉分野を成長エンジンとして、持続的成長による企業価値向上を目指す

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 学研HD Research Memo(1):医療福祉分野の業容拡大と教育分野の構造改革により収益拡大が続く