■日本アジア投資<8518>の活動実績

中期経営計画(詳細は後述)の初年度となった2019年3月期は、既存のPE投資資産の売却には遅れが生じたものの、プロジェクト投資資産の積み上げには一定の成果を残し、安定収益の拡大と財務バランスの強化に向けて順調に進捗した。また、新たなプロジェクト投資への取り組みとして、「スマートアグリ」(植物工場)も操業を開始している。「PE投資事業」及び「プロジェクト投資事業」における主な活動実績は以下のとおりである。

1. PE投資事業
(1) ファンド運用残高
同社グループが管理運営等を行っているファンドの運用残高は前期末比13.9%減の16,494百万円に縮小した。2017年6月に設立した事業承継型バイアウトファンドへの追加出資(20億円)を受け入れたものの、海外で運用を他社に引き継いだファンドや減額したファンドがあったこと、国内において運用期間を終えて清算したファンドがあったことによる減少分をカバーしきれなかった。ファンド数も前期末比2件減の10ファンドとなっている。ただ、引き続き、アジアをテーマとした2つのファンド※の企画が進行しており、2020年3月期中の設立を目指している。

※具体的には、日本各地の中小企業のグローバル化支援(海外へのビジネス展開支援、及びインバウンド需要の取り込みによる成長支援)、及び中国市場での成長が期待される日本のハイテク企業の支援がテーマとなっている。


(2) 投資実績
また、同社グループの自己勘定及び同社グループが管理運営等を行っているファンドからの投資実行額についても4社(国内2社、海外2社)に対して合計136百万円(前期は13社に対して合計1,205百万円)にとどまった。その結果、2019年3月末の投資残高は前期末比18.9%減の8,437百万円と縮小した。

(3) IPOの実績
2019年3月期における国内IPO実績は2件となった。2018年10月30日にVALUENEX<4422>※1が東証マザーズに上場し、2019年3月19日にはミンカブ・ジ・インフォノイド<4436>※2が同じく東証マザーズに上場した。

※1 特許・文書解析ツール「TechRadar」、「DocRadar」のASPライセンスサービス及びこれを用いたコンサルティングサービスを提供。
※2 AI、クラウドインプットによる情報生成技術を活用した金融情報メディア(「みんなの株式」等)の運営並びに金融機関向け情報系FinTechソリューションの提供。


2. プロジェクト投資事業
(1) 投資実績
既に企画・建設中のプロジェクト(3件)を含め、12件に対して合計3,612百万円(前期は11件に対して合計2,681百万円)の投資実行を行った。そのうち、メガソーラープロジェクトへの投資実行は9件(新規6件、既存2件、短期売却目的1件)。2019年3月末の保有プロジェクトは建設・企画中のものを含めて合計21件(93.8MW)※となっている。また、メガソーラー以外の再生可能エネルギーへの投資実行は、風力1件(既存)、バイオガス1件(新規)となっており、2019年3月末の保有プロジェクトは、木質バイオマス1件(売電中)、バイオガス2件(売電中1件、建設中1件)、風力1件(企画中)の合計4件(最大28.83MW)が進行中である。さらには、新規事業テーマである「スマートアグリ」(植物工場)についても第1号案件の操業を開始している(詳細は後述)。

※合計21件(93.8MW)のうち、売電中が12件(29.8MW)、建設・企画中が9件(64.0MW)という進行状況となっている。


(2) 再生可能エネルギープロジェクトの売電開始事例
2019年3月期は6件(12.53MW)のプロジェクトが売電を開始した。そのうち2 件※1は水上発電所となっており、造成工事のコストが不要なことに加えて、高い発電効率を実現※2できるところに特徴がある。また、別の2件については、太陽光を農業と発電でシェアするメガソーラーシェアリング発電所という新しいスタイル※3を取っており、こちらも造成工事がほとんど不要であるとともに、日照条件にも優れている。また、発電事業収入の一部を20年間にわたり営農支援費用として支払うことで、地域創生にも貢献できる。様々なパートナー企業との協業等により、同社ならではの価値創出を実現しているところは高く評価できるとともに、今後のプロジェクト投資における方向性を示す事例として捉えることができる。さらには、「ながいも」の廃棄部分(残渣)をメタン発酵させて生成するバイオガスを原動力とする発電所も売電を開始している。

※1 香川県さぬき市中王田(なかおうだ)池、及び東王田(ひがしおうだ)池の2ヶ所。
※2 周辺に遮断物がないため日照条件が良好である上、水面の冷却作用でパネルの温度を低く保ち、発電効率を維持できるところに特徴がある。
※3 農地に支柱を立て一定の間隔を空けてパネルを設置し、その下で大型農機にて大麦を栽培するスタイル。同社とリニューアブル・ジャパン(株)(同社出資先)、東急不動産(株)の共同出資プロジェクトとなっている。


(3) 新たなプロジェクト投資への取り組み
2018年10月に試験的な取り組みとして、新規事業テーマである「スマートアグリ」(植物工場)の第1号案件※への投資を実行すると、2019年3月に操業を開始。野菜工場の建設・運営に実績のあるベンチャー企業との協業であり、運営はベンチャー企業が担当し、同社は建設・運営資金の一部を出資する役割を担っている。今後は、早期軌道(収益化)に乗せるとともに、後続案件にも取り組む方針である。一方、もう1つの新規事業テーマである「ヘルスケア」(介護施設案件)については、3件の計画があったものの、いずれも土地の入札で落札がなされず、プロジェクトの組成には至らなかった。

※建設地は兵庫県(敷地面積約820平方メートル)、工場タイプは完全閉鎖型、栽培品目はリーフレタス等(年間生産量約200トン)を予定している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 アジア投資 Research Memo(6):「スマートアグリ」(植物工場)第1号案件も操業開始