■今後の見通し

1. 2020年3月期の業績見通し
TOKAIホールディングス<3167>の2020年3月期の連結業績は、売上高が前期比4.8%増の200,800百万円、営業利益が同8.5%増の14,170百万円、経常利益が同5.9%増の14,040百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同5.9%増の8,230百万円と過去最高業績を連続更新する見通し。引き続き顧客基盤の拡大を進めるとともに、M&A並びに「ABCIR+S」戦略の推進に注力し、2021年3月期以降の本格的な利益成長に向けた基盤を構築する1年と位置付ける。

グループ顧客件数については前期末比100千件増の3,002千件を計画している。特に、ガス及び石油事業については営業エリアの拡大等の効果もあり同61千件増の745千件と大幅増を見込んでいる。また、CATV事業は同27千件増の1,090千件、アクア事業は同11千件増の167千件をそれぞれ前期並みの純増ペースとなる見通し。一方、減少傾向が続いている情報及び通信サービス事業については同1千件減の1,003千件と現状維持に取り組んでいく。

営業利益は前期比11億円の増益を計画している。ガス及び石油事業において前期の減益要因となった高気温や仕入コスト高の影響(合わせて24億円の減益要因)がなくなることを考慮すれば増益幅が小さいように見えるが、これは2021年3月期以降の本格的な利益成長を確実なものとするための先行投資を実行するためだ。具体的には「ABCIR+S」戦略を推進するための投資費用で約5億円、エンジニアを中心とした人材の積極採用による人件費の増加で約14億円を見込んでいる。また、前期はアクア事業において一時的な利益が発生したことも一因となっている。このうち、人材については223名の増員を計画(新卒採用で約100人)しているが、実際の増員数は計画を下回る可能性がある。また、顧客獲得維持コストについては前期並みの水準を計画している。M&A戦略については現在も複数の案件の精査を進めている段階だが、今回の会社計画には織り込んでいない。

2. 主要事業の見通し
(1) ガス及び石油事業
ガス及び石油事業に関しては顧客件数の拡大や仕入コスト減少等により増収増益を見込んでいる。LPガスの原材料価格は今後も変動する可能性があるものの、2020年3月期の仕入れ分の一部(家庭用のみ)については前期水準を下回る価格で予約を終えている。また、気温に関しても平年並みを前提にしているため、家庭用の顧客当たり消費量は回復する見込みだ。

LPガス事業における顧客件数は前期末比56千件増の684千件を見込む。純増分のうち32千件は既存営業エリアで、23千件は新規営業エリアで獲得する計画だ。新規営業エリアに関しては、2019年4月より三重県津市に新たに進出し営業を開始し、第4四半期に愛知県愛西市にも進出する予定となっている。新規営業エリアは合計10拠点となるが、今後もM&Aなども行いながら継続的に拡大していく予定となっている。新規営業エリアは進出後、5年間で1万件の顧客獲得を目標としており、今のところ順調に進んでいる。新規営業エリアの顧客件数については、2019年3月期末の27千件から2020年3月期は50千件、2021年3月期は70件に拡大していく計画となっている。

一方、都市ガス事業については顧客件数で前期末比5千件増の61千件を計画している。ただ、この5千件の増加分は2020年4月より事業譲受により営業を開始する秋田県にかほ市の顧客分となるため、売上に寄与するのは2021年3月期からとなる。2020年3月期については群馬県下仁田町の約1千件分、1.4億円分が増収効果として上乗せされる格好だ。また、前述したとおり下仁田町ではリフォームフェアなど他のグループ事業の営業も開始しており、1顧客当たり売上高の拡大が期待される。

(2) 情報及び通信サービス事業
情報通信サービス事業は1ケタ台前半の増収増益となる見通し。コンシューマー向けについては顧客件数が前期比1千件減の1,003千件と微減を見込んでいる。内訳は従来型ISP等で35千件減の384千件、光コラボで18千件増の345千件、「LIBMO」で21千件増の62千件、モバイルで5千件減の212千件となっている。引き続き従来型ISP等が減少する一方で、光コラボに関しては提携先を広げることで増加を見込んでいる。また、「LIBMO」については販路を拡大することで顧客件数を増やしていく考えだ。現在は、静岡県内の同社モバイルショップ8店舗で販売しているが、2019年3月にスマートフォン修理事業者のiCracked Japan(株)※とパートナー契約を締結し、iPhone修理サービスを行う「iCracked Store」を1店舗出店しており、同店舗内にて「LIBMO」の販売も行っている。「iCracked Store」については出店度の状況を見ながら、多店舗展開も視野に入れている。

※「iCracked(アイクラックト)」は2010年に米国で創業した世界最大級のスマートフォン修理事業者で、認定試験に合格した修理スタッフ「iTech(アイテック)」による対面修理と最短30分程度の即日修理によるスピーディな引渡しを可能としている。iCracked Japanは日本国内で「iCracked Store」を展開する日本法人で、2015年に出店を開始して以降、2019年5月までで全国に32店舗展開している。


一方、法人向けについてはクラウドサービス市場の拡大やIT投資拡大を追い風に通信サービス、データセンターサービス、システム受託開発を中心に増収増益が続く見通しで、増益を見込んでいる。

(3) CATV事業、アクア事業
CATV事業は、携帯キャリアとの連携によるセット販売施策により、顧客件数で前期末比27千件増の1,090千件を見込んでいる。業績については、若干の増収増益となる見通し。4K/8K放送に対応した光化投資(前期比3億円増の58億円)をグループ各社で進めていく計画となっており、今まで増益要因となっていた償却費(減少)が2020年3月期は横ばいとなるため、利益率もほぼ前期並みの水準となる見通しだ。

アクア事業は、大型商業施設等での店頭実演販売により、顧客件数で前期末比11千件増の167千件を見込んでいる。引き続き主要都市の大型商業施設での実演販売により顧客獲得を進めていく。売上高は顧客件数増により前期比1ケタ台後半の増収となるが、利益面では横ばい水準にとどまる見通しだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



<SF>

情報提供元: FISCO
記事名:「 TOKAI Research Memo(6):20年3月期はABCIR+S戦略や人材投資を強化、成長基盤を確立する1年に