■事業概要

5. 「Web」と「リアル」の両方への対応力や特化業種深耕などに強み
アイル<3854>の優位性・強み・特徴としては(1)独立系企業、(2)中小企業市場への特化、(3)「Web」と「リアル」の両方への対応力と高シェア、(4)業種特化型体制と業種特化型パッケージソフトによる特化市場深耕、(5)自社製品・サービス比率の高さ、(6)トータルソリューションを実現する「商品生態系」戦略、(7)高水準のコールセンター応答率、(8)社員の7割が技術職の体制などが挙げられる。

(1) 独立系企業
ソフトウェア企業の大まかな分類としては、メーカー系・ユーザー系・独立系、元請け・中間下請け・最終下請けなどに分けられるが、同社は創業以来独立資本による企業経営を行っているため、特定のメーカーやプラットフォームに限定されることなく、様々な分野のビジネスパートナーと連携することで、顧客にとって最適なソリューションサービスを提供できる強みがある。

(2) 中小企業市場への特化
会社創業以来、中小企業市場に特化して独自サービスを提供してきた。顧客企業数に占める割合は年商50億円未満の中小企業が約9割である。それらの取り組みが評価されて、2011年には経済産業省「中小企業IT経営力大賞2011」において、特別賞(商務情報政策局長賞)を受賞している。

(3) 「Web」と「リアル」両方への対応力と高シェア
市場競合優位性として、中堅・中小企業に特化して「Web」と「リアル」の両方を独自開発・提供できるという点が挙げられる。販売・在庫管理ソフトにおける市場占有率((株)富士キメラ総研調べ)で「Web」と「リアル」とも10%超の市場シェアを獲得しているのは同社のみである。

(4) 業種特化型体制と業種特化型パッケージソフトによる特化市場深耕
卸売業・小売業や製造業の中でも特に中小企業の多い業種に絞り込み、業種特化型システム開発や業種別専門チーム体制などサービス力・営業力で負けない体制を形成し、新規顧客獲得力アップにつなげている。具体的にはアパレル・ファッション業界、食品業界、医療機器業界、ねじ・金属部品業界、鉄鋼・非鉄業界を主力5業種と位置付けて、業種特化型パッケージソフト「アラジンオフィス・シリーズ」などによる市場深耕を推進している。そして新規受注に占める特化業種の割合は金額・件数とも5割超となっている。

(5) 自社製品・サービス比率の高さ
価格変動に左右されやすいハードウェアなど他社製品の売上高に依存しない収益構造構築を経営方針の重要事項として、自社製品・サービスを中心とする拡販を推進している。その結果、売上高に占める自社製品・サービス(ソフトウェア・運用・保守・会費など)の比率は約7割と高水準である。

(6) トータルソリューションを実現する「商品生態系」戦略
複数の商品群から成る「商品生態系」戦略も強みだ。ネットショップ構築・運営支援サービスの「インターネット領域」、店頭での売上管理やバックヤードの在庫管理の「リアル店舗・本部領域」、さらに「Web」と「リアル」の在庫やポイントを一元管理する「ネットとリアルの融合領域」をすべてカバーして、自社製品・サービスを開発している。そして様々な商品を組み合わせることで複合的な提案を可能にし、顧客へのトータルソリューションを実現している。

(7) 高水準のコールセンター応答率
同社はシステム操作方法などの問い合わせ窓口としてコールセンターを設け、迅速な対応による解決に取り組んでいる。顧客管理システムを活用し、問い合わせ窓口の一本化による迅速な対応と解決力、顧客情報の社内共有の徹底による安定したサポート対応などで、システムソリューション事業におけるコールセンター応答率は2018年7月期実績で業界最高水準の98.5%(放棄率は1.5%、一般的に放棄率5~10%を目標とする企業が多い)に達している。

(8) 社員の7割が技術職の体制
社員構成比(2018年7月期実績)は技術部門が7割、営業部門が2割、スタッフ部門が1割である。社員の7割が技術職の体制で、システム提供後のサポートも重視している。今後も技術部門の人員強化を継続するが、一方では労働集約型の生産体制から脱却するための環境整備や商品開発も展開する方針だ。

6. 「攻めの力」と「守りの力」で顧客企業数は増加基調
こうした優位性や強みの結果、「攻めの力」も「守りの力」も強く、顧客企業数は大幅増加基調である。

(1) 新規受注獲得は1日1件以上のペース
システムソリューション事業における新規受注獲得は年間230件~280件前後の水準で推移している。1日1件以上獲得のペースである。また競合商談の勝率は2018年7月期実績で92.0%と高水準である。

(2) ユーザーリピート率はほぼ100%
顧客企業数(取引のあるすべての顧客社数)は2018年7月期末時点で7,733社となった。新規受注の「攻めの力」に加えて、「守りの力」のユーザーリピート率もほぼ100%と高水準のため、顧客企業数は大幅増加基調を維持している。なおシステムソリューション事業におけるユーザーリピート率は2018年7月期実績が98.2%だった。

(3) パートナーからの高い信頼
新規案件紹介元・営業協力会社であるパートナー(銀行、SIer、IT機器メーカー、コンサル、会計事務所など)からの新規案件紹介件数及びパートナー紹介による新規受注件数も増加基調であり、パートナーからの高い信頼が背景にある。2018年7月期のシステムソリューション事業の新規受注案件数のうちパートナー紹介案件の割合は42.6%だった。

7. 小売業のオムニチャネル戦略でも優位性
近年の小売業においては、リアル店舗とWeb店舗を融合して、あらゆるチャネル(販路、顧客接点)から顧客が同じように商品を購買できる環境・流通経路を実現する「オムニチャネル」戦略が注目されている。同社は創業時から「リアルとWebの融合」を事業化し、一朝一夕では実現できない事業ノウハウ・事例を蓄積しているため、小売業における「オムニチャネル」戦略化の進展に対しても、他社にはまねできない優位性を確立していると言えるだろう。

8. 売上高は順調に伸長
売上高は創業以来、順調に伸長している。リーマン・ショックの影響で一時的に減少した時期もあったが、2010年7月期から再び増収基調となり、直近5期間で見ると2013年7月期売上高5,648百万円から2018年7月期売上高9,412百万円まで約1.7倍に伸長した。2019年7月期には売上高が100億円を突破する見込みだ。さらに中期経営計画(2019年7月期−2021年7月期、1年ごとに更新するローリング方式)では2021年7月期売上高118億円を目標としている。

9. ストック型商材の売上げも拡大基調
システムソリューション事業における各種システム保守、Webソリューション事業におけるASP型(クラウド型)でサービス提供する複数ECサイト一元管理ソフト「CROSS MALL」や、実店舗とECの顧客・ポイント一元管理ソフト「CROSS POINT」など、ストック型商材の売上高が拡大基調である。そして売上比率も上昇基調である。2018年7月期のストック商材売上高は2017年7月期比12.6%増の3,486百万円、売上比率は1.1ポイント上昇して37.0%となった。既存商材、新規商材とも伸長している。そして固定費のうち給与の約63%をストック型商材の売上総利益で賄える収益体制となった。3年後には給与カバー率が100%を超える見込みで、さらに人件費・固定費を賄える体制を目指す方針だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 アイル Research Memo(4):中堅・中小企業向けにトータルシステムソリューションを提供(2)