■財務状況とリスク要因

1. 財務状況
スリー・ディー・マトリックス<7777>の2018年4月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比287百万円減少の3,135百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産ではたな卸資産が713百万円増加した一方で、現預金が585百万円、売掛金が493百万円減少した。たな卸資産の増加については、主に2019年4月期以降の止血材の販売増加に備えて原材料調達を実施したことによる。また、売掛金の減少については、前期末の売掛金に含まれていた中国CPCとの独占ライセンス契約締結に伴う契約一時金550百万円がなくなったことが影響している。

負債合計は前期末比117百万円増加の933百万円となった。未払金が99百万円、未払費用が11百万円増加したことによる。また、純資産は同405百万円減少の2,201百万円となった。親会社株主に帰属する当期純損失計上により利益剰余金が1,866百万円減少した一方で、新株予約権の行使及び第三者割当増資を実施したことにより、資本金及び資本剰余金が合わせて1,513百万円増加した。

なお、同社は2018年7月に第三者割当により新株予約権を発行している。期末の現預金が1,162百万円と少なくなっており、今後の開発資金等を確保することが目的となっている。発行新株予約件数は45,000個(株式数で450万株相当、希薄化率18.77%)となり、当初想定行使価額は588円、下限行使価額は353円に設定、行使期間は2018年7月18日から2020年7月31日までとなる。当初行使想定価額で全て行使されれば約26億円を調達できることになる。調達した資金の使途としては、日本でのその他外科領域(心臓血管外科領域等)での止血材の製品化に向けた開発費用で500百万円、欧州等における次世代止血材の研究開発費及びCEマーキング認証取得費用で500百万円、後出血予防材の製品化及び各国でのCEマーキング認証取得費用で200百万円、止血材及び後出血予防材の製品供給及び研究開発用の原材料調達費用で600百万円、日本・欧州における粘膜隆起材の研究開発費用で600百万円などとなっている。

2. 事業リスクについて
同社の事業リスクとしては、主力製品である止血材の販売が想定どおり拡大しない可能性や、同社製品を上回る性能を持った競合品が台頭する可能性、次世代止血材の開発や日本での止血材、欧州での後出血予防材の承認が進まない可能性などが考えられる。こうした状況になれば、欧米市場における販売ライセンス契約の交渉にも影響を与えることになる。

ここ数年は止血材の販売遅れにより会社計画を下回る決算が続いてきたが、ここにきて欧州やオーストラリアで止血材の販売が拡大し始めており、また、後出血予防材や癒着防止材など適用領域の拡大によりさらなる売上拡大も見込める状況となってきている。欧州では「PuraStat®」の機能性に注目して自主的に臨床研究を実施し、学会などで発表する医師も増えてきており、業界での認知度も向上しつつある。KOLの間で採用が広がれば、タイムラグを置いて一般医師にも普及拡大していく可能性が高く、そうなれば売上成長も加速化していくことが予想されるだけに、その他パイプラインの開発動向も含めて今後の動向に注目したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 3Dマトリック Research Memo(9):開発資金等の確保を目的に第三者割当による新株予約権を発行