■オンコリスバイオファーマ<4588>の開発パイプラインの動向

3. その他パイプライン
(1) OBP-801
OBP-801は分子標的抗がん剤で、幅広いがん種に対する治療効果が期待されている。2015年5月より、米国で他の治療法に抵抗性を示す進行性の固形がん患者を対象とした第1相臨床試験が進んでおり、現在は血中濃度解析を行っている段階にある。安全性や有効性が認められれば、チェックポイント阻害剤との併用による臨床試験を進めていくことになる。

また、国内でも2016年8月に京都府立医科大学と共同研究契約を締結し、緑内障手術後の結膜組織の線維化(瘢痕形成)に対する抑制効果について動物実験が行われている。結膜組織の線維化の進行は眼圧の上昇につながり、緑内障の症状を再び悪化させる原因になると見られているためだ。既存の細胞増殖阻害薬では必ずしも十分な効果が得られておらず、線維化に対する高い抑制効果のある薬剤の開発が医療現場では求められている。また、白内障や加齢黄斑変性についても並行して動物実験を進めているが、これら疾患モデルについても薬効が認められるデータが得られているもようで、今後、眼科領域においての有力なパイプラインに育つ可能性が出てきている。

順調に進めば2018年度より医師主導の臨床研究に入る可能性があったが、2018年4月より新たに臨床研究法※が施行されることで、臨床研究へのハードルが高くなり、現時点で2018年内に開始できるかどうか微妙な情勢となっている。とは言え、これらの眼疾患についてはいずれも市場規模が大きいことから、今後の開発動向が注目される。

※製薬会社が資金提供する臨床研究について、研究を行うアカデミア側には、第三者委員会による研究計画の審査と厚生労働大臣への報告などが、製薬企業には契約締結と資金提供の情報等の公表が義務付けられた。2013年に発覚したノバルティスの高血圧症治療薬「ディオバン」にかかる臨床試験において、データの不正操作等が発覚し、社会問題化したことが契機となっている。


(2) OBP-AI-004
2015年7月に鹿児島大学と共同研究契約を締結し、B型肝炎ウイルス(HBV)の治療薬創製に関する共同研究を進めている。現在は、試験管レベルで効果が確認された候補化合物を絞り込む段階となっており、めどが立ち次第、ネズミによる前臨床試験(1クール10週間)を開始する予定となっている。

B型肝炎については、治療薬を投与してもウイルスの遺伝子が残るため完治することはなく、再活性化した場合の治療薬はまだない。このため、再活性化すれば時間とともに肝硬変や肝臓がんに症状が進行することになる。同社では、再活性化の原因が治療薬投与後でもHBs抗原※の量がほとんど変らないことにあると考えている。OBP-AI-004はこのHBs抗原の量を半分程度に低減する効果が試験管レベルで確認されており、HBs抗原の量が低減すれば再活性化リスクも大幅に低下するものと見ている。

※HBVの外殻を構成するタンパク質。


B型肝炎の患者数は世界で3.5億人、うち70%がアジア太平洋地域に分布しており、国内の患者数は150万人と言われている。B型肝炎治療薬の市場規模は2021年には世界で4,200億円程度まで成長するとみられているだけに、開発が進めば市場の注目度も一気に高まるものと期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 オンコリス Research Memo(5):OBP-801は眼科領域での可能性が広がる