■中期経営計画について

1. 前中期経営計画の振り返り
ソフト99コーポレーション<4464>は決算発表と同時に、第5次中期経営計画を発表した。第4次中期経営計画では当初の計画に対して、売上高は未達となったものの利益項目においては全て計画を上回っており、収益体質の改善は計画以上に進んだと言える。逆に、売上高が未達となった要因は主力のファインケミカル事業において、ボディケアカテゴリーで市場に根付く製品を生み出せなかったことや、一般消費者向け市場の需要停滞が続いたことが要因となっている。これは自動車の保有に対する消費者の意識が変わってきたことが背景にある。具体的には、カーシェアリングの普及により都市部では若者世代を中心に自動車保有率が低下傾向になってきたこと、また、自動車を保有しても昔ほど日頃の手入れを行わなくなり、洗車などは近場のガソリンスタンドで済ませてしまう利用者が増加している。

こうしたことを背景に、2017年3月期の一般消費者向けカー用品の売上高は、ガラスケア製品が2014年3月期に対して11.3%増と拡大したことを除けば、ボディケア製品が同9.8%減、リペア製品が同1.7%減といずれも減収となった。一方、業務用製品については営業を強化したことで売上高は同9.0%増と順調に拡大し、営業利益率の改善要因となった。

また、ポーラスマテリアル事業については中期経営計画を上回る売上高、営業利益を達成した。産業用資材で国内向け半導体洗浄用途が伸びたほか、生活資材用品でも国内の家庭用、自動車用がともに大きく伸びたことが貢献した。産業資材の国内向け売上高は2014年3月期に対して17.8%増となり、生活資材の国内向けは同58.7%増と大きく伸長した。事業セグメント全体の売上高も10.9%増となり、工場の操業度が上昇したことにより、営業利益率も計画の10.7%から13.5%と大きく上昇した。なお、半導体の製造ラインで28nm(ナノメートル)プロセス以下の先端プロセスにおけるウェハーの洗浄用部材メーカーは世界で2社しかなく、同社は5割弱のシェアを握っている。国内向けが伸びているのは、国内の半導体メーカーでの採用が進んでいることに加え、半導体製造装置メーカー経由で海外顧客に販売されるケースが増えていることも要因と見られる。

2. 新中期経営計画の概要
新たに発表した新中期経営計画(2018年3月期~2020年3月期)では、前述したように自動車保有に対する一般消費者市場における環境変化が今後も継続することが予想されるなかで、その対応を進めながら既存事業については収益水準の維持向上を図りながら、新市場の開拓並びに新規事業の創出に取り組んでいく3年間と位置付けている。

今回の中期経営計画のテーマとしては「SHIFT DOWN!!」を掲げた。自動車のようにギアを下げる(シフトダウンする)ことによって、力強く加速しながらいち早く新市場へ飛び込む、新たな市場を創りだすことを目指していく。

最終年度となる経営数値目標としては、売上高で25,000百万円、営業利益で2,700百万円、ROAで5.2%、ROEで4.0%、総資産売上回転率で0.46回としている。3年間の年平均成長率で見れば、売上高で3.8%、営業利益で3.7%となっており、前回の中期経営計画同様、着実に成長を進める堅実な計画になっているとの印象だ。また、M&Aを実施した場合の目指す収益水準としては売上高で30,000百万円、営業利益で3,200百万円としている。

事業セグメント別で見ると、ファインケミカル事業の伸びが年率5%成長と最も高く見込んでいる。一方、ポーラスマテリアル事業については2%台の成長と今回も保守的な計画となっている。

3. 分野別の経営施策
今回の中期経営計画では、自動車分野、産業分野、生活分野と3つの分野に分けて経営基本方針を策定している。2017年3月期の連結売上高に占める構成比で見れば、自動車分野が61%、産業分野が16%、生活分野が23%の比率となっている。

(1) 自動車分野
自動車分野では前述したように、市場環境が変化してきていることによって一般消費者向けの需要が今後も厳しさが続くとの認識のもとで、「新時代の自動車において安心・安全・快適を実現」していくことをテーマに、海外販売の拡大、自動車を取り巻く環境変化に対応した自動車美装の再定義、トラック・バス向けTPMSの販売強化と乗用車向けへの展開、自動車鈑金や運転講習等のノウハウを活用した新サービスの開発に特に注力していく。

海外販売に関しては現状、ロシアを含むCIS、中国を含む東アジア市場で全体の9割弱を占めているが、今後は日本車が走っている東南アジア地域の販売を強化していく方針で、為替の影響を受けないため現地生産の検討も進めていく。東南アジアの市場を確立した後は、インドや中東などへの展開も視野に入れている。

自動車美装の再定義とは、今後、カーシェアリングや自動運転、電気自動車の普及などによって自動車市場を取り巻く環境が変化すると予想されるなかで、同社の提供する製品・サービスもそうした環境変化に対応するものを開発していくこと、あるいは顧客ターゲットについてもカーシェアリング事業者等、新たに増える顧客の開拓を進めていくことで成長を実現することを意味している。カーシェアリング事業者向けについては既に、顧客開拓も進んでおり、ボディケア製品やコーティング剤などを販売している。カーシェリング事業者にとってみれば、保有車両を小まめに手入れし、清潔感を維持していくことは顧客満足度の向上につながるため、同社が販売できるアイテム数は多くあると見られ、今後の成長余地は大きいと見られる。

TPMS事業については、競合品がほとんどないトラック・バス向けに注力し、トラック運送業者等の開拓を進めていく方針となっている。TPMSのうち、タイヤに取り付けるセンサーについては電池寿命が切れる2~3年で交換需要が発生するため、一定以上の車両に導入が進めば安定した収益事業に成長することが予想される。特に、ヤマト運輸(株)や佐川急便(株)など大手運送会社では、トラックの総合運行管理システムを現在構築中であり、タイヤ破損による事故や空気圧低下に伴う燃費悪化を防ぎ、またメンテナンス作業が効率化できるTPMSを採用する可能性は十分あると見られ、その動向が注目される。乗用車向けについては、今後純正採用の増加が想定される中、センサーの電池が切れた際の交換需要をいかに取り込むかがカギとなる。

(2) 産業分野
産業分野については「新たな柱となる市場の開拓」をテーマに、ポーラスマテリアル事業では機能性多孔質体の情報・環境・健康産業への展開を進めいく。医療分野では既に、インフルエンザの検査用キットとして採用が進んでいるほか、その他の検査用途での試験も進めている。売上規模はまだ1億円を超えた水準だが、医療分野は安定した需要が見込めるため、用途が広がれば収益への貢献度も大きくなってくると予想される。

また、ファインケミカル事業ではコーティング製品を屋外構築物や鉄道、航空機、船舶、清掃業界向けに、難接着素材への印刷・接着を可能とする表面改質技術を使ったフレイムボンドを製造現場向けにそれぞれ拡販していく計画となっている。営業強化のため、2017年4月より、ファインケミカル事業の営業組織体制を見直し、産業分野向け専門の営業部隊を組織し、6名で新規顧客の開拓を進めている。産業分野向けの売上規模は年間で1億円程度だが、まだまだ開拓できていない用途が多くあると見られ、今後の展開が期待される。

(3) 生活分野
生活分野においては「ニッチ市場での存在感確立」をテーマに、メガネケア用品に続くケミカル新分野の開拓を進めていくほか、インターネット販売事業に注力していく。また、生活分野は同社の事業セグメントすべてにまたがっているため、グループリソースを共有化しながら経営効率の向上も目指していく。

各分野・事業の将来に向けた展開は、既存市場でのシェアを維持しつつ、各種施策を展開していくことで、中期経営計画の達成を目指していくことになる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 ソフト99 Research Memo(5):前中期経営計画はポーラスマテリアル事業がけん引し、利益ベースで当初計画を達