■要約

ワコム<6727>はペンタブレットの世界トップメーカー。クリエイターを対象とする市場では世界シェア約90%を誇る。自社ブランドでペンタブレット製品を販売するブランド製品事業と、デジタルペンやタブレットのコンポーネントを完成品メーカー向けにOEM供給するテクノロジーソリューション事業が2本柱となっている。

1. 2017年3月期決算は円高影響と新製品投入効果が期待ほど上がらず営業損失
同社の2017年3月期は、売上高71,313百万円(前期比8.1%減)、営業損失1,171百万円(前期は3,664百万円の利益)で着地した。期の前半は為替レートの円高によりダメージを受けた。新製品の集中投入で巻き返しを狙った下半期は、投入タイミングの遅れや品質問題などから、期待した効果を挙げるには至らなかった。

2. 中期的な企業価値の成長を目指した新たな取り組みを発表
同社は3月14日、2017年3月期実績が現行中期経営計画SBP-2019の計画と大きくかい離したことを受け、現行中期経営計画の取り下げと、2018年4月の経営トップの交代を含めた経営体制の変更に関する指針を発表した。これはプログラム法的な位置付けのものであるが、グローバル組織体制の変革に関するコスト削減など、2018年3月期において実行できる内容なども含まれており、2018年3月期中の進捗も注目される。

3. 2018年3月期はブランド製品の各種新製品のフル寄与で、黒字転換の見通し
2018年3月期について同社は、売上高76,800百万円(前期比7.7%増)、営業利益1,800百万円(前期は1,171百万円の損失)と黒字転換を予想している。前期下半期に投入したブランド製品事業の新製品が、今期はフルに寄与してくることがけん引すると期待している。トップクリエイター向け市場では同社製品の圧倒的な市場シェアはまったく変わっておらず、2018年3月期の自律回復シナリオは充分説得力があると考えられる。またテクノロジーソリューション事業もタブレットPC向けデジタルペンの好調が続いており一段の拡大が期待される。

■Key Points
・2017年3月期の上半期は円高要因が大きな減益要因。下半期は新製品投入も期待を下回る
・利益重視経営への転換と経営判断の質の向上を目指す新たな取り組みを発表
・2018年3月期はブランド製品事業の新製品効果の本格化などで黒字転換を狙う

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 ワコム Research Memo(1):利益重視経営への転換による中期的な企業価値成長を目指す、新たな取り組みを発表