■戦略と強み

1. 戦略
(1) シェアリングエコノミーに照準を合わせ、カテゴリーごとに押さえる
ガイアックス<3775>は、シェアリングエコノミーを今後の重要な投資分野と位置付け、シェアリングエコノミーの成長力を同社の成長力にするために、ソーシャルサービス事業とインキュベーション事業の両面からシェアリングエコノミーを囲い込む戦略を取っている。ソーシャルサービス事業では、既存サービスの提供先拡大による収益増加、サービスの強化、新たなサービスの開発をする一方で、インキュベーション事業では、グループ外でインキュベーションによる大きな収益拡大、グループ内インキュベーションによる新規事業開発をおこなっている。

その上で、最も重要な点はカテゴリーごとに押さえることだ。成長性有望なカテゴリーを押さえ、優良なプラットフォームを提供することで、多くのマッチングに成功し、高いユーザー評価を得ることができると考えている。同社は、この方針にのっとり、Notteco、TABICA、Tadakuの3つを自社および完全子会社内で運営している。なお、今後カテゴリーを拡大するとしてもこの3つに加え、1~2つになる見込みだ。

(2) 事業インフラとユーザーサポートの提供
シェアリングエコノミーにおいて、プラットフォームの提供だけでなく、事業インフラとユーザーサポートも普及拡大のためには必要と同社は考えており、積極的に取り組んでいる。具体的には、ソーシャルサービス事業において「TRUST DOCK」というブロックチェーン技術を活用した複数サービス共通のID基盤を提供している。同社は当基盤がシェアリングエコノミーの普及拡大に向けて必要不可欠であると考えており、同社や同社の投資先のプラットフォームだけでなく、他社のシェアリングエコノミープラットフォームを横断した認証を可能としている。TRUST DOCKは2016年12月に提供開始。プラットフォームを提供するシェアサービス事業者向けのサポートとしては、ソーシャルサービス事業で「フロントサポート」を業界に先駆け、いち早く特化型のサービスとして開発・提供しており、法人顧客の獲得に向けてハードおよびソフトの両面を整えている。シェアリングエコノミーの普及拡大には、安全性・信頼性の担保が必要不可欠であり、同社は積極的にこの分野においても取り組む姿勢を打ち出している。また、事業インフラ・ユーザーサポートサービスでの先行者利益を享受するよう計画している。なお、同社の上田氏は一般社団法人日本ブロックチェーン協会の理事として参画している。

(3) シェアリングエコノミー協会としての活動
一般社団法人シェアリングエコノミー協会を2016年1月に設立、同社の上田氏が代表理事に就任した。シェアリングエコノミーの普及・啓蒙や法整備に向けた活動を、同協会を通じて実施している。代表理事として上田氏は積極的な取り組みを続けており、安部首相を議長とする産業競争力会議の実行実現点検会合において、シェアリングシティ構想などの協会プレゼンを実施したほか、シェアリングエコノミー検討会議にも構成員として出席、第3回検討会では、同社子会社のnottecoがプレゼンをおこなった。このような取り組み・働きかけの結果、シェアリングエコノミー検討会議の中間報告では、自主ルールの作成と、政府によるシェアリングエコノミー促進センター(仮)の設置という、シェアリングエコノミーを政府が推進していく方針を引き出した。自主ルールでは、シェアサービスの利用を促進するため、個人間取引におけるトラブルや事故の回避を目的として2018年春を目処にルールが策定される見通し。また、シェアリングエコノミー促進センター(仮)の設置により、関係省庁との連絡調整もおこなうほか、政府からもシェアリングエコノミーの推進に向けてバックアップされる。法整備や官公庁対応にも注力し、普及への環境整備に積極的に取り組んでいる。

2. 強み
シェアリングエコノミーを事業として取り扱うには、ネットコミュニティの存在が不可欠であるが、同社の主力事業は、その育成・醸成のサポートが可能であること、起業・起業家の育成支援が可能であること、シェアリングエコノミー企業とのシナジー創出が可能であること、豊富なノウハウ・知見による「目利き」力があることなどが同社の強みとして挙げられる。同社の起業・起業家の育成支援の実力については、ピクスタとAppBankを法人設立から上場に至るまで支援した実績などからうかがえる。

(執筆:フィスコアナリスト 清水 さくら)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 ガイアックス Research Memo(4):2つの事業からシェアリングエコノミーを囲い込む