■中長期の成長戦略

1. 3ヶ年×2回の事業計画
サイバネットシステム<4312>は2015年2月に、2015年から 2020年までの3ヶ年×2の中期経営計画を公表している。基本戦略は、1)同社独自の価値の提供、2)自動車関連分野への注力、3)パートナーとの連携強化、の3点である。CAE、IT、可視化、ビッグデータなどを用いた、高付加価値、高品質のサービスを提供することで、中長期の経営目標として、前期(2015年~2017年)は連結営業利益率8%超を、後期(2018年~2020年)は連結売上高30,000百万円超、連結営業利益3,000百万円(連結営業利益率10%超)の達成を目指すというものである。

(1) 同社独自の価値の提供
従来の3D CAEにおけるMDS(マルチドメインソリューション:電気・熱など異なる分野をまたがって解析する手法)に加え、1D CAE及びテストと計測を連携させた拡大MDSを推進している。個々の開発者や設計者が単品のCAEで解決してきた構造、応力、熱、流体等の解析をすべて同時にシミュレーションして最適化することや、同社のCYBERNET CLOUDを利用したCAEクラウドと連携させ、ビッグデータ化しほかでも活用することなど、研究開発環境への付加価値の創造を目指す。これらの取り組みにより、2014年12月期時点で127億円のMDS関連の売上高を2020年12月期には259億円まで増加させる計画である。

(2) 自動車関連分野への注力
ADAS※やIoTとの連携など、ますます高度化・高精度化する自動車関連分野に対して、同社独自技術を用いたコンサルテーションを通じて、顧客にとっての最適なソリューションをグローバルに提供できることを目指す。さらには関連技術を持った企業のM&Aも視野に入れている。これらの取組により、2014年12月期時点で15億円の自動車関連の売上高を、2020年12月期には50億円まで増加させる計画である。

※ADAS(Advanced Driving Assistant System:運転手の支援や運転技術の補完、運転代理までも行う先進運転支援システムのこと


(3) パートナーとの連携強化
グローバル展開を加速するために、各地域でパートナー及びグループ間の連携を強化するとともに、開発子会社製品のOEM提供を積極的に推進する。

2. リスク及び対処
同社のリスクは、代理店ビジネスが中心であり、ソフトウェア商品が売上高の7割を占めていることである。開発ベンダーとの販売代理店契約は、原則として非独占かつ短期間で更新されることになっている。開発元の変化、つまり、M&Aや経営者の交代による販売戦略の変更により、開発元自身が販売を開始する場合や、他社と販売代理店契約を締結する場合などには、業績に大きな影響を与える可能性がある。同社としては、MDSの推進で顧客にとって必要不可欠な存在となること、グローバル化の推進によりソフトウェアベンダー側にメリットを提供することなどで、他の代理店とは一線を画し、ほかに替えのきかない存在となることでリスク回避を図る計画である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 内山 崇行)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 サイバネット Research Memo(6):2020年12月期に売上高300億円、営業利益30億円を目指す