■プラットフォームの全体像

農業総合研究所<3541>は、生産者には収益が増加し、スーパー等には店舗や品揃えの魅力アップが図れ、生活者には鮮度の高い農産物を提供できるという「三方良し」のプラットフォームを作り上げた。現段階では、ほぼ営業活動ゼロで伸びている。スーパー等や農家での口コミ効果が大きく、一部では同社の受入体制が足りないため、生産者に待ってもらっているケースもあるという。

(1)他農産物流通との比較

JAの流通の仕組みにおいては、生産者の手取り収益はおよそ3割と見られており、通常の流通日数も3〜4日かかると言われている。「道の駅」では、末端売価はスーパー等よりも1割程度低価格で販売されている。その販売収益のうち約85%が生産者の手取り分と見られている。収穫当日に販売するので流通日数はゼロ。収益性ではJAに比べてメリットが大きいものの、農家が自ら「道の駅」を搬入のため巡回しなければならず、自分で陳列し、余ったら自分で引き取らなければならないというデメリットがある。農家にとっては手間がかかり、日により少量しか売れないこともある。同社の場合は、JAよりは販売数量が少ないものの生産者の手取り収益が厚く、「道の駅」よりは手取り収益が少ないものの大量に販売できるうえ手間があまりかからないというメリットがある。

(2)生産者のメリット比較

従来は、生産者は自分で末端売価を決められず、販売先も選べなかった。しかも、自分で作りたいものが作れなかった。JAが産地を作るので、JAが指定した物しか作れなかった。形の悪いものやキズものは引き取ってくれず、売れ残りのリスクがあった。しかし、同社のシステムでは、価格決定権や出荷決定権は生産者にあり、今までなら捨てなければならなかったものまで販売が可能になる。しかも生産したいものを生産することができる。生産者自身の努力が報われやすい仕組みと言えよう。在庫リスクは生産者が負うものの、スーパー等では値引き販売なども駆使して、売り切る努力をしてくれることが多いようだ。

(3)スーパー等と生活者のメリット比較

消費者である生活者から見れば、同社の取扱商品は翌日流通で鮮度がいい、熟度が高いなど美味しい商品を購入することができる。すべての商品で生産者の名前が分かることや、大量販売に合わせた流通では入手が難しい野菜や果物も買えるというメリットがある。一方、スーパー等はこれらがそのまま店舗の魅力を高めることになり、客数増加を見込める。最近は、消費者が「道の駅」や「直売所」で野菜や果物を購入するケースが増加傾向にあるという。スーパー等から見れば、週末や休日は「道の駅」に顧客を奪われていたのが、「直売所」を店舗内に開設することにより顧客増を図れる。野菜の「直売所」を設けると同時に肉や魚の売上も増加する傾向にあるようだ。

(4)リスク

この事業のリスク要因は、天候不順と農作物相場の変動だ。現在、野菜の相場が高いが、同社の売場は影響を受けていない。生産者が自分で決めた価格で農産物を出せるので相場の変動をもろに受けない。相場は高いが、直売所では安いという評判も立つことがある。従来、農産物というのは相場で値段が決まっていたが、同社の商品は生産者が値段を付けるので、相場の影響はあまり受けない。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 福田 徹)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 農業総合研究所 Research Memo(10):生産者、スーパー等、生活者の「三方良し」の仕組み