平和不動産<8803>は東京・大阪・名古屋などの証券取引所に対する不動産賃貸からスタートし、現在では大都市のオフィスを中心に商業・住宅も含めた不動産の賃貸・開発・運営管理を行っている。賃貸事業(売上高の59.7%、2017年3月期第2四半期)は、特に大都市圏の金融街を中心に物件を多く所有しており、一棟貸しも多く空室率が低い。不動産ソリューション事業(売上高の33.7%、同第2四半期)は、平和不動産リート投資法人<8966>を含めたバリューチェーンの中で、安定的な収益を確保する。

2017年3月期第2四半期の売上高は15,425百万円(前年同期比10.1%減)、営業利益4,209百万円(同0.9%増)と減収増益決算となった。減収要因には、賃貸事業における前期のビル売却売上高の反動減(名古屋丸の内平和ビル、約27億円)であり一過性である。営業利益に関しても、賃貸事業における前期のビル売却利益の反動減はあったものの、不動産ソリューション事業の物件売却益が大幅に増加し、増益を達成した。2017年3月期通期の業績予想は、期初の数値を据え置いた。売上高41,000百万円(前期比10.8%増)、営業利益8,500百万円(前期比2.8%増)と増収増益を予想する。賃貸事業ではビル売却の反動減の影響を賃貸資産拡大により穴埋めし、さらに不動産ソリューション事業での物件売却及び住宅開発の売上計上などにより業容を拡大する。2016年3月期を業績の底として、2017年3月期以降は成長軌道に乗るシナリオである。

成長戦略の中核である日本橋兜町・茅場町再活性化プロジェクトは、第1期の都市計画提案を間近に控えている。前年度(2016年3月期)までに、コンセプト構築、国家戦略特区への追加申請、対象街区内の物件取得などを完了しており、今期は都市計画提案の最終調整を推進している。大きな課題はなく調整が着々と行われているが、地域貢献面(生活の利便性や防災などを含む)での追加検討もあったようだ。都市計画提案のタイミングは当初計画からは多少遅れたが、第1期プロジェクトは竣工時期(2020年度を計画)に変更はない。このような経緯から都市計画提案は2017年1月以降に行われることが有力だ。

ソフト面での取り組みも順次開始されている。2016年3月に東京証券会館1階にオープンした「CAFE SALVADOR BUSINESS SALON(カフェ サルバドル ビジネスサロン)」は、「投資家と企業の交流」や「金融ベンチャーの発展支援」の一環として資産運用会社のセミナーなどが活発に行われ、情報発信拠点として活発に利用されている。同年10月には、一般社団法人国際資産運用センター推進機構が設立され、「資産運用ビジネスのスタートアップ支援」や「海外の資産運用会社の誘致プロモーション」を行う枠組みが整いつつある。

同社の屋台骨を支える賃貸事業においては、過去数年にわたり賃貸事業資産の入替えを行ってきたが、これが一段落したため、今後は資産規模の拡大にシフトチェンジする。2016年11月には、賃貸事業資産の拡大を目的に、KDX日本橋兜町ビル(延床面積11,705.49平方メートル)を124億円で売買契約を締結した。東京証券取引所や兜町第1平和ビルに隣接するこのビルは、当面賃貸収入に貢献することはもちろんのこと、将来的には日本橋兜町・茅場町プロジェクトの第2期以降の候補地にもなる(引き渡し日:2017年2月1日予定)。

■Check Point
・日本橋兜町・茅場町再開発の第1期プロジェクトの都市計画提案は2017年1月以降を予定
・賃貸資産拡大にシフトチェンジ、KDX日本橋兜町ビル(124億円)を取得予定
・2017年3月期第2四半期は賃貸事業の減収を不動産ソリューション事業がカバーし増益

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 平和不動産 Research Memo(1):日本橋兜町・茅場町再活性化プロジェクトの都市計画提案は年明け