■今後の見通し

(3)新サービスへの取り組みについて

メディカルシステムネットワーク<4350>は調剤薬局事業や医薬品等ネットワーク事業の競争力強化に向け、サービスコンテンツの拡充を外部企業との連携も活用しながら進めていく戦略だ。既に発表済みの案件として、日本郵便(株)との協業による「処方薬等の宅配サービス」並びに「買い物支援サービス」、システム開発会社の(株)ズーとの業務提携による薬剤師向けタブレット端末アプリ「kusudama(薬玉)」のネットワーク加盟店への導入支援・販売がある。いずれも潜在需要の大きい領域であり、今後の展開が注目される。

a)日本郵便との共同事業について
2016年5月に発表した「処方薬等の宅配サービス」「買い物支援サービス」について、現在は運用テストをエリア限定で実施している段階にある。「処方薬等の宅配サービス」については札幌市、名古屋市において、「なの花薬局」から服薬指導を行った在宅患者向けに、輸液パック・栄養剤の宅配サービスを行っている。ただ、処方薬も含めて本格サービスを開始するに当たっては、配送時の温度管理等の安全性基準を確立していくことが課題となっている。同社では2017年夏頃まで運用テストを実施し、安全性を確立したうえで秋以降に本格的なサービスを開始したい考えだ。

一方、「買い物支援サービス」については、2016年10月より小樽市、名古屋市にて対象商品を大人用紙おむつに絞って、在宅患者や高齢者施設向けに運用テストを開始している。同サービスについては順調に進んでおり、2017年2月より全国の「なの花薬局」にて本格運用を開始する予定となっており、そのためのシステム構築も1月には完了する。また、対象商品についても日用品や健康食品など新たな開発を日本郵便と共同で進めていく計画となっている。

今後、在宅患者や要介護者数の増加が見込まれるなかで、宅配サービスのニーズも高まってくるものと予想される。特に、薬局の数が少ない地方においてその重要性が高まるものと思われる。宅配サービスの取り組みについては業界でも同社が先行して進めていることから、今後の調剤薬局事業の競争力向上が期待される。

宅配サービスを導入するメリットとしては、在宅訪問時の薬剤師の業務負担軽減のほか、顧客数の増加や日用品など関連商品の販売拡大による収益獲得機会の増大などが挙げられる。今後も医療費の抑制が進むなど調剤薬局業界は逆風が続く見通しだが、薬剤以外の周辺商品を新たな収益源に育成していくことで店舗の収益力向上が期待される。

b)ズーとの業務提携について
長野県のシステム開発会社であるズーとの業務提携により、薬剤師向けタブレット端末アプリ「kusudama(薬玉)」の販売を2016年10月より開始した。販売対象先は、医薬品等ネットワーク事業の既存加盟店及び新規加盟店候補先だ。

「kusudama(薬玉)」は、薬剤師が日常行う業務をタブレット端末1台で全て処理できる業務支援ツールとなる。薬局内では処方箋入力、調剤前指導、処方監査、ピッキング、調剤監査、服薬指導、薬歴記載、会計処理、在庫管理業務等を、また薬局外では各種在宅支援業務の処理が24時間対応で可能となっている。かかりつけ薬剤師の重要性が高まる一方で、薬剤師の業務効率化を求める声が強く、長野県の薬剤師会からの要請によってズーが開発したものとなる。現場の声を取り入れて開発したため、使い勝手の良さが特徴となっている。

同社では、新規の見込み顧客向けで、ネットワークに加盟することによるコスト低減効果(仕入価格の低下等)によりリース料金分を相殺できることを打ち出し、ネットワーク加盟を促していく。

2016年度の診療報酬改定により、「かかりつけ薬剤師指導料」が新設され、かかりつけ薬剤師の重要性が高まったが、一方で、かかりつけ薬剤師は服薬指導や在宅支援業務など業務が煩雑となり、患者1人当たりの接客時間が長時間化し、結果的に店舗における薬剤師の人員増を迫られるなど、店舗収益力の低下要因となるケースもあった。このため、薬剤師の生産性向上につながる業務支援ツールの導入意欲は強く、同社グループ薬局やネットワーク加盟企業での導入だけでなく、ネットワーク加盟店の獲得に向けたフック役としての役割も今後期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 メディシス Research Memo(6):日本郵便やシステム開発会社と業務提携でサービスを拡充し競争力強化