みなさん、こんにちは!フィスコマーケットレポーターの高井ひろえです。今回のレポートでは、原油市場と価格変動の要因について見ていきましょう。原油は、東京商品取引所で取り扱う商品の中でも、皆さんにとって身近なものの一つではないでしょうか。実際、みなさんは原油と聞くとどのようなものを思い浮かべるでしょうか?個人的に最初に思い浮かべるものは、ガソリンや軽油などの燃料ですが、実は、他にもアスファルトやプラスチック、ナイロンなどの衣料品、化粧品や薬品の原料として使われています。また、原油の価格が日々変化していることは、ガソリンスタンドのガソリン・軽油・灯油の価格表示が変わっていることからも感じやすいかと思います。

では、原油価格はどのような要因で変化するのでしょうか。第一の要因としては、原油の在庫量だといわれています。在庫量は、「供給(生産量+輸入量)-需要(消費量-輸出量)」でおおよその量を求めることができます。経済が活発になると、石油化学製品や燃料の石油製品などを作り出すために精製工場の稼働率が上昇し、原油の需要が旺盛になります。そのため、原油の在庫量は減少し、価格も上がりやすくなります。その他、原油生産国の政治状況(戦争やテロによる港湾閉鎖など)や地政学的リスクの上昇(例えば、イランにおける核開発に対する先進諸国による経済制裁)なども価格変動要因となります。

次に、最近の原油相場がどのように動いたのかを見ていきましょう。原油価格は2017年の半ばから、世界的な好景気の波に乗りほぼ右肩上がりとなっています。ただ、足元の相場(WTI原油先物の価格:米国の原油需給が反映)を見てみると、米国の原油在庫の増加を背景に、10月に入ってからは総じて下落しました。10月26日の米国の原油在庫が前週比167万バレル増加の10億 8093万バレルとなり、6週連続の増加となったことが下落要因の一つとなりました。供給面では、石油・天然ガス掘削リグ(地下に眠っている石油や天然ガスを掘るための装置)の稼働数が、10月第2、3、4週の前週比増加数がそれぞれ11本、4本、1本と増え、米国において盛んに生産されているシェールオイルの生産量が上昇しました。また、原油輸入量も増加となりました。一方で、需要面ではどうだったのでしょうか。原油を精製する石油精製設備の稼働率が上昇している一方で、石油製品の出荷量が減少しています。その結果、供給と比較して需要が少なかったことから石油製品の在庫が増加し、これらの製品価格の下落が原油価格に悪影響を及ぼしました。

今までは米国について見てきましたが、視野を世界まで広げて、かつ期間を年単位に広げてみてみましょう。最初に経済の活発さと原油への需要はほぼ比例しているとお伝えしましたが、OPECが11月に発表した世界の経済成長率は2018年が0.1%下方修正され、3.7%となりました。主に新興諸国における経済成長の鈍化がその理由です。トルコリラをはじめとした新興国通貨が軒並み大幅下落したことは記憶に新しいと思います。2019年は下方修正された2018年見通しと変わらずの水準です。2018年と2019年の世界の原油需要は前年比増加見通しですが、いずれも従来の見通しから下方修正をされています。こういった世界経済の成長率と原油価格が連動しやすいということを意識しながら価格推移をウォッチしていくのも面白いと思います。

原油価格の動向といわれると複雑そうに思えますが、結局需要と供給の関係で決まってくるということがシンプルでわかりやすいですよね。次回以降のコラムでも、商品の価格とそれを動かす要因について一緒に学んでまいりましょう。

フィスコマーケットレポーター 高井ひろえ




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情報提供元: FISCO
記事名:「 原油価格はどんなときに動くの?もっと知りたい商品先物取引(高井ひろえ)