先週は、暗号資産市場が相次いで厳しいニュースに見舞われ、ビットコインの1週間の下落率は14%に達しました。米ドルと連動するステーブルコイン「テラ」のアルゴリズムが崩れ、10日には、安定性で買っていた投資家の投げ売りで、4兆円を超えていた時価総額が100億円以下まで下落しました。

10日に1-3月期の決算を発表した暗号資産取引所のコインベースでは、利用者が920万人、売上高は11.7億ドルと、市場予想を下回りました。加えて4-6月期について弱気見通しを発表し、株価は1週間で60%近く下げました。更に、米国では、顧客資産の分別勘定徹底やフロント・ランニングの監視等、暗号資産業界への規制強化の可能性も報じられました。

このような一連のニュースと暗号資産市場の下落だけをみると、この業界固有の脆弱性から、いよいよメルトダウンが始まったようにも見えます。先週は、そういった照会をいくつか受けました。

しかし、株式市場との相関に注目すると、また別の姿が見えてきます。ビットコインと米ナスダック市場との日次変動率の相関は昨年後半から上昇傾向にあり、足元で過去最高に達しました。過去2か月間のビットコインの日次変動率の約66%は米ナスダックの変動率で説明できます。

つまり、暗号資産業界は、スキャンダル等で揺れているように見えて、実は、米国の金融市場全体からの影響が大きくなっているということです。背景には、2020年後半以降に参入した機関投資家の存在があると思われます。実際、昨年は、一時暗号資産売買高の4割以上を機関投資家が占めていたというデータもあります。

日本ではまだ怪しいと感じる人が多い暗号資産ですが、そろそろ金融市場の一角として意識した方がいい時期に来ていると思います。とはいえ、まだ米金利等に不透明感が強い中で、ボラティリティの高い暗号資産に積極推奨はできませんが、次の上昇局面(現時点では今年の年末以降と予想)では、投資先の有力な候補となっているかもしれません。


マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那
(出所:5/16配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 コラム【アナリスト夜話】暗号資産:暴落で明らかになった「新たな顔」(マネックス証券 大槻奈那)