米国の労働市場のひっ迫が「不健全な水準に達した」ほか、ウクライナ戦争により、サプライチェーンの混乱が収束するどころか悪化、長期化し、インフレの新たな上昇要因になるとの見方に、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長や連邦公開市場委員会(FOMC)は引き締めペースを加速する必要があるとの見解を示した。

このため、各金融機関のエコノミストは年内の利上げ見通しをさらに引上げ。ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーは5月、6月FOMC2会合連続での0.5%ポイントの利上げを予想。バンク・オブ・アメリカは6月、7月のFOMCで2会合連続の0.5%ポイントの利上げを予想している。シティグループはFRBが5月を含め4会合連続で50ベーシスポイントの利上げを実施し、年末までに3%近くに政策金利を引き上げると見ている。

同時に、FRBの急激な利上げで、来年に経済が景気後退に陥り、利下げを実施せざるを得なくなるとの懸念も強まりつつある。米国債市場でも5年物と30年物で2006年以来の逆イールドが起きたため、一部市場参加者の景気後退懸念が強まった。通常は2年債と10年債の利回りが逆転した場合、景気後退入りのサインとなると見られているが、現状では、かろうじてプラス圏を保っているものの、平坦化基調にある。最近では2019年に逆イールドとなり、そののち、20年のパンデミックの影響で景気後退入りした例がある。

一方で、3カ月物と5年物の利回り曲線は逆に上昇基調にある。欧州や中国の経済鈍化が影響し、米国経済も成長が鈍化するが、景気後退に陥ることはないと主張している市場関係者もいる。当面は、インフレや経済指標動向に注目される。





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情報提供元: FISCO
記事名:「 NYの視点:米長短利回り曲線の逆転を巡る景気の見方分かれる