軍事的手段に頼りすぎると、政策は泥沼に陥る。…外交の軍事化(the militarization of diplomacy)は罠である。それは過剰な、あるいは早すぎる武力行使につながり、非軍事的な手段を重視しないことになる。バラク・オバマが好んで言ったように「主な道具がハンマーであれば、すべての問題が釘のように見えてくる」のである。…(国防長官を務めた)ゲイツとマティスは、軍の任務と能力の重さが、外交の視野を狭めたり、その中心的な任務を歪めたりする可能性があることを理解していた。イラクやアフガニスタンでは、外交官は軍の対反乱(counterinsurgency)戦略の脇役に甘んじ、現地社会の構築や、アメリカ人の能力では達成できないような国づくり(nation-building activities)に夢中になっていた。(アメリカの)外交官の役割は、国務省ではなく、19世紀の大英帝国植民地省の役割を再現することかと思われることもあった。イラクやアフガニスタンの人々自身が築くしかないガバナンスや経済構造を構築するための長期的な取り組みに、限られた文民のリソースを投入するよう迫られた。
【参考文献】 川端清隆『アフガニスタン』みすず書房、2002年。 川端清隆「タリバンの「勝利」がもたらすものは~米軍撤退に揺れるアフガニスタン2」『論座』、2021年8月21日付。 登利谷正人「アフガニスタン 米タリバン和平も平和の展望見えず」『外交』Vol. 60(2020年3月) 山本忠通「アフガニスタン紛争−和平と国連および日本」『中東研究』539号(2020年度 Vol. II) 山本忠通「論理的、洗練された一面も タリバンを熟知する日本人が見るアフガニスタンのこれから」朝日新聞GLOBE+、2021年8月19日付。 Benjamin Jensen, 『How the Taliban did it: Inside the ‘operational art’ of its military victory』, Atlantic Council, 15 August 2021. Sami Sadat, 『I Commanded Afghan Troops This Year. We Were Betrayed.』, New York Times, 25 August 2021. UNDP Statement on Afghanistan (20 Aug 2021) William J. Burns, The Back Channel, Random House, 2020.