金曜日以降の報道は安倍首相の辞任一色となりました。とりわけ扱いが大きかったのが中国。辞任会見全編を異例のネット生配信し、1億人を超える中国人が視聴したとも言われています。長期政権ならではの強い影響力を感じました。

市場関連でも、7年8か月の成果は大きかったと思います。異次元緩和はいうまでもありませんが、それ以外にも、コーポレートガバナンスコード、GPIF改革等は特筆すべきでしょうし、不可逆的なポジティブ要素だと思います。

一方、新型コロナが制圧できた後には、膨張した金融・財政政策の巻き戻しは必至です。金融緩和について、安倍首相は、日銀黒田総裁が二期目に入った2018年の会見で、「ずっとやっていいとは全く思っていない。」と発言し、在任中に出口戦略への道筋をつけたいとしていました。次期以降の首相もこの方向性は引き継ぐでしょう。コロナ禍が続くうちは、更なる金融緩和や消費減税もありうるでしょうが、これらの政策をとればとるほど、巻き戻しの舵取りは難しくなります。

秋の市場には「魔物が棲む」と言われます。米国でも「October アノマリー」で、秋、特に10月の相場は荒れやすいとされています。この手のアノマリーは、アテにならないことも多いですが、今年の不確実性は格別です。

来月17日には新総理が選出されると報じられ、最短で10月25日の衆議院選挙の可能性も取り沙汰されています。続いて11月には米国の大統領選。ロシアの不穏な動きや香港、北朝鮮情勢などからも目が離せません。今のところ市場が落ち着いているだけに、突然の“魔物”対策も念頭に置いておきたいところです。

マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那
(出所:8/31配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 コラム【アナリスト夜話】首相交代で『秋の魔物』は現れるか?(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)