国際決済銀行(BIS)とIMFは、既往のグローバルサプライチェーン拡大とインフレの関係を分析している。BISの「The globalisation of inflation: the growing importance of global value chains」(2016)では、サプライチェーンのグローバル化によって一つの製品の価格が国内要因だけでは決まらなくなりつつあり、インフレ率が年々グローバル要因に左右されやすくなったと主張している。GVC比率(財・サービス輸出に占める財・サービスの付加価値輸入の比率)は1990年の18%から2015年には25%に上昇した。1982~2006年の18ヵ国のITO(中間財貿易/GDP)とRGF(国内インフレに対する世界的スラックの相対的影響度) の関係からは、(1)グローバルサプライチェーンに統合された国ほどグローバルな要因に対する国内インフレの感応度が高い、(2)ITOが上昇するにつれ、国内インフレに対する世界的スラックの影響は増す、ことを見て取ることができ、中間財貿易がGDP比で10%pt上昇すれば世界の需給ギャップに対する国内インフレの感応度が0.87pt上昇すると結論付けている。
他方、IMFの「World Economic Outlook: Global Disinflation in an era of constrained monetary policy」(2016)は、金融危機以降の国際的な低インフレの拡がりの最大の要因は グローバル化と指摘している。低インフレがサービス部門より製造業、中でも貿易財で顕著であるため、アメリカ、中国、日本の製造業の低迷が輸入物価の低下を通じて貿易相手国にも低インフレのスピルオーバーをもたらしたと分析している。