[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;28456.92;-337.58TOPIX;1973.41;-19.18


[後場の投資戦略]

 日経平均は米株安を引き継いで大幅に下落。前日は朝方に安値を付けた後は急速に下げ渋っていたが、本日は買い戻しが鈍く、底這い状態が続いている。25日移動平均線や52週移動平均線などよりもまだ上方での推移となっているが、28500円を下回ってきたことで、28000円近辺までは一両日中に下げてきそうか。

 もともと、売り目線の機関投資家が夏休み入りで不在だったなか、商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドやVIX指数の低下を背景としたリスクパリティ型ファンドによる機械的な買いで吊り上げられたような相場だったため、下げるのも速そうだ。下げても買いが入る異次元のような強い動きを見せていた米株式市場は、先週末のSQ(特別清算指数)算出を境に極端に弱い動きに変わった。これまでもSQがトレンド転換のきっかになることが多かったが、今回もご多分に漏れずといった形だ。リバウンドが始まってから1カ月以上が過ぎ、S&P500種株価指数が200日線目前まで上昇していたことで、日柄的にも指数の水準的にも戻りは目一杯のところまで来ていたのだろう。

 足元では、セントルイス連銀のブラード総裁が7月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げ支持に傾いていると表明したほか、リッチモンド連銀のバーキン総裁が「インフレ抑制のためには何でもする」と発言するなど高官のタカ派姿勢が目立っている。25日から開催される経済シンポジウム、ジャクソンホール会合では来年の利下げを期待する投資家とのギャップを埋めるために、パウエル議長からけん制発言で出るとの警戒も強い。

 こうした中、米10年債利回りが22日、1カ月ぶりに3%を超えてきた。8月1日に付けた安値2.57%から0.5pt近くも上昇しており、ペースが速い。ちょうど1カ月程前の時点では、機関投資家の中では3%水準では債券を買いたいという声が多く聞かれていたが、今晩以降の米国市場での動きはどうだろうか。ここで金利が低下することなく、一段と上昇するようだと、これまで金利の低位安定を背景に楽観ムードが広がっていた分、神経質な相場展開が予想され、注目したい。

 足元で、世界経済の構造変化を背景に、インフレは、投資家が想像する以上に長期化するとの専門家の指摘がいくつか散見されているほか、ヘッジファンドがジャクソンホール会合前後の金利上昇を狙って債券の空売りを増やしているとの指摘が聞かれている。ちなみに、米商品先物取引委員会(CFTC)が週1回発表している投機筋の持ち高情報によると、8月16日時点で、ヘッジファンドは10年債をネットで36万3000枚以上売り越している。直近3年間では、2022年3月29日時点での47万6000枚超が最も高い水準で、まだ売り持ち高を増やす余地はありそうだ。

 ほか、CFTC の発表によると、8月16日時点でのVIXを対象としたヘッジファンドの持ち高はネットで10万2000枚超の売り越しだ。前回、ネットの売り越し幅が10万枚を超えたのは2021年11月2日で、この時はその後買い戻しが進み、VIX指数の上昇に繋がった。これまでの株高を支えてきた金利とVIX指数が足元で急速に上昇してきている点はやはりトレンドの転換を示唆していると考えられ、安易な押し目買いは避けた方が無難だろう。
(仲村幸浩)
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情報提供元: FISCO
記事名:「 トレンド転換を示唆する金利・VIXの上昇