[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;23101.76;+50.68TOPIX;1612.99;+2.14

[後場の投資戦略]

 本日の東京株式市場の動向も前日までと大差ない。ここまでの東証1部売買代金は8000億円あまりで、前日よりやや増えたとはいえ低調。景気敏感株を中心に小口の売りが出ており、半導体関連や電子部品関連は米中対立への懸念から軟調ぶりが目立つ。
一方で、堅調なのはコロナ禍中でも需要増加が見込めるゲームやネットサービスの関連銘柄だ。このあたりの物色動向は米株式市場の流れを引き継いでいるとみられる。

 新興市場ではマザーズ指数が大幅に5日続伸し、2018年6月以来、およそ2年2カ月ぶりに1100pt台を回復している。個人投資家の物色は成長期待の高い新興株に集中しており、直近上場のモダリス<4883>が大幅続伸するなど、需給状況は極めて良好な印象。資金の回転が利き、循環物色が続いているのだろう。直近の決算で躍進ぶりが目立ったBASE<4477>やAIinside<4488>も改めて大きく買われている。

 アジア株式市場では中国・上海総合指数がさえないが、懸念材料となっている為替相場の円高進行には足元歯止めがかかり、1ドル=105円台半ばで推移している。後場の日経平均もしっかりか。

 さて、国内外の株式市場では、新型コロナウイルスの感染再拡大のみならず、米中対立の激化、米大統領選で民主党候補となるバイデン前副大統領が掲げる増税策など、警戒材料が数多く挙げられている。日本株にとっては米長期金利の上昇一服に伴う円高進行も重しだろう。しかし、前の週に節目の23000円台を回復した日経平均は調整らしい調整を見せていない。前日の当欄で述べたとおり、中長期志向の海外投資家から従前ほど売りが出ていないことが背景にあるのかもしれない。実際、今週に入ってからの先物手口を見ると、外資系証券による売り越しはドイツ証券やクレディ・スイス証券といった一部にとどまっている。

 その理由として、第1に経済や企業業績の底打ち観測が強まり、従前より「二番底」懸念が後退していることが挙げられるだろう。周知のとおり、11日に発表された日本の4-6月期実質国内総生産(GDP)は戦後最大の落ち込みとなったが、市場では緊急事態宣言が解除された6月以降は持ち直しているとの受け止め方が大勢のようだ。また、同期間の企業業績についても、決算発表シーズン中盤までネガティブサプライズの方が多く、比較的ポジティブサプライズが多かった米企業との格差が鮮明だった。しかし、シーズン終盤にはこうした傾向が大きく改善。利益予想の下方修正に歯止めがかかりつつあるとみられている。これらを踏まえ、一部外資系証券では日経平均の二番底シナリオを修正しているようだ。

 第2に、海外投資家はさほど弱気に傾いているわけでないことが挙げられる。米バンク・オブ・アメリカが実施したファンドマネージャー調査によれば、2月以降で最も強気と回答する投資家が多いもよう。一方で、現金比率はなおニュートラル(中立)水準にとどまっているようだ。今後買い持ちに傾く余地が大きいとも考えられる。

 巷間で取りざたされる警戒材料に目を奪われがちだが、株式市場のムードはじわり改善していると受け止めた方がいいのかもしれない。日経平均が思いのほか底堅いこともうなずけるだろう。
(小林大純)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 「市場ムードはむしろ改善?」の理由