株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、ディスプレイ・光学、電気・電子、一般産業用のベースフィルム及び加工フィルムなどの高機能フィルムの世界市場を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。ここでは、主要な高機能フィルム世界出荷数量の対前年増減率について、公表する。

1.市場概況
2022年の高機能フィルム世界市場では、4月頃までは大手ディスプレイパネルメーカーの生産ラインが平均90%台の高稼働率を維持し、偏光板メーカーでは5月末までフル生産となるなど、前年に続いて順調な成長が期待された。しかし5月以降、韓国の大手メーカーがTVやスマートフォンの生産計画を相次いで下方修正したほか、6月下旬にはディスプレイパネルや電子部品などの新規入荷を一時的にストップした。こうした動きを受け、LCDパネルやMLCC(積層セラミックコンデンサ)などの部材メーカーでは6月に入り生産調整の動きが出てきた。過去数年続いた高機能フィルム市場の拡大期は、ここへきて足踏み状態に入ったと見ることができる。

ただ、現在の高機能フィルム市場はFCCL(Flexible Copper Clad Laminate:フレキシブル銅張積層板)やMLCCなど幅広い分野で多種多様な製品に搭載される製品の部材・副資材として使用されるものが主力であり、用途の裾野が広い。川下市場で一つの製品が販売不振に陥っても他の製品でカバーすることが可能であるため、部材・副資材向けの高機能フィルムの需要は全体的にみて最終製品の販売量増減の影響を受けにくくなっている。そのため、川下メーカーサイドの生産調整や在庫状況により一時的に需要が縮小することはあっても、長期的な低迷には至らないものと考えられ、2023年の主要な高機能フィルムのメーカー世界出荷数量はMLCCリリースフィルムが前年度比14.2%増、FCCL用PIフィルムは同5.1%増、PETフィルムは同4.6%増に回復すると予測する。

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2.注目トピック~使用済製品のFilm to Filmリサイクルが本格始動~
部材向けの工業用フィルムでは、最終製品が使い続けられる限りフィルムメーカーの廃棄物にはならず、副資材として使われるフィルムは工程内で使用された後は産業廃棄物として扱われるため、廃棄後に一般消費者の目に触れることが少ない。そのため、これまで使用済製品のリサイクルに向けた取組みはほとんど見られなかった。

しかし、政府による2019年のプラスチック資源循環戦略策定、2022年4月には「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)」が施行されたことで、工業用フィルムについても使用済製品のリサイクルが求められるようになった。これを受け、2022年に入り、MLCCリリースフィルムやタックラベル用ライナーなどの離型フィルムを中心にフィルムメーカーによるFilm to Film(水平)リサイクルへの取組みが始まっている。

3.将来展望
2020年初頭からの新型コロナウイルス感染拡大により、世界規模で製造現場の稼働停止や物流・サプライチェーンの混乱が生じたことで、資材の手当てができなくなるケースも発生した。川下メーカーサイドでは新製品の開発・製造に対するリスクが高まり、既存製品改良型の製品開発とせざるを得ない状況であった。
しかし、2022年に入ると行動制限の緩和や撤廃の動きが出ており、世界的にwithコロナのフェーズに入ったことで、今後はこれまで停滞していた新しい製品開発やインフラ整備が加速してくるものと予測する。
特に5G(第5世代移動体通信システム)関連では2024年~2025年頃には国内外の多くの通信事業者でスタンドアローン(SA)方式化が進むものと見られ、端末や基地局の回路向けにサブ6、ミリ波対応の低誘電FPC(Flexible printed circuits:フレキシブルプリント基板)の需要が一気に拡大する見通しである。そうなると、これまでのNSA方式ではオーバースペックであったMPI(Modified PI:改良PIフィルム)やLCP(液晶ポリマー)などの低誘電の基板材料が必要とされ、本格的な需要期に入るものと期待される。

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調査要綱
1.調査期間: 2022年5月~7月
2.調査対象: フィルムメーカー、コンバーター
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンラインを含む)、ならびに文献調査併用
4.発刊日: 2022年7月29日

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情報提供元: Dream News
記事名:「 【矢野経済研究所プレスリリース】高機能フィルム世界市場に関する調査を実施(2022年)~2022年の市場は川下メーカーの生産調整の影響で成長率鈍化見込、搭載製品需要の裾野拡大で2023年は回復予測~