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株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のスマートテキスタイル市場を調査し、需要分野別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにいたしました。
1.市場概況
繊維を基材としたウェアラブルデバイスであるスマートテキスタイルは、2015年~2016年頃より主に生体情報の取得を目的としたセンシング機能を有するウェア型が市場に投入され始めた。さまざまな分野での普及が期待されていたが、そのスピードは当初の想定よりも遅れている。
2020年の国内のスマートテキスタイル市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年比171.5%の4億8,700万円を見込む。今後、心拍数や心電波形などのバイタルデータを高い精度で取得できる特長が評価され、建設・製造・運輸等の分野の需要が牽引する見込みである。2025年頃には医療やヘルスケアといった分野での需要も本格化し、2025年のスマートテキスタイル市場は56億4,000万円、2030年の同市場は226億8,100万円に成長を予測する。
2.注目トピック~作業員の暑熱作業リスク対策等の安全管理システムの導入が広がる
建設・製造・運輸等の需要分野では、センシング機能を有するスマートデバイスの利用目的は作業員の暑熱環境下での作業リスク対策等の安全管理システムと、ドライバーの眠気検知システムに大別される。
作業員の暑熱作業リスク対策等の安全管理システムでは、建設業での導入が活発化しつつある。また、近年は炎天下だけでなく屋内作業においても熱中症を発症する事例が増えていることなどから、製造業や物流業、警備業などにも導入が広がっている。こうしたシステムにおいては、作業員個人々々に合ったきめ細かな安全・体調管理が可能となるIoT(Internet of Things)活用の有用性が認知されてきているといえよう。
ウェアラブルデバイスとしては、危険度の高い業種や場所で働く作業員にはウェア型、それ以外の環境で働く作業員にはリストバンド型といった、作業内容や現場環境による棲み分けがなされていくと考えられる。
一方で、ドライバーの眠気検知システムは、その多くが実証実験の段階にある。今後も少子高齢化に伴うドライバー不足が懸念される他、物流量の増加などによってドライバーの負担はさらに増していくと考えられ、ドライバーの眠気検知システムの普及は着実に進むであろう。
ウェアラブルデバイスとしては、ウェア型はカメラシステムよりも精度の高いバイタルデータを得られるとの声もあるが、個々人の心拍数に合わせた、眠気を検知するためのアルゴリズム開発の難易度が高いとされる。よって、長時間のウェア着用などによるストレスが生じるスマートテキスタイルではなく、多機能化も容易なカメラシステムが主流になっていく見通しである。
3.将来展望
スマートテキスタイルが生体情報のセンシングを目的としたウェア型ウェアラブルデバイスとして製品化された当初は、さまざまな需要分野や利用シーンが想定されていた。しかし、ここ数年で腕時計型やリストバンド型のデバイスと、どういった棲み分けがなされていくのか、その方向性が見えてきた。
「高い精度で心電波形を測定できる生体センサ」という強みを有するスマートテキスタイルは、暑熱作業リスク対策等の安全管理システムにおいては、より危険度の高い業種や場所、あるいは手首にモノを装着できない作業場などでの採用が期待できる。また、ノイズの少ない心電波形を取得できる強みは医療分野に活かせ、筋肉の活動量に応じた電気信号を感知し筋電データを検出するシステムにおいては他のデバイスと異なる利用シーンを提案できそうだ。
将来的には、スマートテキスタイルだからこその利用シーンを特定し、その需要分野特有の個別ニーズを拾い上げた製品とアルゴリズムの開発を進めることが普及拡大のためには重要といえる。
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調査要綱
1.調査期間: 2020年6月~7月
2.調査対象: 導電性ペーストメーカー、導電性繊維メーカー、回路基板メーカー、機能性素材・ウェアメーカー等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面接取材、ならびに文献調査併用
4.発刊日:2020年08月07日
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