マイトファジーの誘導物質であるウロリチンAがデュシェンヌ型筋ジストロフィーの動物モデルで筋細胞の活性を回復できることを示すスイスの科学者らの研究結果がサイエンス・トランスレーショナル・メディシン誌に掲載

スイス・ローザンヌ--(BUSINESS WIRE)--(ビジネスワイヤ) -- 本日発表された新しい研究結果によれば、ウロリチンAを食餌に添加することで、マウスにおいてデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の進行を遅らせることが可能です。サイエンス・トランスレーショナル・メディシン誌に掲載された研究結果は、進行性の筋変性を特徴とする不治の遺伝性疾患であるDMDに対する新しい治療選択肢が、いつか開発されるという希望を抱かせるものです。約3500人に1人の男児が先天的に患うDMDは、通常は小児期に発症し、平均余命を大幅に短縮します。


この新しい研究は、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のヨハン・アウウェルクス教授(MD、PhD)の研究室とローザンヌ大学が、スイスのライフサイエンス企業アマゼンティスの科学者らと連携して実施したもので、ミトコンドリアの欠陥がDMDで果たす役割の重要性を浮き彫りにしています。細胞のエネルギー生産所であるミトコンドリアは、正常な筋機能に必要なエネルギーを作り出します。本研究では、ヒトDMD患者と、DMDを模倣するように改変したマウスの両方から採取された筋肉細胞で、ミトコンドリア活性に重大な欠陥があることが示されました。具体的には、遺伝子発現のパターンで、DMD発症はマイトファジーの顕著な低下を伴うことが示されています。マイトファジーとは、欠陥のあるミトコンドリアを除去・リサイクルし、エネルギーレベルを高く維持するために細胞が依拠するプロセスです。


論文の筆頭著者でEPFL教授のヨハン・アウウェルクス博士(MD、PhD)は、次のように述べています。「デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、小児期に診断がつく最も一般的な致死性遺伝性疾患で、利用できる治療法は依然として存在しません。私たちの研究は、筋ジストロフィーに対する新しい治療手段の探究における大躍進となります。」


天然成分のウロリチンAは、マウスとヒトの両方でマイトファジーを活性化し、ミトコンドリアの健康を向上させることが知られています。本研究を実施した科学者で筆頭著者のPeiling Luanおよびダビデ・ダーミコの両氏がDMDマウスにウロリチンAをちょうど10週間にわたり与えたところ、マイトファジーのレベルが効果的に向上し、正常な水準を回復することを観察しました。その結果として筋肉の損傷は大幅に低減し、筋肉の健康と機能が改善されました。ウロリチンAを投与したDMDマウスは、無処置の対照群との比較で、握力が31%増大し、走運動の成績が45%向上しました。また長生きし、寿命が40%延長しました。


ヒトのDMDにとって重要な点として、ウロリチンAは線維症と呼ばれる損傷状態をDMDマウスの心臓と横隔膜の筋肉でそれぞれ36%と39%低減しました。DMD患者で見られる同様の損傷は通常、心臓または呼吸器の致死的な機能不全をもたらします。またウロリチンAはマウス筋幹細胞の再生を増強することができました。DMDの発症は機能性幹細胞の消耗と結び付いているため、この点がヒトにおけるDMDにとって特に意味を持ちます。


アマゼンティスのプロジェクトリーダーで本論文の筆頭著者のダビデ・ダーミコ博士は、次のように述べています。「この研究に先立ち、DMD患者における筋機能の大幅な損失はミトコンドリアの機能不全を伴うことが理解されていました。私たちは今回の研究で、DMDの進行ではマイトファジー、すなわち機能不全のミトコンドリアの除去とリサイクルの不完全性が重要な役割を果たすことを発見しました。


アマゼンティスの共同設立者で最高経営責任者(CEO)のクリス・リンシュ博士は、次のように述べています。「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン誌に掲載されたこの厳密な科学研究は、ウロリチンAが筋機能の強力な推進因子であることの科学的な証拠を強化するものです。この天然の代謝物質が健康な筋肉をサポートするのみならず、進行性筋疾患に対しても有望であることが前臨床試験で示されており、感激しています。」


この研究結果はScience Translational Medicine 誌最新号の論文“Urolithin A improves muscle function by rescuing mitophagy in muscular dystrophy”(ウロリチンAは筋ジストロフィーでマイトファジーを回復させることで筋機能を改善)で報告されています。


ウロリチンAの背景


アマゼンティス専有の主力製品はウロリチンAの経口剤です。ウロリチンAは、微生物叢由来のエラジタンニン代謝物で、エラジタンニンはザクロなどの果物やナッツに含まれる化合物群です。ウロリチンAの投与は、マイトファジーの刺激によるミトコンドリアの機能改善をもたらします。マイトファジーは、老化し損傷を受けたミトコンドリアを細胞から除去し、健康なミトコンドリアの成長を促進するプロセスです。細胞におけるマイトファジーは、加齢に伴って衰退し、筋肉におけるミトコンドリアの機能低下は、加齢と関連した筋肉衰退の主因の1つと考えられています。アマゼンティスとEPFLは先に、前臨床結果をネイチャー・メディシン誌に、論文“Urolithin A induces mitophagy and prolongs lifespan in C. elegans and increases muscle function in rodents” (doi:10.1038/nm.4132)(ウロリチンAはC.エレガンスでマイトファジーを誘導するとともに寿命を延ばし、げっ歯類で筋機能を増強)で、またウロリチンAの安全性、生物学的利用能、ミトコンドリアの健康のバイオマーカーに与える影響を示す臨床結果をネイチャー・メタボリズム誌に、論文“The mitophagy activator urolithin A is safe and induces a molecular signature of improved mitochondrial and cellular health in humans” (doi: 10.1038/s42255-019-0073-4)(マイトファジー活性化因子のウロリチンAは安全でヒトのミトコンドリアと細胞の健康を改善することの分子特性を誘導)で発表しました。詳細情報についてはwww.mitopure.comをご覧ください。


アマゼンティスについて


アマゼンティスは革新的なライフサイエンス企業として、今日の先導的な研究と臨床科学を動員して、ミトコンドリアの健康を目標とした次世代製品を開発し、高度な栄養の実現に取り組んでいます。当社は最近、健康な成人で骨格筋に対するウロリチンAの利点を評価する2件の臨床試験を完了しています。アマゼンティスの詳細情報については、www.amazentis.comをご覧ください。


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情報提供元: ビジネスワイヤ
記事名:「 天然分子のウロリチンAが筋ジストロフィーのマウスで筋機能を改善し平均余命を延長することを示す画期的な研究