『一流の人はなぜそこまで、靴にこだわるのか? (Business Life)』
(クロスメディア・パブリッシング)
ビジネスパーソンにとって、まさに「毎日の相棒」となるビジネスシューズ。定期的なお手入れを欠かさず大事に履いていても、その期間が長いほど、ある程度の経年劣化は避けられません。靴底がすり減ってきたり、穴が空いたり、縫い目がほつれたり……。
そんなときにポイントとなるのが、「その靴の『アウトソール』は修理可能な製法かどうか」です。
◆アウトソールについてはこちら→「ビジネスシューズは「アウトソール」で頑丈さと履き心地が決まる!覚えておきたい3種の性能と特徴」
そこで今回は、アウトソール(靴の底付け)の製法で代表的なものを4つご紹介しましょう。
「製法まで知らなくても……」
「少しマニアックでは?」
そう感じる人もいるかもしれませんが、実はこのアウトソールの製法こそ、履き心地はもちろん、靴の寿命を左右する重要なポイントなのです。理解を深めることでさらに靴への魅力を感じてもらうためにも、ぜひ参考にしてください。
長く履きたいと思うなら、この製法のものをお勧めします。
最大の特徴は、コバの上にぐるっと備え付けられた細い革「ウェルト」を介して、アッパーとアウトソールとを間接的に縫い合わせるという点。アッパーにダメージを与えずアウトソールの交換が複数回可能なので、堅牢で、長きに渡り履ける靴となります。
また、アウトソールとインソールの間にコルクのクッション材が入っているため、安定感のある履き心地に仕上がります。さらに持ち主の足の形に合わせてインソールとコルクが沈み込むので、履き込むほどに足に馴染んでゆきます。
世紀後半にアメリカで発明されたものですが、今日ではイギリス紳士靴の主要な製法になっています。世界的に見ても、信頼のおけるビジネスパーソンの足元の主流は、やはりこの製法のように感じます。
本体とインソール・アウトソールとを、靴の内部でまとめて縫い合わせて完成させる製法です。中敷で隠されている場合も多いのですが、靴の内部のインソールに底付けの縫い目が確認できます。
アッパーとアウトソールとがミシンで直接縫い合わされるので、アウトソールの交換が事実上1回しかできず、①のグッドイヤーウェルト製法に比べると、寿命は短めの傾向にあります。
クッション性にはやや劣るため長時間の着用にもあまり向きませんが、その分圧倒的に軽く、返りの良い靴に仕上がります。
専用ミシンによるこの製法が発明されたアメリカでは、以前は学生向けのローファーの製造に多く用いられていました。また、この製法が第二次大戦後に一気に普及したのがイタリアで、今日ではその国の紳士靴を代表する製法になっています。
本体の端を、靴の内側ではなく外側(アウトソールの縁)で折り曲げ、まとめて縫い合わせる製法。コバの側面でアッパーやライニング(革や布製の内張り)の断面を確認できるのが最大の特徴です。
こちらもアッパーとアウトソールとがミシンで直接、しかも靴の外側で縫い合わされるので、アウトソールの交換は難しく、できても1回。アッパーも浮つきがちなため、こちらも寿命は短めです。
長所としては、軽量で曲げ伸ばしに優れ、足を動かしやすい点が挙げられます。構造がシンプルなためか、昔は子供靴の代表的な底付けでした。
この製法を用いた靴で最も有名なのは、イギリス発のカジュアル靴として知られる「クラークス」のデザートブーツでしょう。また、室内用のスリッパの多くは、今日でもこの底付けをアレンジしたもので行われています。
こちらは「縫う」のではなく、「貼る」ことで底付けを行う方法です。つまり、アッパー・ライニング・インソールそれにアウトソールを、接着剤で貼り付け圧着して完成させます。
最も構造が簡単で、安価に大量生産も行いやすいのが最大の特徴です。そのため、用途や性別に限らず現在では靴の大半はこの製法で作られています。ただし、アッパーとアウトソールとを貼り合わせるだけなので、アウトソールの交換は不可能で(接着剤の進化もあり、昨今では必ずしもそうでもないようですが)、長期の使用には不向きです。
紳士靴の場合、この製法を用いるのはコスト重視のものと言って良いでしょう。対照的に婦人靴の場合は、もはや非常に高価なものであってもほぼ、これです。底付けに糸を用いないので、圧倒的に軽く、またデザイン上の制約を受け難いので、流行に合ったものを即座につくることができます。
今回は靴の製法の代表例を紹介しました。「靴」はビジネスパーソンにとって、ずっと側にいる存在。いわば、相棒のようにずっと付き合う関係です。長く履き続けるためには、こうした知識を覚えておくことで、のちのち役に立つはずです。自分の靴の製法を知ることで、お気に入りの一足の寿命を長くして、ビジネスの世界でさらなる飛躍を遂げましょう。