「なぜか休職者・離職者が多い」「入社したばかりの若手や優秀な社員ほど辞めていく」……


あなたの職場は、そんな”人が逃げる職場”になっていませんか?


産業カウンセラー、エグゼクティブ・コーチの渡部卓氏によると、”人が集まる職場・逃げる職場”にはそれぞれ一定の特徴が見られるとのことです。では、今いる職場を”人が集まる職場”にするためにはどうしたらいいのでしょうか? 渡部卓氏の最新刊『人が集まる職場 人が逃げる職場』より、今すぐ実践できる方法をお教えします。


「詳細な報告書」が報・連・相の流れを阻む



情報は鮮度が命。重要なことほど、手の打ちようがなくなる前に把握しておきたいものです。


けれども、自分の元に情報が回ってくる頻度が少ない、スピード感がないとしたら、それは報告・申請を細かく形式化しているせいかもしれません。


たとえば、次のようなことになっていませんか?



  • 「日報」や「営業報告書」といった各種報告書の数や記入項目が多い

  • 「休暇届」など各種申請書の数や記入項目が多い

  • 各種報告書・申請書の締切がやたら早い

  • 各種報告書・申請書に必要なハンコの数が多い 


これらの書類が増えれば増えるほど、書く側はもちろん、チェックして承認する側も大変です。


「デスクに積んでいるうちに期限を過ぎていて、部下を困らせてしまった」……なんてこともしばしばあるのではないでしょうか?  私も100人を超える 部下を抱えていた時代には、そんな経験が山ほどあります。


このように報告・申請の項目が多かったり、承認者の数が多くなるのは、「リスク管理」のため——と言えば聞こえはいいですが、それだけ責任の所在を分散させているということでもあります。また、細かい報告を形式化させることで、上司が自分自身を安心させているだけ、という面も大きいのです。


人が逃げる職場では、「型」が増えつづける


もちろん、責任が重い仕事や危険をともなう仕事など、細かい記述や承認が必須のこともあるでしょうから、一概に「報告・申請を気楽にできるようにしなさい」とは言えません。


 ただ、報告・申請を細かく形式化することは、真面目な人ほど陥りがちな「型から入る」思考の典型例だということは知っておいてください。毎週・毎月の報告内容や形式、頻度などを細かく定められると、部下からすれば面倒になってくるもの。だんだんマンネリ化し、かえってきちんと報連相がなされなくなる、というのもよく聞く話です。


職種や業界にもよりますが、報告・申請の形式、規則、マニュアル、ルール……といった「型」は、今一度見直す必要があるのではないでしょうか。


人が逃げる職場では、「型」が増えつづけます。それらはかえって職場の生産性を下げ、必要以上に大きなストレスを社員に与えてしまうリスクがあります。


新しい「型」は、その時々の時代や状況に合わせるために必要なことも多いでしょうが、無駄な 「型」の排除・見直しに目を向けない、というのは大問題です。


何十年も前の状況に合わせて定められた規則が、ただ「見直す人がいない」という理由だけで残り続けている……そんな職場は多いのではないでしょうか。


 形式も規則も「とにかく半分にしてみる」



けれど、いざ古い「型」を見直そうとすると、100人いれば100通りの意見が出てきます。「私はこの規則必要だと思う」「いや、僕は必要だとは思わない」「この提出方式は 社長の発案だった。残すほうが無難だろう」……。いくら古いと言っても、「型」がつくられるのにはそれなりの理由があるわけで、なかなか気軽にデリートできません。


そこで取り組んでみてほしいのが、「とにかく半分にしてみる」ことです。 


報告・申請の数や項目、職場の規則などをはじめとしたさまざまな「型」を、とにかく半分に減らしてみるのです。


これをやってのけたのは、私が勤務していた時代のシスコシステムズのCEO、ジョン・チェンバース氏でした。ある日彼は、「もう余計な規則はいらない。 10年前からある規則は、半分に減らせ。責任は俺がとるから」と号令したことがありました。もちろん実際は単純に半分にできたわけではありませんが、彼はそのくらいの気概を持って無駄な規則を削れと号令したのです。


「そんな大胆なことをして大丈夫なのか」と心配になるかもしれませんが、本当に必要だったルールは自然に復活させられることになりますから、「無駄なものは消え、本当に必要なものは残る」という理想的な状態に近づくことができました。そうして、いわゆる〝慣習化されたお役所仕事〟が排除され、会社の生産性は格段に上がり、社員のストレスも確実に軽減されたのです。


『人が集まる職場 人が逃げる職場』(渡部卓)

社員に必要以上の時間や労力をかけさせるような古い「型」は、思い切って半分にしてみるように働きかけてみてはいかがでしょうか。もし減らしたことで不都合になってしまったような「型」があったなら、より最適な形で復活させればよいのです。


もちろん「この規則は上の方針だから変えられない」といった場合も多いでしょう。そういうときは、自分のチームや身近な範囲内で何か無駄な「型」がないか探し、半分に減らしてみてください。そうして成果が出れば上層部にも提案しやすくなるでしょうし、自分が普段身を置いている範囲だけでもよい変化があることで、たいていの人は過ごしやすくなります。


SNSも活用して気楽でスピーディーな報連相を


ちなみに、私は学生や仕事で関わる人にもLINEやFacebookなどのSNSアカウントを教え、ちょっとした報連相などの単純なやりとりはSNSで済ませることがよくあります。若い人ほど、対面での会話や電話・メールでのコミュニケーションより、そのようなSNSの方が馴染み深いもの。「ちゃんとした報告じゃなくてもいいから、とにかくLINEしてきて」と言っておくと、すばやい連絡を受けやすくなります。


厳格な様式やルール・マナーを尊守することも必要ですが、場合によっては気楽でスピーディーな手段を活用できる柔軟性も持っていたいものです。


当てはまったら要注意! 人が逃げる職場の特徴とは



  • 雑談がほとんどない

  • 朝イチや夕方の会議が多い

  • いつも同じメンバーが残業

  • フィードバックを重視

  • 優秀なマネージャーがいるetc…


ギスギス・鬱々した不穏な空気が漂い、人が逃げていく職場には特徴があります。その根本にあるのは、人が生き生きと働くためのモチベーションとなる「成長していく感覚」を職場が阻害し、「ここにいたら潰される!」というネガティブな感覚すら与えてしまっているという問題。


では、これをどう解決すればいいのか?『人が集まる職場 人が逃げる職場』(渡部卓/クロスメディア・パブリッシング刊)では、数多の職場を見てきた職場のメンタルヘルス・コミュニケーション対策の第一人者である著者が、人が集まる職場・逃げる職場それぞれの特徴を例示しながら、忙しい中でも実践できる解決策をお教えしています。


「服装を使い分ける」「”かりてきたねこ”で叱る」「フィードフォワードする」「2.5人称の視点を持つ」…確かな理論と経験に基づくノウハウが気楽に取り組める形にまとめられ、豊富な図解とイラストでわかりやすく紹介されています。管理職や若手リーダーをはじめ、職場の停滞感に悩む人は手にとってみてはいかがでしょうか。


渡部卓(わたなべ・たかし)

産業カウンセラー、エグゼクティブ・コーチ。帝京平成大学現代ライフ学部教授、(株)ライフバランスマネジメント研究所代表。1979年早稲田大学政経学部卒。モービル石油入社後、コーネル大学で人事組織論を学び、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院でMBA取得。1990年日本ペプシコ入社、AOL、シスコシステムズ、ネットエイジを経て、2003年(株)ライフバランスマネジメント設立。職場のメンタルヘルス・コミュニケーション対策の第一人者であり、講演・企業研修・コンサルティング・教育・メディア等における多数の実績を持つ。『メンタルタフネス経営』『折れない心をつくる シンプルな習慣』『折れやすい部下の叱り方』(日本経済新聞出版社)、『明日に疲れを持ち越さない プロフェッショナルの仕事術』『はたらく人のコンディショニング事典』(クロスメディア・パブリッシング)ほか著書・監修書多数。


新刊紹介:「人が集まる職場 人が逃げる職場」



【目次(一部抜粋)】


序章 人が集まる職場には、「成長感覚」の風が吹いている



  • 「ここにいたら潰される」と感じたら、人は逃げていく

  • 多様化する成長感覚

  • 心が折れにくい人は、”風の乗り方”がうまい人

  • 不安の時代に必要なのは「共感」の力

  • 「部下への指導も5時まで勝負」で起きる悲劇

  • “ほどほどのパートナー”を目指す


第1章 「共感」し合える職場



  • 人が集まる職場は、カウンセリングする/人が逃げる職場は、コーチングのみ

  • 人が集まる職場は、フィードフォワードを行う/人が逃げる職場は、フィードバックのみ行う

  • 人が集まる職場は、「しずかちゃん式」/人が逃げる職場は、「のび太式」か「ジャイアン式」

  • 人が集まる職場は、等身大の上司がいる/人が逃げる職場は、エリート上司がいる

  • 人が集まる職場は、時には凹む/人が逃げる職場は、いつでもポジティブ

  • 人が集まる職場は、異質なものを受け入れる/人が逃げる職場は、異質なものを排除する


【コラム①】無自覚な”善意型ハラスメント”に要注意!


第2章 「人が育つ」職場



  • 人が集まる職場は、優秀なリーダーとマネージャーがいる/人が逃げる職場は、優秀なマネージャーのみ

  • 人が集まる職場は、▽構造/人が逃げる職場は、△構造

  • 人が集まる職場は、成長段階に合わせて仕事を振る/人が逃げる職場は、会社の都合に合わせて仕事を振る

  • 人が集まる職場は、研修はしっかり行う/人が逃げる職場は、実践のみで育てる

  • 人が集まる職場は、部下の成長が上司の評価になる/人が逃げる職場は、部下の指導はプラスαで行う


【コラム②】心が折れやすい4タイプへの処方箋


第3章 「自然なコミュニケーション」が生まれる職場



  • 人が集まる職場は、適度にワイガヤ/人が逃げる職場は、常に静か

  • 人が集まる職場は、「報連相」を意識しない/人が逃げる職場は、「報連相しろ」が飛び交う

  • 人が集まる職場は、管理職が歩き回っている/人が逃げる職場は、管理職が座っている

  • 人が集まる職場は、会議が少なくても回る/人が逃げる職場は、とにかく会議が多い

  • 人が集まる職場は、アイスブレイクから入ってきっちり終える/人が逃げる職場は、始まりにうるさく終わりに無頓着

  • 人が集まる職場は、適度に視線が遮られる/人が逃げる職場は、隅々まで視線が届く


【コラム③】ストレスを上手に解消する”4Rマイリスト”


終章 「成長感覚」の共有が一生の宝物になる


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情報提供元: BUSINESS LIFE
記事名:「 「詳細な報告書」が報連相の流れを阻む!職場のムダなルールは「とにかく半分にしてみる」こと