【犬猫の感染症について】 様々な検討を重ね、映画「犬部!」のモデルとなったハナ動物病院の太田先生( https://www.hana-ah.com/ )のご協力を得て、まずは、犬猫の感染症に対するファージセラピーの実用化を目指すことにしました。犬猫の感染症の原因菌の薬剤耐性化の速度は著しく、例えば、犬の感染症の主要な病原菌であるスタフィロコッカス・シュードインターメディウスという細菌の危険な耐性菌(MRSP)は、スタフィロコッカス・シュードインターメディウスの中で67%を占めると報告されています(Kawakami T, Shibata S, Murayama N, Nagata M, Nishifuji K, Iwasaki T, Fukata T. Antimicrobial susceptibility and methicillin resistance in Staphylococcus pseudintermedius and Staphylococcus schleiferi subsp. coagulans isolated from dogs with pyoderma in Japan. J Vet Med Sci. 2010 Dec;72(12):1615-9.)。 太田先生の実際の診療現場でも、動物病院で使用できる抗生物質が何も効かず、治癒しない感染症があるということです。膿皮症と呼ばれる皮膚の感染症で遭遇することが多く、その場合、犬は痒みが止まらず、夜も十分に寝られず、一日中しょんぼりしているという非常に可哀想な状態になるということでした。このままでは、そのような状況が多発するようになると言われており、そんな未来を防ぐために、ファージセラピーを応用しようとしています。
【ファージセラピーの未来】 犬猫に限らず、ヒトを含め動物全体の感染症で薬剤耐性菌は深刻であり、2050年には耐性菌による感染症の死亡が世界第一位の死因となると予想されています(O'Neill, J. Tackling Drug-Resistant Infections Globally: Final Report and Recommendations. 2016)。性感染症においても、例えば、淋菌に対する第一選択薬のセフトリアキソンの耐性菌が増加し、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)から、セフトリアキソン単独療法は推奨しないと発表されるに至っています(日本と欧米では用量が異なるため、日本の用量では現在でも単独療法が可能と言われてはいます)(St Cyr S, Barbee L, Workowski KA, Bachmann LH, Pham C, Schlanger K, Torrone E, Weinstock H, Kersh EN, Thorpe P. Update to CDC's Treatment Guidelines for Gonococcal Infection, 2020. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2020 Dec 18;69(50):1911-1916.)。 このファージセラピーの実現をきっかけとして、ヒトを含めた動物の他の様々な細菌感染症へファージセラピーを実現できれば、将来感染症に多くのヒト・動物が苦しめられるようになる未来を変えることができます。