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自転車の安全利用促進委員会は、9月17日(月)の敬老の日および9月21日(金)から9月30日(日)の秋の全国交通安全運動を前に、高齢者の自転車の利用と自動車(以下 クルマ)の利用についての調査を実施いたしました。



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秋の訪れとともに日没時間が急激に早まる9月は、夕暮れ時や夜間にかけて重大事故につながるおそれのある交通事故が多発しており、毎年内閣府をはじめとする複数の機関によって、広く国民に交通安全の普及・浸透を図るために秋の全国交通安全運動が行われています。

特に65歳からの高齢者は、身体能力の衰えなどから、クルマ運転に不安を覚え、他の交通手段へと変更を検討するタイミングにあります。しかしながら今回の調査によると、約9割の高齢者がクルマの運転免許証を継続して所持しており、運転免許返納者はわずか6.0%に留まりました。しかし、自転車道路の整備や自転車の購入補助の環境が整えば、運転免許証を返納したいという回答も見られました。



また、今回の調査では、高齢者は長期にわたり同じ自転車を利用しているにも関わらず、メンテナンスや整備機会が少ないなど、ハード面への意識が低いという現状が浮かび上がってきました。このような調査結果に対し、自転車の安全利用促進委員会メンバーであり、(株)三井住友トラスト基礎研究所研究理事の古倉宗治氏は、交通ルールや運転マナーなどのソフト面を意識するだけでなく、自転車自体の安全性や機能のハード面を見直すことも重要とコメントを寄せています。

※n数をもとに、%換算しているため、合計値が100%にならない場合があります。





■調査トピックス

1.高齢者の自転車利用の頻度はクルマ利用を上回る結果に!

自転車を利用する高齢者の内、約4人に1人は“全くクルマの運転をしていない”



2.クルマより自転車を利用する理由は、移動距離の短い用事が多いからがトップに。

高齢者は自転車とクルマの使い分けが上手?



3.クルマの運転免許返納者はわずか6.0%に留まる結果に。

自転車の道路整備や購入補助の環境が整えば、免許を返納したいと回答!



4.運転免許証を返納・クルマを運転しなくなった要因は“自身の運転技術に不安を覚えたから”

自治体によってはクルマ以外の移動手段を促進する制度も。



5.高齢者の38.3%が1年以上自転車のセルフメンテナンスを放置、74.3%がプロの整備を受けていない!

安全・安心にはメンテナンスが必須!購入時にはBAAマークを要確認。





■調査結果解説者のコメント

古倉宗治氏

自転車の安全利用促進委員会メンバー

(株)三井住友トラスト基礎研究所研究理事・京都大学大学院講師・博士(工学)





■調査概要

調査主体:自転車の安全利用促進委員会

調査日 :2018年8月24日(金)~8月26日(日)

調査方法:アンケート調査(インターネット調査による)

調査対象:65~79歳の男女

回答数 :300名(東京23区&大阪市内:150名 その他地域:150名)

条件 :月に1回以上自転車に乗っている且つ運転免許取得者又は取得歴のある方



1.高齢者の自転車利用の頻度はクルマ利用を上回る結果に!

自転車を利用する高齢者の内、約4人に1人は“全くクルマの運転をしていない”

高齢者のクルマと自転車を利用する頻度について質問したところ、週1回以上の利用は、クルマが58.0%、自転車は77.3%となり、高齢者はクルマ以上に自転車が普段の移動手段として用いられていることが分かりました。また、自転車を利用する高齢者の内、約4人に1人(25.6%)はクルマを運転しないということも明らかになりました。

▽Q1

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2.クルマより自転車を利用する理由は、移動距離の短い用事が多いからがトップに。

高齢者は自転車とクルマの使い分けが上手?

次に自転車、クルマそれぞれを移動手段として選ぶ理由について質問しました。高齢者がクルマに乗らず自転車を選ぶ理由としては、「移動時間が短いから(78.9%)」「駐車場がない場所にも行きやすいから(53.8%)」「健康促進になるから(43.3%)」「維持費が安いから(42.5%)」という項目が目立ちます。この結果から、クルマと比較して自転車は“小回りの良さ”“運動も兼ねる”“維持費がかからない”という自転車であるからこそのメリットを感じて利用している高齢者が多いことが分かります。

これはクルマを利用する場合も同様で、「距離が遠いから(66.2%)」「荷物が多いから(55.3%)」「複数名で移動ができるから(41.8%)」などクルマならではのメリットから利用しています。

以上のように、高齢者は、自転車かクルマのどちらか一択と言うわけではなく、状況によって使い分けしながら生活をしていることが見えてきました。

▽Q2

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▽Q3

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3.クルマの運転免許返納者はわずか6.0%に留まる結果に。

自転車道路の整備や購入補助の環境が整えば、免許を返納したいと回答!

自治体において運転免許返納を推奨する取り組み等が積極的に行われている中、高齢者の運転免許返納事情について調査しました。今回の対象者全員がクルマの運転免許証取得経験のある中、現在まで継続してクルマの運転免許証を所持している高齢者は91.7%で、免許を返納をしている方はわずか6.0%ということが分かりました。



また、クルマの免許を所持している方に、どのようなことが実行されれば免許を返納しようと思いますか?と質問したところ、公共交通機関の無料化に次いで、「自転車道が整備され、自転車で安心して走行できるようになる(35.0%)」「自転車・電動アシスト自転車の購入補助が支給される(26.5%)」など道路の整備や購入補助の環境が整えば、免許を返納して、もっと自転車を活用したいという意向がうかがえました。

▽Q4

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▽Q5

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4.運転免許証を返納・クルマを運転しなくなった要因は“自身の運転技術に不安を覚えたから”

自治体によってはクルマ以外の移動手段を促進する制度も。

クルマの運転免許証を取得していたが運転免許証を返納した、又は現在クルマを運転しない方のみに質問したところ、4人に1人が“自身の運転技術に不安を覚えた”ことが運転免許証を返納した・クルマを運転しなくなった要因であると答えています。



上記以外にクルマを運転しなくなった要因として、約2人に1人が公共交通機関や自転車を利用していることが挙げられました。自治体によっては運転免許証を返納すると、バスやタクシーの優待が受けられる制度、BAAマークが貼付された安全な自転車の購入補助を受けられる制度などがあり、クルマ以外の移動手段も選びやすくなってきています。

▽Q6

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5.高齢者の38.3%が1年以上自転車のセルフメンテナンスをしていない。

74.3%がプロの整備を受けていない!

安全・安心にはメンテナンスが必須!購入時にはBAAマークを要確認。

クルマよりも高頻度で自転車を利用している高齢者ですが、現在利用している自転車の入手時期について質問したところ、66.0%が3年以上同じ自転車に乗っているということが分かりました。

▽Q7

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Q7の質問で、長期間同じ自転車を高頻度で利用していることが明らかになった高齢者ですが、その自転車は安全な状態で運転しているのでしょうか。「セルフメンテナンス」及び「自転車専門店での整備」の実施頻度についてを質問すると、セルフメンテナンスを「1年に1回未満・全くしていない」と回答した人は38.3%と最も多く、自転車専門店での整備に関しては、74.3%が「1年に1回未満・全くしていない」と回答し、高齢者が利用する自転車の多くに整備不良の可能性があることが分かりました。

▽Q8

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▽Q9

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■調査結果解説(自転車の安全利用促進委員会メンバー 古倉宗治氏)

今回の調査結果を受け、自転車の安全利用促進メンバーである古倉宗治氏が下記のようにコメントしています。



〇今回のアンケート調査では、高齢者は、自分での点検について1年に一回未満または非実施の人が38.3%もあり、更に専門店の整備について1年に一回未満または非実施の人が74.3%という驚くべき結果となりました。一方、茅ヶ崎市で実施された自転車商協同組合による点検整備(平成27年)では、2,878台の自転車を点検した結果、整備不良車はその65.7%にも上り、整備不良車のうちブレーキ不良が44.6%、チェーン不良35.9%、ベル・ブザー不良が21.4%など、きわめて危険な自転車が多い実態が明らかになっています。

高齢者は体力やとっさの対応力などの点で若い人に比較して劣り、点検整備が行き届いた自転車でも、出会頭事故をはじめとしてさまざまな事故の危険性が高いのです。まして、ブレーキやチェーンなどの整備不良の自転車を運転することはさらにその事故のリスクが高まります。このような実態をよく理解し、出かけるときは自らの目で、また、定期的に専門家の目で必ず点検しましょう。

また、自転車は点検だけでは、安全とは言えません。車体そのものが安全な基準を満たして製造されていることも重要です。(一般社団法人)自転車協会が定めた安全基準をクリアしたことを示すBAAマークが貼付された自転車を選ぶことも大切です。自転車の安全利用のためには、交通ルールや運転マナーなどのソフト面を意識するだけでなく、このように自転車自体の安全性や機能のハード面を見直すことも重要です。



〇高齢者のクルマの運転の危険性が指摘されています。高齢者の運転の自信と家族から見た不安に関して研究した結果(「高齢者の運転意識と安全のギャップに関する研究」)では、自動車の運転に対する本人の自信ありの割合(「あり」と「少しあり」の合計)は、70歳代で91.0%、80歳代で93.0%と極めて高いのですが、これに対して家族からみた高齢者の運転が不安とする割合(「やや不安」と「不安」と「とても不安」の合計)は、70歳代が43.3%、80歳代が57.8%となっています。

本人の主観的な自信と家族から見た客観的な不安に大きなギャップがあり、本人の主観的な判断より家族の客観的な判断の方が実態に近いと思われます。このような中で、今回の調査では、高齢者で免許保有者のうち、免許返納者は6.0%にとどまっていますが、高齢者の免許返納が必要なケースはもっと多いと考えられます。免許返納を促進するためには、返納後の移動をどのように確保するかが重要です。

アンケート結果では、公共交通が無料になることと並んで、自転車道の整備や電動アシスト自転車の購入補助等の自転車を活用できる環境の形成が求められています。このような環境が整ってくれば、高齢者も自らの足で経済的にかつ健康的に移動することができ、外出の大きな誘因になります。



〇高齢者(65歳以上)の自転車乗用中の人口10万人当たり死傷者数は、同じく19歳から64歳までの人とほぼ同じで((公財)交通事故総合分析センター)、且つ、高齢者の自転車乗用中の人口100万人当たりの死者数は、クルマの乗用中の18.9人に対して10.9人と低くなっていて(平成27年交通安全白書)、高齢者の自転車利用は必ずしも危険ではありません。

自転車のルールをしっかりと理解した上で、自転車走行環境の整備、電動アシスト自転車などの購入補助等を通じて自転車利用を促進することが、免許を返納した高齢者の安全な移動を支えることになります。



解説者:古倉宗治氏

自転車の安全利用促進委員会メンバー

(株)三井住友トラスト基礎研究所研究理事・京都大学大学院講師・博士(工学)



≪プロフィール≫

東京大学法学部卒業。建設省、東京工業大学助教授、(財)民間都市開発推進機構都市研究センター、(財)土地総合研究所等を経て、2008年から(株)三井住友トラスト基礎研究所研究理事。自転車の総合的体系的な利用促進策、放置問題の新たな発想による解決策や自転車の交通政策などを手がけるほか、街づくりに関する法制的な規制、都市環境における環境共生のあり方、景観、土壌汚染など都市計画・都市環境分野で国、地方公共団体、民間等からの調査研究に従事。著書に「成功する自転車まちづくり」(学芸出版社)、「自転車利用促進のためのソフト施策」(ぎょうせい)など多数。講演会の他、大学院で教鞭を取るなど自転車施策の第一人者として活躍中。

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■「自転車の安全利用促進委員会」とは

自転車の安全利用促進委員会とは、一般社団法人自転車協会の協力を受け、安全安心な自転車利用のための啓発活動を行う団体です。自転車の利用者の方々に快適な自転車生活を送って頂くため、購入時に知っておくべき自転車の選び方から

購入後のメンテナンス、正しいルール・マナーなどの情報発信を行っています。



▼自転車の安全利用促進委員会の取り組み

各分野の研究者らの知見を結集し、相互の意見交換を頻繁に行うことで、最新動向の共有を行い、本委員会にて集積・開発した内容については、随時皆様へも情報をお届けしてまいります。

現在予定している本会の活動内容は、主に以下の通りです。



自転車の安全・ルール・マナー・メンテナンス・自転車の選び方に関する各種研究や啓発活動

自転車の安全・ルール・マナー・メンテナンス・自転車の選び方に関する消費者動向の調査・発信

自転車通学指導を行う教員及び生徒を対象とした自転車通学指導セミナーの開催

委員会WEBサイトを通じた情報発信

※今後の検討や環境変化等により変更する場合があります。



アクセスはこちらから http://jitensha-anzen.com/

情報提供元: @Press