関西の春の風物詩・イカナゴのシンコ(稚魚)漁は解禁日の11日、不漁を背景に初競りで約17万円と2023年のほぼ倍の過去最高となる初値を付け、関係者からは驚きの声が上がった。鮮魚店が集まる兵庫県明石市本町の魚の棚(うおんたな)商店街では早朝から初物を買い求める客らが列をなした。

 林崎漁港(明石市林3)では午前、帰港した運搬船から計20かご(1かご約25キロ)が水揚げされ、競りに掛けられた。市内の水産仲卸会社「つる一」社長、鶴谷真宜(まさのり)さん(44)は「17万円なんて聞いたことがない。(値は)需要と供給のバランスなので仕方がない」。昔は「くぎ煮」を炊く甘い匂いが家々から立ちこめていたと言い「庶民の味だったのが高級魚になって、そういう風情がなくなるのかと思うとさみしい」と話した。

 魚の棚商店街。鮮魚店らによると、早朝の開店前から客が並び始め、多いときで各100人前後が列をなした。1キロ5500~7000円で売られたという。7時間待って10キロ分購入した市内の女性(71)は県内外の親戚や友人らに毎年手作りのくぎ煮を送っている。「1キロ500円の時代もあった。明石・神戸で続いている食文化なのでいくら高くても買おうと思った。(不漁は)ゆゆしきことだ。自然相手だがまた元に戻ってほしい」と話した。

 鮮魚店主の男性(61)は「県外にくぎ煮を送ったらお礼にウニが送られたという話も聞いた。それだけ高くなったが、売る側としては複雑な心境だ」とこぼした。【入江直樹】

情報提供元: 毎日新聞
記事名:「 今やウニ並みの値打ち…イカナゴのシンコ 不漁嘆く客「食文化が」