【ロンドン時事】ロシア軍への抵抗を続けたウクライナ部隊の撤退で事実上陥落したウクライナ南東部マリウポリで「最後のとりで」だったアゾフスタル製鉄所からの投降が続く中、ロシア政府は18日、これまでに959人のウクライナ兵が投降したと発表した。マリウポリをめぐる2カ月以上にわたる激しい戦闘はやんだが、部隊の移動先は親ロシア派支配地域で、投降兵の「扱い」に懸念が浮上している。ウクライナが提案した捕虜交換はロシア側で否定的な声が強く、実現するかどうか先行きは不透明だ。 ロシア国防省は18日の声明で、製鉄所から16日以降、負傷者80人を含め959人が投降したと発表。その上で「手当が必要な者は病院に搬送された」と説明した。ロイター通信などによると、兵士らを乗せたバスは東方の町ノボアゾフスクや、東部の村の刑務所などに到着。製鉄所内には依然多くの兵士が残っているとみられ、ウクライナ国防省は「(退避のため)必要なすべてのことをやる」と強調した。 こうしたウクライナ兵士について、同国政府は拘束したロシア兵との交換を提案した。ロシア側も確認したというが、両国が正式に合意したのか、合意の場合でもいつどのように交換が行われるかなど詳細は不明だ。ロシア政府はプーチン大統領が投降兵を「国際基準に沿って」扱うと表明したとされるが、「部隊は無条件で投降した」(同政府高官)として交換を拒む声もある。 ロイターによると、ロシア側はウォロジン下院議長が「ナチスの犯罪者が(捕虜として)交換されるべきでない」と発言。停戦交渉団に加わるスルツキー議員は「人間の姿をした動物」は処刑されるべきだと述べた。検察当局が兵士らを「民間人への犯罪」で聴取する構えとの情報もある。 製鉄所に残っているある兵士の妻は、投降兵らの「誠実な捕虜交換」を望む一方、「ロシアは非人道的な振る舞いをしている」と不安を訴えた。 【時事通信社】 〔写真説明〕17日、ウクライナ南東部マリウポリのアゾフスタル製鉄所からバスで退避するウクライナ兵(EPA時事)