公開経営指導協会の理事長・喜多村豊氏が、世界を元気にする挑戦者たちと日本の将来について語り合うリレー対談。第13回目の今回は、2児の子育てをしながら宇宙サービスやオーガニック・エシカル専門店の運営、エンジニア支援、経営者育成など多角的に事業を展開する連続起業家の矢内綾乃さんをお迎えしました。

「世界は1つなんだ」と体感した成層圏飛行

喜多村:矢内さんは複数の会社を経営されています。最初に立ち上げられたのがPassionPlanetsで、社名からもわかるように宇宙サービス事業を展開されていますね。

矢内:宇宙旅行のサポートや人工衛星を用いたメッセージカードや宇宙葬、ペット葬の打上げサービスをしています。

私自身、子どもの頃から「宇宙飛行士になりたい」という夢を持っていまして、NASDA(宇宙開発事業団、現在のJAXA)の採用試験を受けたこともあります。残念ながら2次試験で落ちてしまって宇宙飛行士にはなれなかったのですが、ロシアでMIG戦闘機に乗って成層圏飛行を体験したんです。

そのとき、思い描くのと実際の体験ではやはり全く違うということが実感しました。子どもの頃から見てきた世界地図には国境線が引かれていますが、リアルな地球にはないわけです。国境は人間が勝手に引いたものに過ぎない、世界は1つなんだと体感しました。

喜多村:素晴らしい体験ですね。

矢内:ただ、体にかかる負担がすごいんですよ。すさまじいG(重力加速度)がかかると聞いていましたが、大げさではなく気絶しそうになりました。

バンジージャンプだと地面が迫ってくる感じがわかりますが、海と空がどこにあるのかもわかりませんし、計器を見たらマッハ1.8(音速の1.8倍)を示しているんですけど、まるで止まっているようで速さの感覚もないんです。でも、少し機体が動くとギューっと体に圧力がかかってきます。得難い時間でしたが、誰もが体験できる安全なものではないんです。

でも、技術の進化は凄まじく、昨今、安全かつ快適に宇宙旅行ができる宇宙船が開発されました。それが、米SpacePerspective社の気球型宇宙船「Spaceship Neptune」です。サッカースタジアムほどの巨大なもので、2時間かけて上昇し、宇宙空間に2時間滞在したのち、また2時間をかけて戻ってきます。ただ真っ暗な宇宙を見るだけではなく、上昇時も下降時も眼下に広がる地球をゆったりと眺められるのが大きな特徴です。しかも8人乗りで、大きな窓だけでなくバーやトイレ、ラウンジシートなどが用意され、特許出願中の温度制御システムも備えられているので、地上と同様に快適な時間が過ごせます。
https://passionplanets.com/spacetravel/

喜多村:まるで東京ドームのVIPルームがそのまま宇宙空間まで浮かび上がるようなイメージです。宇宙旅行というと体を鍛えなくてはいけないとか、億単位のお金を用意しなければいけないと考えていましたが、相当身近になってきたのですね。

矢内:おっしゃるとおりです。宇宙服を着る必要もありませんし、普通に歩き回ることができますので、退職祝いや結婚式を挙げたいというお客様や、プロモーションビデオの撮影に使いたいというアーティストもいます。弊社で確保している枠はすでに半分が埋まっている状況です。

上質なライフスタイルを広めて地球を守りたい

喜多村:矢内さんはもう1つの会社、UCHIAGEでオーガニック・エシカル専門店を運営されているそうですね。

矢内:はい。新橋駅と浜松町の中間にある汐留イタリア街で、「natural style BIO SOPRA Tokyo」というお店を2018年にオープンしました。オーガニックや自然由来にこだわった生活雑貨・日用品、食品、化粧品など約200アイテムを揃えていまして、日常使いはもちろん、優しさを届けるギフトとしても好評をいただいています。

喜多村:人や社会、環境への影響を配慮する「エシカル消費」は、Z世代を中心に広がっていますが、矢内さんはどういった思いから取り組むようになったのですか?

矢内:身近にある東京湾や河川を見ていて、きれいにしたいという思いがありました。下水処理をしているとはいえ、日頃使っている洗濯洗剤や食器洗剤などを自然由来のものに置き換えることで、生活排水をよりきれいにすることができます。由来成分の質にこだわり、かつ、日用品をおしゃれにコーディネートしてしまおう!という新しい試みにチャレンジし、それが結果として地球環境保全にもつながるライフスタイルを提案しています。

当初は苦労しましたが、メーカーの開拓に力を入れて、原価コントロールをしやすくしたことで経営基盤が安定しました。フランチャイズ化はしていないので店名も取り扱いアイテムも同じではありませんが、今は4店舗で共同仕入れや情報交換をしています。

喜多村:独立した小売店が同じ目的のもとで協力関係を結ぶボランタリーチェーンに近いですね。私の父が創立した公開経営指導協会は、ボランタリーチェーンの指導育成に力を注いできました。専門的な知見が必要な領域ですが、そういった経営のノウハウはどうやって身につけたのですか?

矢内:私はもともと、宇宙飛行士を目指したこともあって理系なんです。北海道大学工学部で応用物理学を専攻し、同大学大学院にも進みました。大学院修了後は、NECの半導体事業部最先端技術開発グループでエンジニアになったのですが、20年以上前なので、まだ女性が出産・子育てと仕事の両立をするのが難しかったんですね。

そんなときにある経営者と出会って、働き方の自由度が高いだけでなく、しっかりとビジョンを持って働いている姿に魅力を感じたんです。そこで、営業代行をしながら経営やコーチングを3年間かけて学びました。

私は経営学部出身では無いので、社会人になってから学びました。

宇宙飛行士を目指したこともあって、理系出身なんです。北海道大学工学部で応用物理学を専攻し、同大学大学院にも進みました。大学院修了後は、NECの半導体事業部最先端技術開発グループでエンジニアになったのですが、20年以上前なので、まだ女性が出産・子育てと仕事の両立をするのが難しかったんですね。

学校に入りなおして学ぶ方も多いと思いますが、私の場合はご縁があって出会った経営者の方がキッカケで、経営やコーチングを学びながら様々な業種の知識やノウハウを学ばせていただきました。

その方の働き方は自由度が高く、かつ明確なビジョンを持って働いている姿が魅力的だったので、これだと感じて経営者になると決めたんです。

多角経営を支える強固な「バディシップ」

喜多村:なるほど。一般的には仕事の内容や会社の名前といった既成のものに自分を当てはめようとしますが、矢内さんは「子育てと仕事の両立」からバックキャストして働き方を模索していった結果、経営者という道に行き着いたのですね。

矢内:はい。まず「なりたい状態」を描いてから、そうなれる仕事を選びました。もちろん、宇宙旅行のサポートもオーガニック・エシカル専門店も自分の嗜好に合ってはいますが、もともと知っていたわけではないんです。

喜多村:確かに、子どもの頃の夢と違って、大人の夢は現実とマッチングしています。目の前のことに一所懸命に取り組むことで、自然に生まれてきますよね。一方で、1つの事業にとどまらず多角化するのは決して簡単ではなかったと思います。実現できた理由について、ご自身ではどう分析されていますか?

矢内:事業が回るためには仕組みが必要です。仕組みをひとつずつ作るだけでなく、それを回すためのチームビルディングを大切にしてきたことで、強い基盤が構築できたと考えています。私は、一人ひとりと信頼関係を結んでいくことを「バディシップ」と呼んでいますが、共通のビジョンを持ってそれぞれの責任を果たすメンバーとチームを組めていることが、多角経営を展開するうえで大きいと思っています。

喜多村:先ほど、オーガニック・エシカル専門店の店舗展開の話がありましたが、育成されたメンバーが独立されることもあるのでしょうか。

矢内:はい。人材育成を進め、エンジニア支援事業などを通じて人と人をつなげていくうちに、独立して経営者を目指す方のサポートも行うようになりました。店舗のオーナーを含め、これまで40人ほどの経営者が生まれています。

喜多村:社会が抱える課題が複雑化している中で、非常に意義深い取り組みをされていると感じます。そうした人材事業には今後も力を入れていくのですか?

矢内:エンジニアもそうですが、深刻な人手不足に悩んでいる業界はたくさんありますので、今年に入って労働者派遣事業の認可も取得しました。看護師などの医療分野や営業職など、支援の幅を広げていきたいと思っています。

喜多村:このリレー対談は、世界を元気にする挑戦者たちと日本の将来について語り合うことをテーマにしていますが、将来を支えるのはやはり人だと思います。矢内さんが考える「これからの日本、世界を元気にする人材」を教えてください。

矢内:私のように、目標やビジョンありきでキャリアを変える人もいれば、そうじゃない人もいるでしょう。それはどちらでもいいと思うんです。大切なのは、目の前に立ちはだかる壁を乗り越えていくガッツを持つことです。ひとつひとつ乗り越えることで、やりたいこと、できることは増やしていけます。

その意味で、特に20代30代の若い世代に伝えたいのは、過去の目標にとらわれすぎないことも重要だということです。私自身、学生時代に目指していた宇宙飛行士にはなれませんでしたが、経営者になって宇宙の手前までは行くことができました。思い描いていた仕事とは違いますが、ママ経営者として子育てと両立できる働き方もできています。何歳になっても夢は描けますし、実現できたら日本は元気になると信じています。日本には世界を元気にするステキな人材の原石達が沢山いるはず。そんな原石が輝くお手伝いを、ひとりでも多くの人にしていきたいと思っています。

◆矢内綾乃(やない あやの)
URL:https://yanaiayano.com/
株式会社PassionPlanets CEO
株式会社UCHIAGE 代表取締役

株式会社PassionPlanets
所在地:東京都港区海岸1丁目
URL:https://passionplanets.com/

株式会社UCHIAGE
所在地:東京都港区東新橋2-9-4 ヴィアパルコビル1階
URL:https://uchiage.net/

【実績】
メディア出演実績
 https://humanstory.jp/yanai_ayano/
 https://thefocus-on.com/yanai_ayano/

講師実績 
 港区エコプラザにてワークショップ開催
  自然由来のルームミストづくり〜オーガニックコスメについて学ぼう〜
  竹芝産のミツロウでエコラップ作り
  プラントベースフードを取り入れる~食と自然環境のつながり~

多角経営実績
 ■経営者育成(独立支援・開発支援)
  独立支援制度により2024年6月までに5店舗が新規出店、約40名が法人を設立。
 ■人材事業:SES(System Engineering Service)/フリーランス支援
  開発エンジニア・インフラエンジニア、PM、PMOの分野で延べ99人以上のフリーランスへのサポートを実施。
  エンジニア交流会を開催。延べ参加人数500人以上。
 ■販売事業:小売店舗運営、EC販路構築
  ・オーガニック・エシカル専門ショップ「natural style BIO SOPRA Tokyo」を運営。
  ・2023年に「みなとモデル二酸化炭素固定認証制度『テナント店舗特別賞』」受賞。
  ・外部企業とのコラボレーション
   東京大手百貨店・商業施設へのポップアップ出展
   着せ替えできるヒール靴 FAMZON
 ■宇宙サービス事業:宇宙サービス事業(宇宙旅行エージェント/宇宙葬/宇宙想)
  気球の宇宙体験&アメリカ特別ツアー、人工衛星を利用したメッセージカード、DNA、小物の打上げサービス、宇宙葬、ペット葬のサービスを実施。
 ■コミュニティ創造:スポーツイベント(一般社団法人NEWSPO)、音楽イベント
 一般社団法人新スポーツ推進団体(NEWSPO)を立ち上げ、スポーツイベントを開催。
 参加者数は延べ12,000人。NPO法人アジアチャイルドサポートへ寄付。
 音楽イベントを定期的に開催。延べ参加人数1,800人以上

◆喜多村豊(きたむら ゆたか)
一般社団法人 公開経営指導協会 理事長
株式会社ティーケートラックス 代表取締役社長
学校法人早稲田実業学校 前評議員理事・前校友会副会長

一般社団法人 公開経営指導協会
所在地:東京都中央区銀座2-10-18 東京都中小企業会館内
URL: https://www.jcinet.or.jp/

情報提供元: アーバンライフメトロ
記事名:「 世界を元気にする日本人の誇りを持つ熱き挑戦者たちリレー対談日本の将来はあなたによって創られる!<第13回>宇宙旅行にオーガニック専門店、経営者育成。何歳になっても夢は実現できると証明したい!