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今、横浜みなとみらいで開催されている3300年前のエジプトにワープしたような体感を味わえる「ミステリー・オブ・ツタンカーメン展」。その監修を務めるエジプト考古学者河江教授による「ツタンカーメンの物語」に迫る3回集中連載。
「ミステリー・オブ・ツタンカーメン展」は、角川武蔵野ミュージアムで開催され話題となった「ツタンカーメンの青春展」を、横浜みなとみらいで新たな形で展開した体感型古代エジプト展です。今から約 100 年前、イギリスの考古学者ハワード・カーターは、歴代のファラオが眠る王家の谷で、ほぼ未盗掘の王墓を発見されました。その墓に 3300年もの間、眠っていたのが、少年王ツタンカーメン。5000点を超える副葬品とともに発見されたのです。その中には、黄金のマスクや黄金の棺、ミイラ作りに使用された内臓を納めたカノプス容器、黄金や貴石がふんだんに用いられた装身具が見つかりました。さらに、椅子やベッド、下着を含む衣服、杖、サンダル、香油入れ、ワインやパン、乾燥された肉、二輪戦車、ゲームボードなど、日常生活に使用された品々も含まれていたのです。
この展覧会では、そうした副葬品を基に精密に再現されたおよそ130点の「スーパーレプリカ」が展示されています。これらの展示品は、エジプトのミニア大学美術学部で彫刻学の教授を務めるムスタファ・マハムード・エル=エザビィ氏が手掛けたもの。本物の遺物ではできない手法を用いることで、ファラオの生活や埋葬文化が感じられるように工夫されています。
この展覧会は3つのフロアに分かれていて、それぞれ異なるテーマが設定されています。入口からエレベーターで、過去にタイムスリップするように3階に到着すると、そこにはミイラ作りの神である山犬のアヌビスが待っています。古代エジプトではナイル川を挟み、太陽が沈む西を死者の町とし、太陽も死者も西から舟に乗って冥界を旅して、再び東から太陽が昇るように復活すると考えていました。しかし、そのためには肉体の保存が重要であったのです。遺体を洗浄し、内臓を除去した後、炭酸ナトリウムなど複数のナトリウム化合物を混合した「ナトロン」と呼ばれる防腐剤で処理を行い、さらに亜麻布の包帯で丁寧に包むことで、遺体を腐敗から守ったのです。ツタンカーメンのミイラの腹部の左側には8.6センチほどの斜めの傷があり、そこから内臓を除去され、カノプスの人型棺容器に収めました。それは乳白色のエジプシャン・アラバスターのカノプス箱に入れられ、さらに4人の女神によって守られた金箔のカノプス厨子に入れられました。
【次回に続く】
名古屋大学デジタル人文社会科学研究推進センター教授
監修 河江 肖剰 / Yukinori Kawae
1972年、兵庫県生まれ。1992年から2008年までカイロ在住。カイロ・アメリカン大学エジプト学科卒業。2012年、名古屋大学で歴史学博士号を取得。サッカラの階段ピラミッド、ギザの三大ピラミッドとスフィンクス、アブシールのピラミッド群の3D計測調査を実施。ギザの「ピラミッド・タウン」やシンキの小型ピラミッドの発掘など、様々な考古学調査に20年以上にわたって従事。2016年には、ナショナル ジオグラフィック協会のエマージング・エクスプローラーに選出される。YouTubeチャンネル『河江肖剰の古代エジプト』は登録者数29万人以上(2024年11月現在)。
【展覧会概要】
●タイトル/「MYSTERY OF TUTANKHAMEN/ミステリー・オブ・ツタンカーメン~体感型古代エジプト展~」
●会場/神奈川県横浜市西区みなとみらい4-3-1ツタンカーメン・ミュージアム(PLOT48)
●会期/2024年12月13日(金曜)~2025年12月25日(木曜)
●主催/合同会社ツタンカーメンプロジェクト
●企画/角川武蔵野ミュージアム(公益財団法人角川文化振興財団)
●監修/河江肖剰(名古屋大学デジタル人文社会科学研究推進センター教授)
●企画/宮下俊(角川武蔵野ミュージアム)
●音楽/川井憲次(AUBE)
●美術/上條安里(サンクアール)
●照明/高松伸行(コモード)
●スキャン・CGアート/市川泰雅(WORLD SCAN PROJECT)
●映像監督/田内健弥
●協力/メトロアドエージェンシー、WORLD SCAN PROJECT、CF-1、マゼラン・リゾーツ&トラスト、他
●後援/神奈川県、横浜市、横浜港運協会、横浜港振興協会、UR都市機構、FM横浜、他
●チケット価格/大人(大学生以上)2600円、中高生2000円、小学生1500円(全て税込)、未就学児無料
●開館時間/日曜~木曜11時~18時、金曜・土曜 11時~21時 ※最終入館は閉館の30分前 火曜休館
※休館日、開館時間は変更となる場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。
※展示替えなどにより、日程によっては一部施設に入場できない場合がございます。
※展示内容が変更、または中止になる場合がございます。予めご了承ください。
※最終入場時間は閉館時間の30分前でございます。
※再入場はできません。