前回に引き続き今回は「限界レストアラー」による理想のガレージ物件探しの続編となります。 良い物件はすぐに借り手が決まるのは家もガレージも同じ。 「これなら借りられるかな」と思う物件は、建屋に問題がある、クルマの出し入れが不便ということが続きます。 その過程において、改めて知ったこともありました。 ■車庫と倉庫は似て非なるもの? いっそ「車庫ではなく倉庫として出ている物件を借りてしまう」ということも考えました。 いい大人になって初めて「車庫と倉庫は法律上の扱いが違う」ということを知ったのです。 詳細は割愛しますが、車庫とは異なり、倉庫は登記が必要で、しかも固定資産税が発生します。 賃貸契約を結ぶには実印や保証人、火災保険の加入が必須。 さらに敷金も高額なため、初期費用が数十万円になるケースもあります。 その点、車庫は登記が不要で固定資産税も発生しません。 賃貸契約も認印だけ、火災保険も不要で家賃によっては初期費用も10万円以下で済みます。 ただし「車庫」では住居として使うことも、会社の所在地として登記することはできません。 その一方で「倉庫」は車庫とは異なり、居住スペースを作って住居や事務所として登記が可能です。 そこに住んだり事業をはじめたいときに会社の所在地として使うこともできるのです。 ■ようやく見つけた小さな掘り出し物ガレージ まさしく、灯台下暗しとはよくいったものです。 まさか、自宅の隣町に貸しガレージがあったとは露知らず・・・。 あいにく希望する大きさには及びませんでしたが、それでもスバル360と小型バイクと工具、機材類を搬入可能。 電気も入居者負担でひいても良いという条件の物件を、自分の住む区内に発見したのが一昨年の7月。 ・民家から絶妙に離れていて、一部は野原に面している・向かいは少し大きめの公園(音が反響しない)でトイレもある・シャッター前に3tロングの積車を横付けできる・徒歩圏内にコンビニとコインパーキングがある・クルマで5~10分の範囲にホームセンターと量販店が複数ある という最高の立地。 公園や幹線道路も近いため、多少の騒音であれば許される(はず)です。 車庫とはいっても実際にはほとんどの入居者が資材置き場や倉庫として使っていたため、普段はクルマや人の出入りも少ないというのも好都合でした。 内見を申し込んだところ、諸事情で当初入居者を募集していた車室とは変更になってしまいました。 そのため内見まで数ヶ月かかることになりましたが、その代わり敷地内で一番民家から離れた場所というさらに好都合な場所になりました。 そこに当初希望していた車室より狭くなったため、家賃も少し安くなるという思わぬ副産物も・・・。 そうかと思えば1年後に、筆者と友人が集まってクルマやバイクをいじっているのを見た他の入居者から「仕事を引退して倉庫として使っていた車庫を引き払うので、ここを使わないか?」というオファーをいただきました。 いつかは2台分の車庫を数人でシェアするという形におさまりそうです。 前の入居者が引き払うタイミングでの契約だったので、正式に月極契約が成立したのは2021年の10月。 知人の電気工事士に電気の引き込みを相談すると、「年内は無理なので、2022年1月の3連休あたり」という話で落ち着きました。 念願のガレージの鍵を受け取るも、まだガレージでできることは特にあるわけではありません。 普段できるのは車室内をダイソーで買った箒と塵取りで掃除するくらいです。 あとは週末夜にセルフ給油SSのセルフ洗車機で洗車したのち、水切り代わりにガレージまで走らせて拭き上げです。 「自分のガレージでシュアラスターのワックスをかける」というだけでも随分感慨深いものがありました。 ■念願だった「ガレージ通電の義」! ありがたいことに、前述の一人親方の電気工事士資格を持つ知人が廃品の配電盤を使って格安で工事を受けてくれました。 また、ちょうどこのタイミングで職場が移転することになり、不要になった照明器具が出たので、それを再利用することができました。 工具類やコンプレッサー、ボール盤などの機材一式は20年以上かけて買い集めたり、廃業した事業者や引退した職人さんから貰った不用品をそのまま持ち込んだだけなので、初期投資は「両手で収まるくらい」です。 筆者は「飲まん、打たん、買わん」ですし、ソーシャルゲームもまったくしません。 PS5にハンドルコントローラーとゲーミングチェアを一式そろえ、課金しながらグランツーリスモ7に興じるにも結構な金額になります。 それを思えば、この金額でリアルでガレージライフを堪能できるのであれば安いものだとさえ思えてきます。 電気の最初の引き込みは中部電力ですが、翌月からは基本料金なしの完全従量制の低価格電力小売りに変更しました。 週末、あるいは仕事終わりの数時間しか使わないことを考えると、基本料金なしの従量制の格安電力のほうが安上りだろうという算段は狙い通り。 その後、突然のウクライナ情勢の悪化による輸入資源の高騰により、4月から格安系の電力小売り事業者は各社新規受付が停止が相次いだのです。 なかには廃業、撤退する事業者も現れる事態になりましたが、幸い筆者が契約したのはその2か月前。 4月以降値上げはあったものの今のところ電力事業から撤退することはないとのことです。 ■狭いながらも楽しい我がガレージ この国において「自分のガレージを持つ」ということは自動車愛好家にとってもっともハードルの高いことのひとつかもしれません。 しかし、カーライフにおいてガレージを手にするというのは、どんな工具、どんなパーツ、どんなクルマを手にすることよりも高い満足度を得られる、究極のカーライフグッズであると断言できます。 2年かけて作業して、3年間膠着状態だったレストア作業が、この半年で一気に進んだことには自分でも驚きました。 作業場所の関係で不十分なリペアしかできなかった箇所や、錆、腐食が再発してしまった箇所もあります。 そのやり直しもこの数か月で完了できたほどです。 露天での作業は、準備と後片付けにかなりの時間的リソースを要します。 実際の作業時間は思ったより取れないということも少なくありません。 隙間時間での作業でできることは限られていました。 ガレージであれば、思い立ったときに気まぐれで色々な作業を試すこともできます。 なにより誰にも邪魔されない自分だけの秘密基地感がたまりません。 レストア中のスバル360の路上復帰がいつになるかは、まだまだわかりません。 それでも完成までの道筋は見えてきたという感じです。 車庫証明、保管場所届出に自宅から半径2kmという縛りがあることで、「シャッター付きガレージを借りる」ということはハードルが高いように思えるかもしれません。 しかし近年は空き家対策、都市部の限界集落化対策で思わぬところに不動産の格安物件が出ることもあるそうです。 もしガレージを検討するのであれば「愛車をいじるための作業場」として割り切ってしまうのもいいかもしれません。 車庫証明、保管場所届に拘らなければ、郊外のどこかに掘り出し物の格安ガレージが見つかるチャンスもあるのではないでしょうか。 [ライター・撮影/鈴木修一郎]
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