こんにちは、ライターの糸井賢一です。『旧車王ヒストリア』では初の記事になりますが、よろしくお願いします。 ■20年前のクルマは現行車か?旧車か? はじめての原稿執筆にあたり、まだ旧車王ヒストリアに関して右も左も分からない身。 編集長の松村さんに「どのような記事を書いたらいいか?」と相談したところ、「所有されるシルビアについて書かれてはどうか。 例えばコンディション維持にかかるコストの変化とか」とのアドバイスをいただきました。いやいや、シルビアといってもS15ですよ。 シルビアの最終モデルで、旧車にはほど遠い現役の車種じゃないですか! そう自分では思っていたのですが、購入から22年を経ているということは、今の若い人から見れば自身が生まれた頃に発売されたクルマ。 僕が成人を迎えた頃、1970年のクルマをどう見ていたか。 思い返すと、なるほど今でいう旧車に近い感覚だった気がします。 そうか、S15(おまえ)はもう旧車だったのか。 誇らしくもあり、ちょっとショックでもある、複雑な気分。 ■旧車に強く、良心的な修理屋さんのおかげで維持できてます さて、S15の維持にかかるお話といっても、まだそれほど大きな影響を受けていないというのが正直なところ。 ボディにサビが出てきた。プラスチックパーツが劣化し、雨漏りが出てきた。 樹脂パーツの塗装剥がれが深刻。 エアコンが調子悪く、コンプレッサーの交換が必要。オルタネーターもそろそろ寿命。などなど……。 それなりの手入れは必要ですが、これは予定の通りというか、消耗品交換みたいなもの。 毎年、かけられるお金の範囲で直し直し乗ってます。あ、でも面倒をみてくれている修理屋さんが、ものすごく良心的だから維持できているってのはあります。 販売店に持ち込んでいた頃は、同じ箇所の修理、パーツの交換でも、倍近くの費用が必要でしたから(販売店批判じゃないッスよ。仕組みとして、どうしたってそれくらいかかるものでしょう。 修理にかかる時間は、即対応の環境を整えている販売店の方がずっと短かったですし)。 近年、パーツの欠品や値上げの話をちらほらと耳にするので、今後の維持には苦労させられるかもしれません。 自動車保険の金額は、シルビアの等級のアップにともなって購入より5年目くらい上昇。10年目くらいまでゆっくりと下降。 そこから年々、数百円ずつ上昇しながら今に至っている感じでしょうか。 安くはありませんが、支払える金額です。 ■盗難が不安で乗り換えを検討するも、いつも親バカ状態に 気になっているのは中古車価格の上昇と、それに比例するように多くなった盗難被害の話。 数年前、先述の修理屋さんに「念のため、S15にGPS信号発信装置を取り付けましょう」との助言を受けました。 聞けば愛車を盗まれるお客さんが年々、増えているそう。 盗難は身近な問題なのだと自覚した次第です。 シルビアがまだ販売店で購入できた頃。 GT-Rのようなスペシャルモデルでもない一量産車にここまで需要が増し、盗難が多発するようになるなんて、誰が考えられたでしょう。 ライターという仕事柄、取材で出先のコインパーキングに2~3日、駐車することはよくあります。 これまではなんてことない、心配なのはせいぜいイタズラくらいの行為だったのですが、最近は盗難に怯える有様。 お仕事が終わったのち「S15がなかったら、どうしよう」と、おっかなびっくりコインパーキングに戻り、無事に安堵する状態です。コインパーキングに駐車しても心配のいらない、盗難とは無縁の足車を用意すべきか。 けれど都内でもう一台分、駐車場を借りるのは経済的な負担が大きい。 そもそも「盗難が恐いから、もう一台、クルマを買う」なんて、はたして家族の理解を得られるかどうか……。うん、たぶん無理。 実際、こんな不安を抱えて日々を送るのは精神的によろしくないと、現行車への乗り換えを検討したこともあります。 でもね、販売店で気になるクルマを試乗したのち、帰り道でS15を運転するや「S15って、こんなによくできたクルマだったんだ。 20年後のクルマと比べても、見劣りしないじゃん」と、逆に再確認させられるんですよ。 運転席からの視界は良く、後部座席に気軽に荷物を放り投げることができ、1300キロに満たない車重はヤれたエンジンであっても軽快に走ってくれる。 アップであろうとダウンであろうとシフトチェンジは快感で、適度に低い車高と重心がもたらす安定感とロールの少なさは家族にだって好評。 時に小さなお子さんから「すぽーちゅかー!」と指さされ、手を振りかえしてあげるなんて……。 おぉ、乗り換えたくねぇ! このまま壊れるまでS15に乗っていてぇ! 分かっていたことではありますが、乗り換えの理由が「盗難が恐いから」は、あまりにも馬鹿馬鹿しく、そして悲しい……。 ■心がけ程度でも、やるのとやらないのでは違うと思うから いやもう、お上はもっと本腰を入れて、クルマの盗難を防いでくれないかなと。 SNSでも「盗難されました、拡散希望!」って投稿を見ない日はありませんし、こんなに盗難が多いのは「需要が高まっているから」では片付けられない、異常な事態だって伝わって欲しいですねぇ。 将来のために声を上げるのも大事ですが、今の環境の中で愛車を守るのはもっと大事。 日々、窃盗団に目を付けられないにはどうすればいいか、コインパーキングに駐めるにしても盗みづらいスペースはどこかを考えて行動してます。 念のためにドライブレコーダーも駐車中の記録ができ、GPS機能の付いた機種を選びました。ネガティブだけど、これも旧車を維持するための現実。 そんな心配のいらない時代が、早く来るといいッスねぇ……。 [ライター・カメラ/糸井賢一]
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