高いパフォーマンスとラグジュアリーさを兼ね備えた、最上級スポーティーカーにつけられている「GT」という名称。日本で初めて名前に「GT」を採用したメーカーは、意外にもいすゞでした。2ドアクーペとして開発された、ベレットGTです。 今回は、流麗なボディに最高の性能を備えていたベレットGTと最上位モデルのGTRについて紹介します。ベレットGTの魅力を紐解き、今もなお高い人気を誇る理由に迫ってみましょう。 GTの意味を体現していたベレットGT 現在ではトラックやバスといったイメージの強いいすゞですが、当時はレースにも参戦するなど高性能車の開発に力を注いでいました。 その流れを汲んで、いすゞはセダンタイプのベレットをベースに、2ドアクーペのベレットGTを発売。「GT」本来の意味を体現する、完成度の高いクルマでした。いすゞ ベレットGTの誕生背景とそもそも「GT」とはどういう意味なのか詳しく解説します。 東京オリンピックとともに登場したいすゞ ベレットGT いすゞベレットGTは、東京オリンピックが開催される1964年4月に登場。前年1963年に発売された、セダンタイプのベレットをベースに開発されました。首都高速が整備され、高い走行性能のクルマを求める機運のなか、ベレットGTは誕生します。 実はこの頃のいすゞは、ワークス体制でレースに参戦しており、ベレットGTにはレースで獲得したノウハウが惜しみなく注がれていました。 スポーツカーを中心に使われるGTの本当の意味 GTとは、イタリア語のGranTurismo(グランツーリスモ)の略称です。もともとは、大旅行を意味する「グランドツーリング」から派生した言葉で、長距離ドライブもこなせる高い性能とラグジュアリー感を備えたクルマを指します。 いすゞベレットGTも、ベースとなったセダンタイプのラグジュアリー感を活かしつつ、走行性能をとことん高めたモデルでした。 ペレットGTには「R」モデルも存在していた ベレットGTの発売から3年後の1969年、さらにパフォーマンスを高めたベレットGTRが誕生します。ベレットGTRは、レース車輌として活躍していたGTXをベースに、ロードカー仕様にチューンされ、極限まで走行性能を高めたモデルに仕上がりました。 なお、ベレットGTRは1970年に行ったマイナーチェンジの際に、ベレットGT typeRと名称を改めています。GTR、TypeRともに、現在では走行性能の高い国産車の象徴ともいえるグレード名です。どちらの名前も1960年代に使用していたいすゞは、先見の明があったのかもしれません。 GTの名にふさわしい走行性能を誇ったベレットGT ベレットGTは、GTの名前にふさわしく、ベース車輌のセダンタイプとは別のクルマといっていいほど充実した装備が盛り込まれていました。 さらに特別感を高めたGTRとともに、ベレットGTの装備を見ていきましょう。 走行性能を高めるために注ぎ込まれた先進技術 ベレットGTに搭載されたG160型1.6L水冷4気筒OHVエンジンは、最高出力88ps/rpm、最大トルク12.5kgm/4,200rpmを発揮。わずか940kgの車体を軽快にドライブしました。 さらにベレットGTには、当時の市販車としては最新とも呼べる技術によって、高い走行性能を実現します。サスペンションは4輪独立懸架、ステアリング機構はラック&ピニオン式、ディスクブレーキ(フロントのみ)、4速MTなど、名称だけであれば現在のクルマとほぼ遜色のない技術と装備が投入されました。 Rの名前は伊達じゃない ベレットGTRに搭載されたG161W型1.6L水冷直列4気筒DOHCエンジンは、最高出力120ps/6,400rpm、最大トルク14.5kgm/5,000rpmを発生。GTRの名に恥じない最高峰の性能を誇っていました。 ベレットGTRはGTカーのラグジュアリーの側面を満たすべく、内外装でも特別感のある仕様になっています。 外装面では、ダクトの開いた専用ボンネットにリムにメッキを施したホイール(スチール製)、そしてフロントにはベレットGTRの象徴の大型フォグランプが備えられていました。さらに、マイナーチェンジ後のGT TypeRでは、スカイラインGT-Rを想起させるような「R」のエンブレムがボディサイドにあしらわれています。 内装は本革巻き3本スポークステアリング、木目シフトノブといった高級感のあるアイテムが特別装備されていました。一方、インパネには220km/hのスピードメーター、センターコンソールには水温系、電圧計、燃料計の3連メーターを備えるなどレーシーな雰囲気がいかにもGTRらしさを演出しています。さらに、シートはヘッドレスト一体型のバケットシートでした。 名前だけではなく日本の自動車史に残る性能を誇っていた ベレットGTとGTRが、登場から50年以上経った今も高い人気を保っている理由は、単に日本で初めて「GT」の名を冠したクルマだったからというわけではありません。レースからのフィードバックを、ロードカーに詰め込んだ高性能マシンだったからです。ちなみに、日本で初めて「発売」されたGTとなると、発売日の関係でスカイラインGTにその座を譲っています。 半世紀を超えるクルマだけに、中古車の売買は慎重に行いたいところです。仮に程度のいい車輌を探し出しても、維持するためにはメンテナンスは欠かせません。専門の知識をしっかりともった業者と取引をしましょう。
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